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拾ったものは?
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ダムの兄だというジムに会った翌日。長旅の疲れからか起きたのは昼過ぎ。若返ってよかったと本気で思った。25歳に野宿込みの馬車旅1月はキツいと今更ながら思う。疲労も回復したことだし、アイテムバッグにあるパンとキュウリとトマトでさっさと食事を済ませると、メタデルタの王都を散策に出掛けることにした。この国は、ラスティナに比べると過ごしやすい。今は夏だからラスティナで着ていた服でも浮かないけど、夕方は羽織がいる。私は、薄手のワンピースを着て行くことにした。
「嬢ちゃん。スイカどうだい?」
「こっちは採れたてのキュウリにトマトだ」
「肉はどうかね?」
昼間でも凄い活気だ。お値打ち品を買いつつ、でも、今日の目的は違うんだよね。市場を通り抜け、やって来たのは魔道具のお店や鍛冶工房が所狭しと並ぶ通り。拾ったアイテムバッグがあるけど、もうひとつほしい。今後の旅には必要になる。今、私が使っているのは一番小さいサイズで、荷馬車1台分の容量がある。せめてもう1サイズ大きい家1軒分がほしい。適正価格と良心的な店は会頭に聞き込み済みだ。
「いらっしゃい」
「あのー。サザンナの会頭さんからの紹介できたんですが」
ふくよかな女将さんが信じられないという顔をしている。
「おやまあ。珍しいこともあるもんだね。あの気難しい会頭さんからの紹介とは。何か証明するものはあるかい?」
おずおずメダルを差し出した。気難しい会頭さんとは、誰のことだろう?サザンナの会頭さんは優しくて気前がよかった。メダルを確認した女将さんは、吃驚して口をあんぐりと開けている。
「本物だよ。槍でも降るかね?」
私にメダルを返しながら恐ろしいことを呟いた。この世界では槍が降るのか?そんなわけない、よね?
「それで、アイテムバッグを見せてほしいんですが」
「あ、ああ。どんな形状のものがいいんだい?バッグかブレスレットか指輪あたりが主流だね。大きさは?」
「家1軒分のもので、ブレスレットと指輪を見せてもらえると」
女将さんが出してくれたのは、ほっそりとしたブレスレットに魔石とサファイアが填め込まれたものと、太めの幅の指輪に少し大きめの魔石とエメラルドが填め込まれたものだった。値段は金貨10枚。賞金首の山分けが飛んでいく。青か緑か。悩みに悩んで指輪にした。他にも旅に要りそうな魔道具を購入していく。ランプや二口コンロ、回復薬など支払合計金貨12枚。魔道具、高すぎる。購入した指輪に魔力を流して使用者登録をしたあと、買い物を続けるべく魔道具店を後にした。鍋等の調理道具を揃え、クッションや布等を買い込んだ。お値打ち品を手に入れられたことにホクホクと足取りも軽く帰路につく。
「お前のような役立たず、もう要らないわ!」
ドサッ
夕食は何かなぁと、のほほんと通りの商店を覗いていると、前方から怒鳴り声と何かが倒れる音がした。視線を音のほうに向けるとガラガラと馬車が遠ざかっていく。そのすぐそば。フラフラと路地に入るひとりの幼い少女がいた。誰も声をかけない。というか、見えていないかのように視線すら投げかけない。私は慌てて少女を追った。程なくして路地のさらに細い路地に倒れている少女を見つけることが出来た。ボロボロの下着と見間違うような服を着ている。そっと抱き上げた身体は、骨と皮。それだけでなく、痣と鞭打たれた傷で埋め尽くされていた。
「酷い・・・・。大丈夫、なわけないよね。痛いよね。痛いの痛いの飛んでけ~。つけた奴に飛んでけ~」
若干パニックになった私は、思わずそう呟いた。ちょっとでもよくなればいい、その思いだけで、何度も同じ言葉を呟きながら、布で包んだその少女を抱えて冒険者ギルドを目指した。
バン!!!
「ジム!ジム!」
ギルマスの名前を呼びながら、冒険者ギルドの2階へ上がる階段のところに居る私はさぞ目立ったことだろう。
「ちょっと。あなた、ギルマスは忙しいのよ。用があるなら私が聞くわ」
「ジム!いないの!」
「だから!」
受付嬢は、注意してもジムを呼ぶことをやめない私にイラッとして睨んでくるが、そんなの気にならないほど私は焦っていた。
「なんだ?」
何度目かの呼びかけで、2階からのっそりとジムが降りて来た。
「申し訳ありません。何処の子か分かりませんが、突然ここに来て」
「なんだ、ミャーサか」
「ギルマスの、お知り合い、でしたか?」
受付嬢は私とジムを見比べて納得のいかない顔をしている。そんなことはどうでもいい。
「ジム!遅い!!!この子、どうにかならない?」
「チッ。昨日の今日で厄介事かよ。まあ、いい。来い。誰かタマキを呼んでこい」
「はい!僕が!」
ジムの後について階段を登る。後ろがざわざわとしている。バタンと、恐らく執務室だろうと思われる部屋の扉が閉まり、ジムとふたりになった。
「で?・・・・何処で拾った?」
ジムの顰めっ面が、子猫を拾ってきた子供に『返してきなさい!』と言う母の顔そっくりだ。
「馬車から棄てられたのを拾った。何かする前に知らせろって言ってたでしょ?傷も酷いし栄養状態も悪いし。見捨てておけないじゃない。それに、こんな子供が馬車から放り出されてるのに誰も気付かないなんてある?」
「ハァ。気付いてないのか?その子のことは誰にも見えてないぞ?」
「は?え?誰にも?ジムには見えてるんだよね?」
「ああ。その子は、奴隷だったのを使えなくなって棄てたんだろう。首輪の跡がある」
「奴隷・・・・」
「この国に奴隷制度はない。この国だけじゃない。周辺の国はどこも禁止している。非合法だ。だから、奴隷の首輪を外して棄てた。この子は誰にも見つからないように外されてすぐに魔法で身を隠したんだ」
「普通に見えてるんだけど?ジムにも見えるんでしょう?」
何が何だか分からない。見えてるのに、誰にも見えてないって・・・・。
「ダムの勘は外れないな」
何でそこでダムが出てくるの?!
コンコンコン
「入れ」
「失礼します」
ジムの入室許可を得て入ってきたのは。うわあ。何この美人。
「嬢ちゃん。スイカどうだい?」
「こっちは採れたてのキュウリにトマトだ」
「肉はどうかね?」
昼間でも凄い活気だ。お値打ち品を買いつつ、でも、今日の目的は違うんだよね。市場を通り抜け、やって来たのは魔道具のお店や鍛冶工房が所狭しと並ぶ通り。拾ったアイテムバッグがあるけど、もうひとつほしい。今後の旅には必要になる。今、私が使っているのは一番小さいサイズで、荷馬車1台分の容量がある。せめてもう1サイズ大きい家1軒分がほしい。適正価格と良心的な店は会頭に聞き込み済みだ。
「いらっしゃい」
「あのー。サザンナの会頭さんからの紹介できたんですが」
ふくよかな女将さんが信じられないという顔をしている。
「おやまあ。珍しいこともあるもんだね。あの気難しい会頭さんからの紹介とは。何か証明するものはあるかい?」
おずおずメダルを差し出した。気難しい会頭さんとは、誰のことだろう?サザンナの会頭さんは優しくて気前がよかった。メダルを確認した女将さんは、吃驚して口をあんぐりと開けている。
「本物だよ。槍でも降るかね?」
私にメダルを返しながら恐ろしいことを呟いた。この世界では槍が降るのか?そんなわけない、よね?
「それで、アイテムバッグを見せてほしいんですが」
「あ、ああ。どんな形状のものがいいんだい?バッグかブレスレットか指輪あたりが主流だね。大きさは?」
「家1軒分のもので、ブレスレットと指輪を見せてもらえると」
女将さんが出してくれたのは、ほっそりとしたブレスレットに魔石とサファイアが填め込まれたものと、太めの幅の指輪に少し大きめの魔石とエメラルドが填め込まれたものだった。値段は金貨10枚。賞金首の山分けが飛んでいく。青か緑か。悩みに悩んで指輪にした。他にも旅に要りそうな魔道具を購入していく。ランプや二口コンロ、回復薬など支払合計金貨12枚。魔道具、高すぎる。購入した指輪に魔力を流して使用者登録をしたあと、買い物を続けるべく魔道具店を後にした。鍋等の調理道具を揃え、クッションや布等を買い込んだ。お値打ち品を手に入れられたことにホクホクと足取りも軽く帰路につく。
「お前のような役立たず、もう要らないわ!」
ドサッ
夕食は何かなぁと、のほほんと通りの商店を覗いていると、前方から怒鳴り声と何かが倒れる音がした。視線を音のほうに向けるとガラガラと馬車が遠ざかっていく。そのすぐそば。フラフラと路地に入るひとりの幼い少女がいた。誰も声をかけない。というか、見えていないかのように視線すら投げかけない。私は慌てて少女を追った。程なくして路地のさらに細い路地に倒れている少女を見つけることが出来た。ボロボロの下着と見間違うような服を着ている。そっと抱き上げた身体は、骨と皮。それだけでなく、痣と鞭打たれた傷で埋め尽くされていた。
「酷い・・・・。大丈夫、なわけないよね。痛いよね。痛いの痛いの飛んでけ~。つけた奴に飛んでけ~」
若干パニックになった私は、思わずそう呟いた。ちょっとでもよくなればいい、その思いだけで、何度も同じ言葉を呟きながら、布で包んだその少女を抱えて冒険者ギルドを目指した。
バン!!!
「ジム!ジム!」
ギルマスの名前を呼びながら、冒険者ギルドの2階へ上がる階段のところに居る私はさぞ目立ったことだろう。
「ちょっと。あなた、ギルマスは忙しいのよ。用があるなら私が聞くわ」
「ジム!いないの!」
「だから!」
受付嬢は、注意してもジムを呼ぶことをやめない私にイラッとして睨んでくるが、そんなの気にならないほど私は焦っていた。
「なんだ?」
何度目かの呼びかけで、2階からのっそりとジムが降りて来た。
「申し訳ありません。何処の子か分かりませんが、突然ここに来て」
「なんだ、ミャーサか」
「ギルマスの、お知り合い、でしたか?」
受付嬢は私とジムを見比べて納得のいかない顔をしている。そんなことはどうでもいい。
「ジム!遅い!!!この子、どうにかならない?」
「チッ。昨日の今日で厄介事かよ。まあ、いい。来い。誰かタマキを呼んでこい」
「はい!僕が!」
ジムの後について階段を登る。後ろがざわざわとしている。バタンと、恐らく執務室だろうと思われる部屋の扉が閉まり、ジムとふたりになった。
「で?・・・・何処で拾った?」
ジムの顰めっ面が、子猫を拾ってきた子供に『返してきなさい!』と言う母の顔そっくりだ。
「馬車から棄てられたのを拾った。何かする前に知らせろって言ってたでしょ?傷も酷いし栄養状態も悪いし。見捨てておけないじゃない。それに、こんな子供が馬車から放り出されてるのに誰も気付かないなんてある?」
「ハァ。気付いてないのか?その子のことは誰にも見えてないぞ?」
「は?え?誰にも?ジムには見えてるんだよね?」
「ああ。その子は、奴隷だったのを使えなくなって棄てたんだろう。首輪の跡がある」
「奴隷・・・・」
「この国に奴隷制度はない。この国だけじゃない。周辺の国はどこも禁止している。非合法だ。だから、奴隷の首輪を外して棄てた。この子は誰にも見つからないように外されてすぐに魔法で身を隠したんだ」
「普通に見えてるんだけど?ジムにも見えるんでしょう?」
何が何だか分からない。見えてるのに、誰にも見えてないって・・・・。
「ダムの勘は外れないな」
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コンコンコン
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「失礼します」
ジムの入室許可を得て入ってきたのは。うわあ。何この美人。
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