14 / 28
追求
部屋に入ってきた美人とジムを思わず見比べてしまった。神様って不公平だよね。
「なんだ。何か文句でもあるのか?」
じろりと睨まれたが、文句なんてあるわけない。ブンブンブンと勢いよく首を横に振る。ま、まあ、お互いに個性的ということで。
「急に呼び出すなんて、どうしましたか?」
「ああ。ちびの抱えてるお方を見てほしくてな」
私は、ソファーにそっと布にくるんだ女の子を置いた。美人さんは、その子に視線を向けると、はっきりと分かるくらいに目を剥いた。その姿も美しいって凄い。
「ジム。この方を何処で?」
「ちびが連れて来た」
そこで初めて美人さんは私に目を向けた。
「・・・・」
「・・・・」
美人さんに見蕩れる私と不審人物を見るような視線の美人さん。お互いに全然違う理由から言葉を発せずにいる。
「しゃべれよ、お前たち。ちびはミャーサ。ダムが世話を焼いてる奴だ」
「ダムが?」
納得のいっていない表情の美人さんだったが、このままでは埒があかないと判断したのだろう。嫌々ながら私に話しかけてきた。
「私はタマキ。この方を何処から連れてきたのですか?」
「ミャーサと言います。えっと、馬車から棄てられたので拾いました」
「嘘はいけませんよ。この方が見えていることがおかしいと分かっていますか?」
分かっていません。
「・・・・。そんなことより、この子、どうにか出来ないなら、リズのところに連れて行きたいんだけど」
好戦的な美人さんタマキではなく、強面ジムを睨んだ。リズはまだ帰っていないだろう。だから、ここに連れてきたのに。
「無駄ですよ。見えないのに治癒は出来ないでしょう。それに、人族の治癒はこの方には効きませんから」
美人さんが女の子にそっと触れると、女の子はふわっと優しい光に包まれた。少しずつ光が女の子に吸収されて、傷だらけだった女の子は骨と皮は変わらないものの綺麗な肌を取り戻した。
「凄い」
「タマキは医者だ」
「目が覚めたら少しずつ滋養のあるものを与えればすぐに健康体になるでしょう。・・で、あなたは何者ですか?」
治癒が終わるとホッとしたタマキの鋭い視線が再び私に向けられた。私は・・・・。
「スローライフ希望の旅人です」
「「・・・・・・」」
駄目ですか?そうですか。
「ジム、ダムは何と?」
「調査中だとよ。タナートとアキたちで4月かかってそれだ」
私の調査?なんで?なんでよ?アキとロルフも私のこと、調べてたの?私、何かした?・・・・あ、うん、ちょっとしたかも。でも、調べられるようなことはしてないはず。グルグルと頭の中でここに来てからの自分のことが駆け巡る。なんで調べられてるのか分からないことが気持ち悪いし、この世界に巻き込まれ召喚されたことがバレるんじゃないかと、私の脳内はパニック寸前だ。
「経過報告は?」
「王宮に注文を届けたパン屋の荷台から降りたところからしか情報がない。それ以前は全くゼロ。どの国の出入国の記録にもない。見慣れない服を着替えた後、屋台の親父から串焼きをごちそうになって冒険者ギルドに来た」
ほぼほぼ正確に私の足取りを掴んでいることが恐ろしい。どうしよう。ちょっとずつ扉のほうに移動してはみたが、私から目を離さないふたりから逃れられるとも思えなかった。
「で、あなたは何者ですか?」
「・・・・・・」
言葉に詰まる。何者か?それは・・・・。
「この方の姿が見えるあなたは、何者ですか?」
先程より言葉が強い。
「えっ・と、じゅ、住所不定無職で、す?」
自分でも何を言っているか分からない。怖い。美人の真顔の迫力、怖い。涙が零れそうだ。
「そう追い詰めるな、タマキ。ちびは常識がないんだぞ?正攻法で聞いても、頓珍漢な返事が返ってくる。今みたいにな」
助け船を出してくれたつもりのジムの言い分も酷いとしか言いようがなかった。パニックになれば、分かるよ。自分が何言ってるか、分からなくなるって。
「ハァ。とにかく、この方を何処で見つけたのかはしっかりと聞き出してくださいよ?」
「分かった。ミャーサ、宿は《イタチの巣》だったな?」
コクコクと頷く。
「そうか。じゃあ、引き払いに行こうな?《疾風》の連中にも挨拶しないとなぁ」
え?何故?まだ、この国から離れるつもりはないんだけど?
「え?いや、あの・・・・」
「余計なことは言わない。出来るな?」
怖い。笑ってるジムの顔が怖い。助けを求めようにもここにはジムの味方、美人さんタマキしかいない。そのタマキは、甲斐甲斐しく女の子の世話をしている。かくして、私はジムに連行されて、《疾風》のみんなにバイバイをして宿を引き払った。ジムの「ちびに依頼が入った」という言葉を疑う者は誰もいなかった。あ~あ。これが信用というものか。ギルドの裏口から再び執務室に戻ると、タマキがのんびりとお茶をしていた。あの子は綺麗な服に着替えさせられて、変わらずソファーで眠っている。少し顔色もよくなったようだ。ほっとした。そして、もうひとり。
「師匠!!!」
壁により掛かり疲れた顔をしたタナートが私に片手をあげていた。
「やあ、ミャーサ。早速やらかしてくれたようだねぇ」
「はあ?!師匠のせいで常識なしって言われてるんですけどぉ?!それに!私の調査ってなんなんですかあ!!!」
そうだよ!ぜ~んぶ、タナートのせいだ。
「それは、私のせいじゃない。君の常識がおかしいのさ。常識を突き破ってしまう君の面倒なんて見れるのは私くらいだよ?」
そんな・・・・。
「タナート。そんなことはどうでもいいですから、この方のことを聞き出しなさい」
「へいへい」
美人さんの冷たく鋭い視線は怖いからこっちに向けないでもらいたい。
「さあ、いろいろと吐いてもらおうか」
ジムの一言で私への尋問が始まった。
「なんだ。何か文句でもあるのか?」
じろりと睨まれたが、文句なんてあるわけない。ブンブンブンと勢いよく首を横に振る。ま、まあ、お互いに個性的ということで。
「急に呼び出すなんて、どうしましたか?」
「ああ。ちびの抱えてるお方を見てほしくてな」
私は、ソファーにそっと布にくるんだ女の子を置いた。美人さんは、その子に視線を向けると、はっきりと分かるくらいに目を剥いた。その姿も美しいって凄い。
「ジム。この方を何処で?」
「ちびが連れて来た」
そこで初めて美人さんは私に目を向けた。
「・・・・」
「・・・・」
美人さんに見蕩れる私と不審人物を見るような視線の美人さん。お互いに全然違う理由から言葉を発せずにいる。
「しゃべれよ、お前たち。ちびはミャーサ。ダムが世話を焼いてる奴だ」
「ダムが?」
納得のいっていない表情の美人さんだったが、このままでは埒があかないと判断したのだろう。嫌々ながら私に話しかけてきた。
「私はタマキ。この方を何処から連れてきたのですか?」
「ミャーサと言います。えっと、馬車から棄てられたので拾いました」
「嘘はいけませんよ。この方が見えていることがおかしいと分かっていますか?」
分かっていません。
「・・・・。そんなことより、この子、どうにか出来ないなら、リズのところに連れて行きたいんだけど」
好戦的な美人さんタマキではなく、強面ジムを睨んだ。リズはまだ帰っていないだろう。だから、ここに連れてきたのに。
「無駄ですよ。見えないのに治癒は出来ないでしょう。それに、人族の治癒はこの方には効きませんから」
美人さんが女の子にそっと触れると、女の子はふわっと優しい光に包まれた。少しずつ光が女の子に吸収されて、傷だらけだった女の子は骨と皮は変わらないものの綺麗な肌を取り戻した。
「凄い」
「タマキは医者だ」
「目が覚めたら少しずつ滋養のあるものを与えればすぐに健康体になるでしょう。・・で、あなたは何者ですか?」
治癒が終わるとホッとしたタマキの鋭い視線が再び私に向けられた。私は・・・・。
「スローライフ希望の旅人です」
「「・・・・・・」」
駄目ですか?そうですか。
「ジム、ダムは何と?」
「調査中だとよ。タナートとアキたちで4月かかってそれだ」
私の調査?なんで?なんでよ?アキとロルフも私のこと、調べてたの?私、何かした?・・・・あ、うん、ちょっとしたかも。でも、調べられるようなことはしてないはず。グルグルと頭の中でここに来てからの自分のことが駆け巡る。なんで調べられてるのか分からないことが気持ち悪いし、この世界に巻き込まれ召喚されたことがバレるんじゃないかと、私の脳内はパニック寸前だ。
「経過報告は?」
「王宮に注文を届けたパン屋の荷台から降りたところからしか情報がない。それ以前は全くゼロ。どの国の出入国の記録にもない。見慣れない服を着替えた後、屋台の親父から串焼きをごちそうになって冒険者ギルドに来た」
ほぼほぼ正確に私の足取りを掴んでいることが恐ろしい。どうしよう。ちょっとずつ扉のほうに移動してはみたが、私から目を離さないふたりから逃れられるとも思えなかった。
「で、あなたは何者ですか?」
「・・・・・・」
言葉に詰まる。何者か?それは・・・・。
「この方の姿が見えるあなたは、何者ですか?」
先程より言葉が強い。
「えっ・と、じゅ、住所不定無職で、す?」
自分でも何を言っているか分からない。怖い。美人の真顔の迫力、怖い。涙が零れそうだ。
「そう追い詰めるな、タマキ。ちびは常識がないんだぞ?正攻法で聞いても、頓珍漢な返事が返ってくる。今みたいにな」
助け船を出してくれたつもりのジムの言い分も酷いとしか言いようがなかった。パニックになれば、分かるよ。自分が何言ってるか、分からなくなるって。
「ハァ。とにかく、この方を何処で見つけたのかはしっかりと聞き出してくださいよ?」
「分かった。ミャーサ、宿は《イタチの巣》だったな?」
コクコクと頷く。
「そうか。じゃあ、引き払いに行こうな?《疾風》の連中にも挨拶しないとなぁ」
え?何故?まだ、この国から離れるつもりはないんだけど?
「え?いや、あの・・・・」
「余計なことは言わない。出来るな?」
怖い。笑ってるジムの顔が怖い。助けを求めようにもここにはジムの味方、美人さんタマキしかいない。そのタマキは、甲斐甲斐しく女の子の世話をしている。かくして、私はジムに連行されて、《疾風》のみんなにバイバイをして宿を引き払った。ジムの「ちびに依頼が入った」という言葉を疑う者は誰もいなかった。あ~あ。これが信用というものか。ギルドの裏口から再び執務室に戻ると、タマキがのんびりとお茶をしていた。あの子は綺麗な服に着替えさせられて、変わらずソファーで眠っている。少し顔色もよくなったようだ。ほっとした。そして、もうひとり。
「師匠!!!」
壁により掛かり疲れた顔をしたタナートが私に片手をあげていた。
「やあ、ミャーサ。早速やらかしてくれたようだねぇ」
「はあ?!師匠のせいで常識なしって言われてるんですけどぉ?!それに!私の調査ってなんなんですかあ!!!」
そうだよ!ぜ~んぶ、タナートのせいだ。
「それは、私のせいじゃない。君の常識がおかしいのさ。常識を突き破ってしまう君の面倒なんて見れるのは私くらいだよ?」
そんな・・・・。
「タナート。そんなことはどうでもいいですから、この方のことを聞き出しなさい」
「へいへい」
美人さんの冷たく鋭い視線は怖いからこっちに向けないでもらいたい。
「さあ、いろいろと吐いてもらおうか」
ジムの一言で私への尋問が始まった。
あなたにおすすめの小説
私ですか?
庭にハニワ
ファンタジー
うわ。
本当にやらかしたよ、あのボンクラ公子。
長年積み上げた婚約者の絆、なんてモノはひとっかけらもなかったようだ。
良く知らんけど。
この婚約、破棄するってコトは……貴族階級は騒ぎになるな。
それによって迷惑被るのは私なんだが。
あ、申し遅れました。
私、今婚約破棄された令嬢の影武者です。
追放された宮廷花師が辺境の荒野に花を咲かせたら、王都の庭園だけが枯れ続けているようです
歩人
ファンタジー
「花を飾るだけの令嬢は不要だ」——王城の庭園を十年守った伯爵令嬢フローラは追放された。
翌月、王城の庭園が一夜にして枯れ果てる。さらに隣国への外交花束を用意できず国際問題に——
フローラの花束に込められた花言葉が、実は外交メッセージそのものだったのだ。
一方、辺境の荒野に降り立ったフローラが地面に触れると花が芽吹き始める。
荒野を花畑に変えていくスローライフの中で、花の感情が色で見える加護が目覚めて——。
【完結】徒花の王妃
つくも茄子
ファンタジー
その日、王妃は王都を去った。
何故か勝手についてきた宰相と共に。今は亡き、王国の最後の王女。そして今また滅びゆく国の最後の王妃となった彼女の胸の内は誰にも分からない。亡命した先で名前と身分を変えたテレジア王女。テレサとなった彼女を知る数少ない宰相。国のために生きた王妃の物語が今始まる。
「婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?」の王妃の物語。単体で読めます。
今、私は幸せなの。ほっといて
青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。
卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。
そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。
「今、私は幸せなの。ほっといて」
小説家になろうにも投稿しています。
【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。
まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」
そう、第二王子に言われました。
そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…!
でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!?
☆★☆★
全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。
読んでいただけると嬉しいです。
特技は有効利用しよう。
庭にハニワ
ファンタジー
血の繋がらない義妹が、ボンクラ息子どもとはしゃいでる。
…………。
どうしてくれよう……。
婚約破棄、になるのかイマイチ自信が無いという事実。
この作者に色恋沙汰の話は、どーにもムリっポい。
最後に言い残した事は
白羽鳥(扇つくも)
ファンタジー
どうして、こんな事になったんだろう……
断頭台の上で、元王妃リテラシーは呆然と己を罵倒する民衆を見下ろしていた。世界中から尊敬を集めていた宰相である父の暗殺。全てが狂い出したのはそこから……いや、もっと前だったかもしれない。
本日、リテラシーは公開処刑される。家族ぐるみで悪魔崇拝を行っていたという謂れなき罪のために王妃の位を剥奪され、邪悪な魔女として。
「最後に、言い残した事はあるか?」
かつての夫だった若き国王の言葉に、リテラシーは父から教えられていた『呪文』を発する。
※ファンタジーです。ややグロ表現注意。
※「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載。
私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい
あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。
誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。
それが私の最後の記憶。
※わかっている、これはご都合主義!
※設定はゆるんゆるん
※実在しない
※全五話