巻き込まれ召喚になった私はまったりのんびりスローライフを目指します!

紅子

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出た!盗賊

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1日目のお昼は持参したものを食べたから私の出番はなかった。夜は雇い主の会頭とその秘書、お嬢様と侍女たち、商会の関係者、そして護衛の数人は小さな街の宿屋でお世話になるが、他の者は野営だ。30人近い人数の集団が宿泊できる宿なんてなかなかない。専属護衛と《疾風》のみんなが野営の準備を始めた。ここから、私の料理人としての出番が始まる。とは言え、雇い主がいないというのは非常にやりやすい。騎士と冒険者と私。気を遣う人が誰も居ない。それに、なんと!オーブン付きコンロを支給されたのだ。太っ腹♪食器なんかと一緒にアイテムバッグに入ってた。もうね、確認して吃驚だったよ。さて、そんな普通のキッチンと変わらない環境の野営のメニューは、というと・・・・。

野菜スープ
堅パン
トンカツ
山盛りキャベツ
焼きナス
一口ゼリー

こんなに手の込んだ料理は、人数が減ったから出来るのであって、全員揃ったときにはもっと適当になる。もちろん、雇い主たちは別メニューでご機嫌取りはするよ?それに、やることもない移動中に下拵えはいい暇つぶしになると分かったから、今後も活用していこうと思う。

「手伝ってね~!」

宿組と別れて少なくなったとはいえ、10人を超える給仕をひとりでは冷めてしまう。

「お!肉か」

嬉しそうにトンカツを眺めるのは、野営組のリーダーを任されたバン。専属護衛の副隊長を務めている。

「はいはい。冷めちゃうから運んでね。トンカツはひとり2枚あるよ。焼きナスはひとつね」

どんどんと盛り付けていく。揚げたそばからアイテムバッグに収納したトンカツをキャベツを盛った皿に並べる。面倒だから、そのままだ。齧りつくがいい♪行き渡ったところで夕食が始まった。

「野営でこのボリュームは、宿よりも豪華なんじゃないか?」

「だよな。宿組の奴らが羨ましかったけどよ、全然そんなことなかったな!」

「肉、旨い」

「料理人を雇ってくれた会頭に感謝だなぁ」

評判は上々。肉は、狩ってきてもらえばいいとして、街に寄ったときに野菜を仕入れればなんとかなりそうだ。食事が終わり、まったりタイム。私は、明日の朝ご飯の下拵えと準備に余念がない。夜の見張りは、料理人だから免除してもらえたとはいえ、なるべく長く休みたい。索敵はしておくけどね。明日は、甘くないパンケーキ、オムレツ、茹でた薄切り豚肉をたっぷりのせた野菜のサラダ、肉団子を足したスープ。ふぅ~。料理のスキルがあってよかった。効率が全然違うんだよね。




それから、幾日か。ひたすら索敵に精を出して過ぎていった。夕食に使える魔物が時々出るが、綺麗に狩ってくれるから後処理が楽すぎる。自分たちの夕食になるって分かってるから、血抜きもしっかりされているし、休憩中に私が摘む薬草や香草もいい仕事をしてくれる。私の料理は、雇い主の会頭にも気に入ってもらえた。主要メンバーだけ別メニューにした甲斐があるというものだ。

「今日の夕食は何?」

私と一緒に荷台に乗るリズは、よく下拵えを手伝ってくれる。

「肉じゃが。枝豆のサラダ。タンドリーチキン。堅パン。春雨スープ」

「タンドリーチキンかぁ。唐揚げが食べたいねぇ」

唐揚げかぁ。下味を付けてるところだけど出来なくはないか。

「じゃ、唐揚げにしよう」

ガッツポーズのリズは、鶏の唐揚げが大好きだ。3日に一度くらいの割合で、唐揚げを提案してくる。そんなに頻繁に食べたいかなぁ?

「あ。敵襲。11時に人?20人?もっとか。23人。2時に魔物。豚系。15体。このままだと10分後にほぼ同時に遭遇しそうだよ」

「ベンツ!伝令!11時に盗賊23。2時に豚系。15。10分後、ほぼ同時に遭遇だ!!!」

「マジか?!」

程なくして、馬車が歩みを止めた。そして、リズが馬車を中心に結界を張る。《疾風》は魔物に、専属護衛たちは盗賊に別れて戦闘だ。遠くから刃物の当たる音が聞こえる。人間相手の方は苦戦しているようだ。と、専属護衛を掻い潜り、ここまで来た盗賊がいた。

「へっへぇ。こんな柔な結界なんて、ちょちょいだぜ。おい!周りの警戒は任せたぞ」

「へい」

どうやら魔術師とただの盗賊のようだ。リズの結界に指を這わせて解析を試みている。私は、タナートから教えられたとおり、こっそりとリズの結界の隙を埋めるように土魔法の結界を埋め込んだ。

「なんだ、こりゃ。急に強度が変わった?!チッ。厄介なことしやがって!」

地面に干渉して魔術師の解析の邪魔をする。波打つ地面には立っているのもやっとなはずだ。解析なんて集中力の要ること、続けられるわけがない。

「うわっ!畜生。どうなってんだよ」

「てめー!俺に掴まってんじゃねぇ!!!倒れるだろうがよ!」

時間稼ぎのつもりが、内輪もめに発展した。出来るなら、ベンツたちが戻ってくるまで揉めててほしい。

「こっちは済んだぞ。っと、なんだこいつら?」

「ベンツ!盗賊の仲間だよ。リズの結界を解析して解除しようとしてる!」

「おっしゃ!任せとけ」

ベンツとスパイル、ラックの過剰な攻撃であっという間にふたりは地に伏した。腕っ節はそれ程でもなかったようだ。

「こいつ、賞金首だ」

スパイルが魔術師の似顔絵を冒険者ギルドの掲示板で見て覚えていた。程なくして専属護衛たちのほうも戦闘を終えて戻ってきた。こちらに負傷者が何人も出てしまうほどの腕前は、やはり賞金首が混ざっていたからだった。今、回復薬とリズの治癒で治療されている。

「会頭、どうしますか?」

「死体も含めて、全員、荷馬車に積んで運ぶしかないな。ぎゅうぎゅうだが、コルドラコなら運べるだろう」

死体と一緒・・・・。会頭、えげつないな。吐きそう。

私たちは、護衛騎士のコルドラコに別れて乗り、この地点から4時間の比較的大きな街まで先を急ぐこともなくのんびりと揺られた。荷馬車は見ない。見てはいけない。街に着いた頃には、盗賊たちはぐったりとしていたが、自業自得だね。
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