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冒険者ギルドにて
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暑い。とにかく暑い。あの服装なのも納得だ。私の着ているのは、Tシャツに7分丈のチノパン。それにクロックスといういでだちだ。ここでは間違いなく浮く。仕方なく、昨日拾ったビスチェとロングの巻きスカート、それに、紐の切れた編み上げのサンダルに着替えることにした。とは言ってもこのままでは着られない。破れたところに刺繍を施す。裁縫箱と綺麗な布はアイテムバッグの中に入っていたものだ。サンダルにちょうどいい革の紐もあった。これを棄てた彼女には申し訳ないけど、私にはラッキーだったよ。ホント、コスプレの衣装を作っててよかったとしみじみ思う。
「よし!出来た」
なかなかの出来栄えじゃない。着替えた後、ついでにアイテムバッグのショルダーの部分にも刺繍する。これで私のものだと分かりやすくなった。
街の広場に着くと、いい匂いがあたりに漂っている。見回すと、屋台が沢山出ていた。パンとキュウリは食べたけど、肉の焼ける匂いが胃袋を直撃だ。とにかく、働くところを探さなくては!職場の斡旋をしているところはないのだろうか?
「そこの可愛い、お嬢ちゃん。どうだい。一本食べていきなよ!旨いぜ」
キョロキョロと辺りを見回していた私に、屋台のおやじが声をかけてきた。
「本当にいい匂いで買いたいのはやまやまなんですが、私、お金持ってないんです。ごめんなさい」
ああ。串焼き。
「金がないって、あんた、旅人だろう?」
昨日は気付かなかったけど、ここの人たちは褐色の肌に彫りの深い顔立ちの人が多い。象牙の肌にのペとした顔立ちは珍しいんだろう。
「はい。でも、あの。この辺りで働くところはありませんか?」
「金、すられちまったのか。その容姿ってことは、海の向こうから来たんだろ?何つったか。えーと。そうそう、神嶌だ。まだ小さいのに奉公か?」
ん?海の向こうにこの顔に似た人たちがいるってこと?神嶌。覚えておこう。
「まあ、そんなところです。暫く暮らせるだけのお金は持たせてもらったんですが・・・・」
「難儀したなぁ。そら、食え」
「え?でも」
「いいってこった。働いてお給金もらったら食いに来い」
「ありがとうございます。・・・・美味しい」
おじさんの串焼きはとても美味しかった。この世界に来て初めて触れた優しさに、涙が零れ落ちる。それを拭うことなく、私は脇目も振らずひたすら串焼きにかぶりついた。
「働きたいなら、ここをまっすぐに行くと冒険者ギルドがあるから、そこで斡旋してもらうといい」
「何から何までありがとうございます。冒険者ギルドに行ってみます」
おじさんに手を振ってその場を離れた。少し歩いて、そっとおじさんの屋台を振り返ると、お客でごった返していた。人気の屋台なのは、あの串焼きの味から分かったが、それにしても凄い人気だ。おじさんの人柄が後押ししているに違いない。
「幸先いいな」
冒険者ギルドまでの道のりも苦にならない。漸くそれらしい建物に辿り着いた。4階建ての無骨な建物だ。看板には剣と盾が描かれている。深呼吸をして、扉を開けた。
「・・・・・・」
中は人でごった返している。厳つい大男に埋もれそうになりながら、端にある椅子まで辿り着いた。少し様子を見てからにしよう。もう少し人が捌けないとどうにもならない。
「ちびがこんなところに何の用だ?」
のっそりと熊のようなスキンヘッドの大男がいつの間にか隣にいた。
「ひっ」
「悪い悪い。驚かせたな。だがな、ここはお嬢ちゃんのようなちびが来るところじゃねぇよ」
屋台のおじさんといい、この人といい、私を一体いくつだと思ってるんだか。私がちびなんじゃなくて、あなたがデカすぎるんだよ!
「あの、働くところを紹介してくれると聞いて」
「んん?ちびはまだ働ける年じゃないだろう?」
「ええと。私、25歳ですけど」
「はあ?!嘘はいけねぇよ。そのなりで25はちぃと無理がありすぎだぜ。せめて16だ。見えないがな」
なんか、頭悪い子を見る目で見られるとさすがにムカつく。
「はあああ?16?」
どんな冗談だ。9歳もサバをよめるわけないでしょ?
「ま、登録すればわかるさ。出来れば、だけどな」
ニヤニヤとした嗤いがまた私のカンに障る。
「ほら、もういいだろ。登録してこい」
促されて周りを見ると、人が捌けていた。ガランとなった部屋の奥にカウンターが見える。ニヤニヤしたおっさんから離れたくて、とっととカウンターに移動した。私の居たところから相変わらずニヤニヤとこっちを見ている。それが、無性に腹立たしい。
「すみません。初めてなんですが」
カウンター越しにいる受付のお姉さんにどうすればいいのかを尋ねた。
「いらっしゃいませ。でしたら、まずは、登録ですね。16歳以上でないと出来ませんが宜しいでしょうか?」
「25歳なので、大丈夫です!」
「え?っと。25歳ですか?・・・・この用紙に記入をお願いします」
年齢を告げたら、引き攣った顔をされたが、ちゃんと登録用紙を出してくれた。
何なに。名前。出身。年齢。武器。魔法の適正。
・・・・・・。名前と年齢以外書けない。
名前・・・・あまさき みあさ
年齢・・・・25歳
「あの。武器とか書けないんですけど」
「書けるところだけでいいですよ」
「では、これで」
「はい。アマアサキミャーサ様ですね」
「違います。家名はアマサキ。名前はミャーサではなく、みあさです」
「失礼しました、ミャーサ様。ええと、家名があるということは貴族の方ということで?」
「違います。私の住んでいたところではみんな家名がありましたが、貴族ではありません」
「でしたら、名前だけの登録をお勧めします。では、こちらの水晶に手を乗せてください」
当然、名前だけにしてもらい、お姉さんの示した先を見た。これは何だ?七色に渦を巻く水晶なんて見たことない。不思議そうな私の顔から推測したのだろう。
「これは、魔道具です。ミャーサ様の魔力を読み取って登録します」
「私、魔力なんてないと思います」
「大丈夫ですよ。どんなに少なくとも読み取れますから」
全くないんだけど。登録するには必要ならダメもとでやってみよう。結果。魔力があった。そして、渡されたカードにはちょっと目を疑うことが記録されていた。
「よし!出来た」
なかなかの出来栄えじゃない。着替えた後、ついでにアイテムバッグのショルダーの部分にも刺繍する。これで私のものだと分かりやすくなった。
街の広場に着くと、いい匂いがあたりに漂っている。見回すと、屋台が沢山出ていた。パンとキュウリは食べたけど、肉の焼ける匂いが胃袋を直撃だ。とにかく、働くところを探さなくては!職場の斡旋をしているところはないのだろうか?
「そこの可愛い、お嬢ちゃん。どうだい。一本食べていきなよ!旨いぜ」
キョロキョロと辺りを見回していた私に、屋台のおやじが声をかけてきた。
「本当にいい匂いで買いたいのはやまやまなんですが、私、お金持ってないんです。ごめんなさい」
ああ。串焼き。
「金がないって、あんた、旅人だろう?」
昨日は気付かなかったけど、ここの人たちは褐色の肌に彫りの深い顔立ちの人が多い。象牙の肌にのペとした顔立ちは珍しいんだろう。
「はい。でも、あの。この辺りで働くところはありませんか?」
「金、すられちまったのか。その容姿ってことは、海の向こうから来たんだろ?何つったか。えーと。そうそう、神嶌だ。まだ小さいのに奉公か?」
ん?海の向こうにこの顔に似た人たちがいるってこと?神嶌。覚えておこう。
「まあ、そんなところです。暫く暮らせるだけのお金は持たせてもらったんですが・・・・」
「難儀したなぁ。そら、食え」
「え?でも」
「いいってこった。働いてお給金もらったら食いに来い」
「ありがとうございます。・・・・美味しい」
おじさんの串焼きはとても美味しかった。この世界に来て初めて触れた優しさに、涙が零れ落ちる。それを拭うことなく、私は脇目も振らずひたすら串焼きにかぶりついた。
「働きたいなら、ここをまっすぐに行くと冒険者ギルドがあるから、そこで斡旋してもらうといい」
「何から何までありがとうございます。冒険者ギルドに行ってみます」
おじさんに手を振ってその場を離れた。少し歩いて、そっとおじさんの屋台を振り返ると、お客でごった返していた。人気の屋台なのは、あの串焼きの味から分かったが、それにしても凄い人気だ。おじさんの人柄が後押ししているに違いない。
「幸先いいな」
冒険者ギルドまでの道のりも苦にならない。漸くそれらしい建物に辿り着いた。4階建ての無骨な建物だ。看板には剣と盾が描かれている。深呼吸をして、扉を開けた。
「・・・・・・」
中は人でごった返している。厳つい大男に埋もれそうになりながら、端にある椅子まで辿り着いた。少し様子を見てからにしよう。もう少し人が捌けないとどうにもならない。
「ちびがこんなところに何の用だ?」
のっそりと熊のようなスキンヘッドの大男がいつの間にか隣にいた。
「ひっ」
「悪い悪い。驚かせたな。だがな、ここはお嬢ちゃんのようなちびが来るところじゃねぇよ」
屋台のおじさんといい、この人といい、私を一体いくつだと思ってるんだか。私がちびなんじゃなくて、あなたがデカすぎるんだよ!
「あの、働くところを紹介してくれると聞いて」
「んん?ちびはまだ働ける年じゃないだろう?」
「ええと。私、25歳ですけど」
「はあ?!嘘はいけねぇよ。そのなりで25はちぃと無理がありすぎだぜ。せめて16だ。見えないがな」
なんか、頭悪い子を見る目で見られるとさすがにムカつく。
「はあああ?16?」
どんな冗談だ。9歳もサバをよめるわけないでしょ?
「ま、登録すればわかるさ。出来れば、だけどな」
ニヤニヤとした嗤いがまた私のカンに障る。
「ほら、もういいだろ。登録してこい」
促されて周りを見ると、人が捌けていた。ガランとなった部屋の奥にカウンターが見える。ニヤニヤしたおっさんから離れたくて、とっととカウンターに移動した。私の居たところから相変わらずニヤニヤとこっちを見ている。それが、無性に腹立たしい。
「すみません。初めてなんですが」
カウンター越しにいる受付のお姉さんにどうすればいいのかを尋ねた。
「いらっしゃいませ。でしたら、まずは、登録ですね。16歳以上でないと出来ませんが宜しいでしょうか?」
「25歳なので、大丈夫です!」
「え?っと。25歳ですか?・・・・この用紙に記入をお願いします」
年齢を告げたら、引き攣った顔をされたが、ちゃんと登録用紙を出してくれた。
何なに。名前。出身。年齢。武器。魔法の適正。
・・・・・・。名前と年齢以外書けない。
名前・・・・あまさき みあさ
年齢・・・・25歳
「あの。武器とか書けないんですけど」
「書けるところだけでいいですよ」
「では、これで」
「はい。アマアサキミャーサ様ですね」
「違います。家名はアマサキ。名前はミャーサではなく、みあさです」
「失礼しました、ミャーサ様。ええと、家名があるということは貴族の方ということで?」
「違います。私の住んでいたところではみんな家名がありましたが、貴族ではありません」
「でしたら、名前だけの登録をお勧めします。では、こちらの水晶に手を乗せてください」
当然、名前だけにしてもらい、お姉さんの示した先を見た。これは何だ?七色に渦を巻く水晶なんて見たことない。不思議そうな私の顔から推測したのだろう。
「これは、魔道具です。ミャーサ様の魔力を読み取って登録します」
「私、魔力なんてないと思います」
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