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王国内乱編
上下関係
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《side トオル》
グシャ領に戻ってきて、ブラフにラオとテオスを紹介したものの、どうも雰囲気が怪しい。
ブラフの視線には不機嫌な色が滲み、テオスの目つきは挑発的だ。
「君たち、どうしてトオルに抱きついているんだ?」
ブラフが冷たい声で問いかけると、テオスがきっぱりと答える。
「俺たちの、“飼い主”はトオルなんだ。強い者にしか従わないのが俺たち獣人の掟だ」
その一言に、ブラフの表情が凍りついた。
そして、瞳の奥にかすかな怒りが宿るのがはっきりと見える。テオスはその反応を楽しむかのように、さらに続ける。
「俺たちはトオルを認めた。だからお前が何を言おうと関係ない」
「……強い者にしか従わない、か」
ブラフの口調は冷静でありながらも、どこか険が含まれている。そして彼は俺に鋭く視線を向けてきた。
「トオル、カタログを召喚して」
普段の穏やかなブラフからは想像もつかないような、緊張感が漂う声に俺は思わずたじろぐ。けれども、ここで拒否するわけにはいかない気がして、カタログを召喚した。
「おっ、おう!」
ブラフはカタログのページを勢いよくめくり、狙いを定めたページでぴたりと止まる。
次の瞬間、彼の手には一丁の重厚なマシンガンが具現化されていた。
「おいおい、ブラフ? まさか……」
俺の不安げな声をよそに、ブラフは無言でマシンガンの銃口をテオスの足元に向ける。
彼の表情には、普段の柔らかな微笑は見られない。代わりに、その瞳には鋭い光が宿っていた。
「これでも弱いって?」
ブラフがにっこりと微笑んだかと思うと、次の瞬間、マシンガンの銃声が響き渡り、テオスの足元の土が派手に舞い上がる。土埃があがり、周囲が一瞬で緊張に包まれた。
テオスは一瞬たじろぐも、すぐにブラフに挑発的な視線を向ける。
「なっ! なんだそれは?!」
「別に。これが僕の力だよ! 君が言う『強い者』ってこういうことじゃないの?」
ブラフは余裕の笑みを浮かべ、テオスの言葉をあっさり受け流してみせる。
その態度にテオスは驚きを隠せないようだが、同時に圧倒されているのも明らかだった。
「ブラフママ強い!」
フルフルはそんな二人のやりとりを一人楽しげに見守り、はしゃいでいる。
俺の不安とは裏腹に、フルフルは全身で喜びを表現しているのがまた面白いというか、奇妙というか。
「ふざけるな! トオルは俺たちの飼い主だ! 弱い奴に渡す気はない!」
テオスが叫ぶように言い放ち、ブラフの方へ一歩踏み出す。その眼差しには敵意と不満が宿っており、ブラフもまた微笑を崩さず、挑発に乗ってきた。
「トオルが誰のものか、君が決めるわけじゃないだろう?」
ブラフの口調には冷たさが混じり、テオスに対する軽蔑が込められているように感じられた。俺は思わず二人の間に割って入りたくなったが、すでに二人は互いに一歩も引かない状況になっていた。
「ふん、結局は口だけか?」
テオスがさらに挑発的に言葉を重ねると、ブラフの瞳が一瞬だけ鋭く光った。
「それで、君が“強い者”だとでも?」
そう言って、ブラフはマシンガンを再び構え、テオスに向ける。その冷徹な視線と余裕の笑みが、テオスの心を揺さぶるのがわかる。
その一触即発の状況に、俺はたまらず声をかけた。
「おい、ブラフ、テオス、二人とも落ち着いてくれ! 俺はどちらのものでもない、俺は俺だ!」
二人は一瞬、俺の方を見て、やや気まずそうな顔を浮かべたが、すぐに再び互いに視線を戻し、険しい目つきで睨み合っている。
「俺の飼い主はトオルだけだ!」
テオスが断言するように言い放つが、ブラフもすかさず応酬する。
「何を言ってるんだ、トオルは自分で自分の行動を決める人だ。君たちがそう簡単に所有を主張できるものじゃない」
二人のやりとりが白熱する中、俺はその場に立ち尽くしてしまう。どちらも俺の意志を尊重してくれているというわけではなく、ただそれぞれの価値観に基づいて主張しているように見える。
「いいか、テオス。俺は君たちを助けるためにここにいるんだ。俺は君の飼い主なんて名乗った覚えはない」
俺が静かに言うと、テオスは少し黙り込んだが、その視線は依然として挑発的だ。そして、ブラフはそんなテオスを一瞥し、冷静に微笑む。
「さて、そろそろ君も少しは学んだかな?」
ブラフがそう言いながらマシンガンを軽く振り回すと、テオスは舌打ちをして一歩引いた。俺に対する彼の態度が軟化したとはいえないが、少なくともブラフの前では少し大人しくなったようだ。
「ふん、今回だけは引いてやるよ。だが覚えておけ、俺はいつでもトオルの傍にいるつもりだからな」
そう言い残して、テオスは不満げにその場を立ち去った。
ブラフはその姿を見送ると、俺に向かって優しく微笑みながら肩をすくめた。
「さて、これでようやく平和が戻ったかな」
俺は深いため息をつきながら、ブラフに目を向ける。
「ブラフ、お前があんなに怒るなんて珍しいな……」
彼は小さく笑いながら言葉を返してきた。
「たまにはこうして、少し主張してみたかっただけさ。君が魅力的なのが悪いんだよ」
その柔らかな口調と微笑に、俺は少しだけ顔を赤くした。
グシャ領に戻ってきて、ブラフにラオとテオスを紹介したものの、どうも雰囲気が怪しい。
ブラフの視線には不機嫌な色が滲み、テオスの目つきは挑発的だ。
「君たち、どうしてトオルに抱きついているんだ?」
ブラフが冷たい声で問いかけると、テオスがきっぱりと答える。
「俺たちの、“飼い主”はトオルなんだ。強い者にしか従わないのが俺たち獣人の掟だ」
その一言に、ブラフの表情が凍りついた。
そして、瞳の奥にかすかな怒りが宿るのがはっきりと見える。テオスはその反応を楽しむかのように、さらに続ける。
「俺たちはトオルを認めた。だからお前が何を言おうと関係ない」
「……強い者にしか従わない、か」
ブラフの口調は冷静でありながらも、どこか険が含まれている。そして彼は俺に鋭く視線を向けてきた。
「トオル、カタログを召喚して」
普段の穏やかなブラフからは想像もつかないような、緊張感が漂う声に俺は思わずたじろぐ。けれども、ここで拒否するわけにはいかない気がして、カタログを召喚した。
「おっ、おう!」
ブラフはカタログのページを勢いよくめくり、狙いを定めたページでぴたりと止まる。
次の瞬間、彼の手には一丁の重厚なマシンガンが具現化されていた。
「おいおい、ブラフ? まさか……」
俺の不安げな声をよそに、ブラフは無言でマシンガンの銃口をテオスの足元に向ける。
彼の表情には、普段の柔らかな微笑は見られない。代わりに、その瞳には鋭い光が宿っていた。
「これでも弱いって?」
ブラフがにっこりと微笑んだかと思うと、次の瞬間、マシンガンの銃声が響き渡り、テオスの足元の土が派手に舞い上がる。土埃があがり、周囲が一瞬で緊張に包まれた。
テオスは一瞬たじろぐも、すぐにブラフに挑発的な視線を向ける。
「なっ! なんだそれは?!」
「別に。これが僕の力だよ! 君が言う『強い者』ってこういうことじゃないの?」
ブラフは余裕の笑みを浮かべ、テオスの言葉をあっさり受け流してみせる。
その態度にテオスは驚きを隠せないようだが、同時に圧倒されているのも明らかだった。
「ブラフママ強い!」
フルフルはそんな二人のやりとりを一人楽しげに見守り、はしゃいでいる。
俺の不安とは裏腹に、フルフルは全身で喜びを表現しているのがまた面白いというか、奇妙というか。
「ふざけるな! トオルは俺たちの飼い主だ! 弱い奴に渡す気はない!」
テオスが叫ぶように言い放ち、ブラフの方へ一歩踏み出す。その眼差しには敵意と不満が宿っており、ブラフもまた微笑を崩さず、挑発に乗ってきた。
「トオルが誰のものか、君が決めるわけじゃないだろう?」
ブラフの口調には冷たさが混じり、テオスに対する軽蔑が込められているように感じられた。俺は思わず二人の間に割って入りたくなったが、すでに二人は互いに一歩も引かない状況になっていた。
「ふん、結局は口だけか?」
テオスがさらに挑発的に言葉を重ねると、ブラフの瞳が一瞬だけ鋭く光った。
「それで、君が“強い者”だとでも?」
そう言って、ブラフはマシンガンを再び構え、テオスに向ける。その冷徹な視線と余裕の笑みが、テオスの心を揺さぶるのがわかる。
その一触即発の状況に、俺はたまらず声をかけた。
「おい、ブラフ、テオス、二人とも落ち着いてくれ! 俺はどちらのものでもない、俺は俺だ!」
二人は一瞬、俺の方を見て、やや気まずそうな顔を浮かべたが、すぐに再び互いに視線を戻し、険しい目つきで睨み合っている。
「俺の飼い主はトオルだけだ!」
テオスが断言するように言い放つが、ブラフもすかさず応酬する。
「何を言ってるんだ、トオルは自分で自分の行動を決める人だ。君たちがそう簡単に所有を主張できるものじゃない」
二人のやりとりが白熱する中、俺はその場に立ち尽くしてしまう。どちらも俺の意志を尊重してくれているというわけではなく、ただそれぞれの価値観に基づいて主張しているように見える。
「いいか、テオス。俺は君たちを助けるためにここにいるんだ。俺は君の飼い主なんて名乗った覚えはない」
俺が静かに言うと、テオスは少し黙り込んだが、その視線は依然として挑発的だ。そして、ブラフはそんなテオスを一瞥し、冷静に微笑む。
「さて、そろそろ君も少しは学んだかな?」
ブラフがそう言いながらマシンガンを軽く振り回すと、テオスは舌打ちをして一歩引いた。俺に対する彼の態度が軟化したとはいえないが、少なくともブラフの前では少し大人しくなったようだ。
「ふん、今回だけは引いてやるよ。だが覚えておけ、俺はいつでもトオルの傍にいるつもりだからな」
そう言い残して、テオスは不満げにその場を立ち去った。
ブラフはその姿を見送ると、俺に向かって優しく微笑みながら肩をすくめた。
「さて、これでようやく平和が戻ったかな」
俺は深いため息をつきながら、ブラフに目を向ける。
「ブラフ、お前があんなに怒るなんて珍しいな……」
彼は小さく笑いながら言葉を返してきた。
「たまにはこうして、少し主張してみたかっただけさ。君が魅力的なのが悪いんだよ」
その柔らかな口調と微笑に、俺は少しだけ顔を赤くした。
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