辺境伯令嬢はもう一度恋をする

紅子

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中央の学園編

大茶会

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今日は我が領で主催する大規模なお茶会だ。このお茶会を皮切りに、各領で開催するお茶会が1月以内で行われる。本来なら第3王子のいる中央が先陣を切るのだが、ポンコツな彼は全く仕事をしていなかった。彼が気付くのを待っていたら、1年が終わると判断して、我が領から始めさせてもらったが、何処からもクレームや横やりが入ることはなかった。中央からは未だに招待状は届かない。この大茶会は、領地をアピールする場であり、特に新作の売り込みにはもってこい!故に男女関係なく準備に奔走することになる。

会場を出来るだけ広くするため、大ホールから続く庭には、たくさんのパラソルを立て、木陰を用意した。色とりどりのパラソルの高さを変えて芸術的な演出も忘れない。お菓子や料理も、前世の知識をフル活用して領地で母様と試行錯誤した品を揃えてある。ライトール様の不得手だった、つまり、この世界には存在しない洋菓子を中心とした、味はもちろん見た目の華やかさを重視した見ても楽しめるラインナップである。私、頑張った!

肝心の試験はというと、簡単すぎて寝ちゃうところだった。寮に戻ってからみんなの様子を見たり話を聞いたりしたところ、下級貴族は80%の回答率らしい。ボーダーラインは50%だから、気を抜かなければ我が領で留年はないな。ちょっとほっとした。責任者としてプレッシャーは感じていたからね。

「姫様。そろそろお客様がお見えになる時間です」

お仕着せを纏った真珠がお淑やかに私を呼びに来た。ハルトに手伝ってもらい用意したインカムも全員に配り、準備万端。さあ、戦闘開始だ。一番最初に来たのは・・・・・・。

「ゼクス様ぁ。なんか、いい匂いがしますぅ」

第3王子を伴ったカウアイーネだった。みんな唖然としている、いろんなことに。カウアイーネの第一声と、第3王子とその取り巻きが一番乗りするという非常識さ。取り巻きたちの中には領地を牽引する役目の人もいる。既に、波乱の幕開けである。侯爵以上とはいえ、全ての領地に招待状を出しているのだから、来るのは分かってた。彼らの配慮のなさも折り紙付きだ。

「ナイトバーユ。例の席に連れて行って。分かってるわね?あの方々には、勝手に出歩かせてはダメよ。欲しいという物はあなたが取りに行くこと。行って」

「畏まりました、姫様」

彼らへの対策は練ってある。あの人たちを大人しくさせることが出来れば、このお茶会は7割方成功と言えるのだから、力も入ると言うものだ。

「あっ!ナイトバーユ様、いたぁ」

「なかなか来ないから迎えに来てやったぞ」

「カウアイーネが仲間はずれは可哀相だって言うから来てやったんだ」

「そうですよ。時間は守ってください」

「「「「「「・・・・・・」」」」」」

様子がおかしい。大茶会に来たのではないのか?今日は、各領地の侯爵以上の爵位を持つ生徒に招待状が届けられたはずだ。伯爵令嬢であっても、その招待状を持つ生徒のパートナーと言うことであれば参加できる。先程の会話と招待状を提示しないところをみると、お茶会に参加しに来たわけではなさそうだ。そう判断してインカムで指示を出すと、ナイトバーユはすぐに動いた。それとは別にフラビスリードにも指示をだす。他の招待客の足止めだ。今、この寮に近づいてほしくない。

「申し訳ありません。試験が思わしくなくて、部屋に籠もってました。そうだ!折角ですから、気分転換にパーッと少しだけ・・・・何処かに行きましょうか?」

「行きたぁい。でもぉ、この匂いも気になるなぁ」

「カウアイーネが望むなら、それを持って公園でピクニックでもしましょうか?どうですか、ゼクス様」

「そうしよう。中央公園の広場がいいな。途中で食べ物を調達すればいいだろう」

インカムごしに聞こえてくる会話に絶句。お忍び出来るような服装でもないくせに、市井におりるつもりらしい。ナイトバーユのいう公園とは、恐らく学園内の公園のことだったはずだ。青ざめる顔が目に浮かぶ。仕方なく、私は学園の警備室に連絡を取って、こっそりと第3王子たちの護衛をしてもらえるように頼む羽目になった。仕事を増やしやがって!こうして、問題児たちは学園の外へ意気揚々と出掛けていった。やれやれだ。

その後は、続々と招待客が訪れて、私たちの趣向を楽しんでくれた。料理もお菓子も大好評。

「シャンテーヌ様、楽しんでおられますか?」

「あら、ライレーネ様。ご機嫌よう。ご紹介いたしますわね。こちら、わたくしの婚約者。ランゼット・サルベニア様。サルベニア辺境伯領の次男ですわ。カリストロ領の学園で1年生の時にご一緒だったのですけれど、覚えておいでかしら」

「もちろん。ご無沙汰しております、そして、おめでとうございます、ランゼット様」

よく覚えてる。ゼクスについて回るシャンテーヌをずっと切なそうに見てた。そうか。実ったのか。

「ありがとう、ライレーネ嬢」

ランゼットの浮かれ具合が手に取るように伝わってくる。シャンテーヌも満更でもなさそうだ。頬をうっすらと染めている。

「つい最近、お父様とサルベニア領主、ランゼット様のお父様の合意が得られましたのよ。学園を卒業後、我が家で1年実務を学んだ後、婿入りですの」

ランゼットは、誠実だし、人当たりもいい。何より、人をよく見ている。

「ところで、そちらの皆さんが耳に付けている物は?」

おっと、これに目を付けるとは、さすが目敏いな。ここから、インカムをオンにした。私の説明を聞かせるためだ。

「これは、わたくしが婚約者のラインハルトと開発したインカムという物ですわ。耳に付けたこの魔道具に魔力を通すと装着者全員に声を届けることができますの。この大茶会で初出しですわ。最もまだ改良の余地はありますが」

「それは素晴らしい物ですね。売り出しの暁には是非知らせていただきたい」

顧客ゲット♪他の人たちもちょこちょこと問い合わせが入っている。

「よろこんで。ところで、シャンテーヌ様。中央の大茶会は?」

「・・・・・・」

そりゃ、無言にもなるよね。

「申し訳ございません。出過ぎたことでしたわね」

「どうしようもありませんわ」

この言葉が総てを物語っている。結局、第3王子たちは大茶会には来なかった。というより、4人いるにも関わらず、誰も招待状の封を開けていなかったのだから、呆れて物も言えない。ナイトバーユが幾度となくこちらに誘導しようと試みていたのは、インカムを通して知っているが、カウアイーネの「あっちに行きた~い」攻撃にすべてスルー。本当にどうしようもない。
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