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箱入り娘だって

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受付のお姉さんがくれたカードに触れると頭の中に登録された内容が浮かび上がった。

「うひゃ」

初めてのことに驚いて声が出てしまった。初々しいなぁと言う眼差しが居心地悪い。



ミャーサ
(真名 天咲羽 神麻)
年齢 17歳

HP 150
MP 57950000
適正 土 生活
スキル 裁縫 植物の心 調理 言霊
幸運値 100
称号 巻き込まれ召喚になった元聖女
賞罰 なし



「・・・・・・」

えっと。17歳?いつの間にか8歳も若くなってる。何故?怖い・・・・。知らない間に若返るなんてある?素直に喜べないんだけど。巻き込まれ召喚になった元聖女・・・・・・?あれ?聖女はあの彼女でしょ?ん?でもあの竜巻は私の居たところを・・・・。まあ、聖女になりたいわけじゃないからいいか。ヤバいことにはかかわりたくない。MPって、私の資産の額なんだけど?貯金と裏山を含む不動産を合わせるとこのくらいだった。突っ込みどころ満載だ。

「質問はありますか?」

笑顔のお姉さん、質問だらけです!

「この頭に浮かぶのは何ですか?」

「おいおい、ちび。そこからかよ!にしても、登録できたつうことは?幾つだ?25、ではないよな?」

いつの間にかさっきのおっさんが隣に立っていた。

「17歳でした。・・あの、若返るなんてことは、よくあるんですか?」

「はあ?!あるわけないだろ!馬鹿も休み休み言え!」

ガシッと頭を捕まれた。痛い。理不尽だ。実際に若返ったから、聞いたのに。

「では、真名というのは?」

「登録名と実名が違うときに出る。時々いるな」

「では、HPとかMPとか適正、スキル、幸運値、称号とは、何でしょう?」

「全部じゃねえか!」

別におっさんに教えてもらわなくても、受付のお姉さんに聞くからいいんだけど。呆れたおっさんが教えてくれた説明によると。

HPは、生命力。0になると死ぬ。
MPは、魔力量。これも0になると死ぬ。
適性は、使える魔法の種類。たいていの人は生活魔法くらいは使えるらしい。
スキルは、特技。
幸運値は、持っていない人が多い。値が高ければ高いほどラッキーなことが起きやすい。
称号は、特別な名称。渾名ふたつ名もここに記載される。

「そんな感じか」

ラッキー値、違った。幸運値、ヤバい。私、昨日からラッキーだけでここまで来た気がする。

「あの、ちなみに、HPとMPと幸運値の平均はどれくらいで?」

HP 子供で10 大人の女で300
MP 普通の大人で200 魔術師の卵で1000 Sランクの魔術師なら70000
幸運値 過去最高だった人で25

「・・・・・・」

その場で蹲ってしまった。

「どうした?」

「これって、公開はないと思いますが、どれくらいの人の目につくのでしょうか?」

誰にも知られたくない。

「本人のみだ。登録名と年齢と賞罰だけはギルドで管理される。カードをなくしたら、再発行に銀貨2枚だからな?無くすなよ」

絶対になくしません。コクコクと頷いた。おっさんは満足そうだ。

「さて、ちびは職を探してるんだったな。短期か?長期か?」

考えてなかったな。出来れば、田舎で野菜を育てつつ、裁縫のスキルを活かして小物を売りたい。その資金までは無理でも田舎に行って職を見つけるまでの貯金はほしい。それに、あまりここに留まりたくはない。

「短期かな?もう少し田舎に引っ越したいので」

「うむ。何が出来る?」

「スキルに裁縫と調理があるので、その辺りは出来ます。あと、読み書き計算ですかね」

気にしてなかったけど、さっきの書類の文字を今までの人生で見たことはなかった。でも、読めるし書けるんだよね。ありがたや。

「ちょうどいいのがふたつある。仕立屋の2月の臨時雇いと4月の宿屋の住み込み店員、食事付きだ」

「宿屋でお願いします」

住むところがないとどうにもならない。ところで、このおっさんは誰なんだ?職の斡旋をしてくれたってことは、ただのおっさんじゃない?

「サブマス。その前に、規約の説明をしてください」

サブマスさん?

「そうだったな。まず、ちびはFランクだから、王都から出るような依頼は受けられない。今紹介したようなものの他に、屋敷の草刈りとか届け物とかドブ掃除なんかがある。4月の住み込み店員の依頼を完了できれば、Eランクになるな。そうすれば、王都の外に出る依頼も出来るようになる。ギルドカードはその時の身分証にもなるから、持ち歩け。依頼の未達成はペナルティとして、ランクに応じた罰金が生じる。3回続けて未達の場合は降格。依頼が終了したら、依頼主にサインをもらうのを忘れるな。依頼料はギルドカードに入金される」

「前払いは?」

「ん?金がないのか」

「ない」

「残念ながら、今回の依頼に前金はない。7日毎に振り込まれるから、それまで我慢だな。詳しくは依頼書を読め」

寝るとことご飯はついてるから我慢できるな。

「ギルド内での暴力行為は懲罰の対象になる。巻き込まれても同罪と見なされるから気を付けろよ。パーティー内のトラブルは基本的にギルドは関与しない。募集するなら協力は出来るが。聞きたいことは?」

「パーティーって何ですか」

「ホントに何にも知らんのな。パーティーは、複数の冒険者で長期継続してチームを組むことだ。高ランクになれば、1人では対処できない依頼も多い」

なるほど。私には関係なさそうだ。

「ちなみに、1月どのくらいあれば、生活できますか?」

「は?」

目が点になった人を初めて見た。

「いえ、私、この国の出身じゃないもので」

「あ、ああ。それなら、仕方ないのか???そうだなぁ。王都なら金貨2枚からだな」

「金貨。お金の種類は?」

「硬貨を知らないなんざ、箱入り娘か?!この世界共通だろ?はぁ。まあ、いい。鉄貨が最小。銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨となって、10枚で繰り上がっていく。金貨以上は目にすることはない。実物はこれだ」

サブマスさんは、態々コインを出して見せてくれた。

「よく分かりました。ありがとうございます、サブマスさん」

「これが依頼書だ。俺は、ダム。何かあったら呼べ」

「えっと?サブマスさんではなく?」

「サブマスは役職名だ!ホントに大丈夫かよ」

心配そうなサブマス、ダムと笑いを堪える受付のお姉さん。少し余裕が出来て周りを見渡すと、同じように笑っている人と心配そうな人に分かれた。箱入り娘騙されやすくに見えるらしい。

「大丈夫です!ちゃんと働いてましたから!では、行ってきます」

私は心配そうに見送るダムと冒険者たちを余所に、意気揚々と新しい職場に向かった。
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