巻き込まれ召喚になった私はまったりのんびりスローライフを目指します!

紅子

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軟禁

シーンと静まりかえる部屋は、緊張感がありすぎて、トイレに行きたくなってきた。だが、ここで行っていいか聞くのも憚られる。

「さあ、ミャーサ。この方を何処で見つけたの?」

「馬車から棄てられてたのを見て・・路地に入っていったから追いかけたの。そしたら、脇に倒れてたから、ここに連れてきた」

「その馬車に家紋か何かを見なかった?」

家紋?

「ちょっと距離があったから」

「その馬車を見た場所は?」

「この通りの1本隣の通り。布とか鍋とか売る店が連なってる。その通りのパン屋の前にいたら、怒鳴り声が聞こえて『お前のような役立たず、もう要らないわ!』って。そっちを見たら、馬車は走り出してて、ボロボロのその子が路地に入っていったから」

タナートは顎に手を添えて何か考えているし、ジムは目を閉じている。タマキだけは私をじっと見て、嘘か本当か見極めているようだ。

「その馬車の行き先を追えない?」

馬車の行き先ねぇ。追えないことはないんだけど。はっきり言えば、それに協力する義理も恩もない。

「私、何でこんな尋問受けてるの?それに、強引に宿を引き払われるし。私はその子を助けただけ。詳しいことはその子に聞いて?その子があなた達の知り合いなら保護すればいいよ。私は別の宿を取って、明日にでも王都から出ていくから」

何を疑われているのか知らないけど、勝手に身元を調べられて、尋問まがいのことをされて、気分が悪い。

「疑いを晴らしたければ、質問に答えてください」

「疑いたければ疑えば?それに追えたとして、私にそれをする義理はない」

「「「・・・・・・」」」

大体、晴らすような疑いがない。私は押し黙る3人を置いて、部屋から出ようとした。その時。

「ミャーサ。お前を拘束する」

ジムは、それだけ言うと私を何か特殊なもので縛り上げた。

「なっ!何するの?!」

「ごめんねぇ。君を野放しには出来ないんだよ。大人しくしててくれたら、危害は加えないからさぁ」

既に危害を加えられてますが!!!文句を言おうとした私の口に素早く布が当てられた。すぐに視界がぼやけ始める。私がヤバい!と思ったと同時に植物の心が発動したのを感じたが、薄れゆく意識を引き留めることは出来なかった。









「ねぇ、ここまでしなくても。もっと普通の部屋とかさぁ」

「だが、何処と繋がっているか分からないのでしょう?」

「そうなんだけどねぇ」

「絆されでもしましたか、あなたともあろう方が」

「・・・・・・」

少しずつ意識が浮上して、聞こえてきたのはタナートとタマキの声。ぽすんと柔らかいものの上に置かれた。

「あの方の意識が戻るまでは逃がせませんよ」

ふたりが遠ざかっていくのが気配で分かった。そして、バタンという重々しい音がした後は、静寂が私を包んだ。

「フウ」

さて、ここは何処だろう?と起き上がってはみたものの全く見覚えのないところだった。当たり前か。ふかふかのベッド。毛足の長い絨毯。脇にあるキャビネットもベッドにも細かな彫刻がされているし、ソファーやテーブルも品があり手触りは高級なものだ。部屋の広さも宿屋とは比べものにならない。高級ホテルの一室と間違えないのは、窓に鉄格子が嵌められていて、部屋の扉が鉄製だということ。罪人扱いか。ここに来て、幸運値が仕事をしなくなった。

「ハァ」

一先ず、アイテムバッグが取り上げられていないのは幸運なことなのかもしれない。その日から何日経ったか分からないが、ここを訪れる者は誰もいなかった。

食事は1日2回、食べ物の乗ったトレーが転移で届けられた。もちろん手をつけるわけがない。私だってさすがに学習する。この世界では人を簡単に信じてはいけないし、助けるなんてもってのほか。私を罪人として扱うここの食事に何も入っていないなんて誰が信用するのだろうか?幸いにも、アイテムバッグにコンロと食材、調味料が入っている。それで食いつなぎつつ、窓の格子の隙間から建物の近くにある森の食料を調達するのも怠らない。隙間が林檎1個分くらいの大きさがあって助かった。その食事も10日ほどで届くことはなくなった。

餓死を狙ってるの?逃げだそうと思えば逃げ出せる。ここの部屋、5階くらいの高さにあるんだけどね。植物に協力してもらえば簡単。今は、逃げるつもりはないから、常時茨で部屋を覆って外からの侵入者を防いでいる。眠るときは、さらに私自身を茨で覆い、部屋の茨を破られても自衛できるようにした。

どれくらいの月日が流れたのか。パンもトマトやキュウリ、トウモロコシもなくなり、森の恵みだけで日々を凌ぐ生活にも慣れ始めた頃。建物の外が騒がしくなった。ここに来て、初めて人の気配を感じたのではないだろうか。重厚な扉の鍵がガシャンと開いた。

「出ろ」

簡易の鎧を身につけ、帯剣した兵士らしき人がふたり、扉の外から声をかけてきた。仕方なく部屋から出る。一番始めに目に入ったのは、頭の犬耳とクルクルと丸まった角だった。えっ?人間じゃない?初めて見る人種にそこから目が離せないでいると、歩くように促された。さて、次は何処に連れて行かれるのやら。トコトコとついていくと、大きな門の横にある人がひとり通れるくらいのところに連れてこられた。

「釈放だ。もう来るなよ?」

「はあ・・・・」

私の後ろでガシャンと扉が閉められる。私が居たのは何処かのお城の一角だったらしい。問題はここが何処かと言うこと。ここにいつまでも立っているわけにもいかず、ローブを羽織ると仕方なく街の方へと歩き出した。街の中には先程と同じ犬耳やら猫耳やらいろんな種類の耳や角を生やした人、耳の長く尖った人、髭を生やした背の低い人、羽の生えた人、鱗の肌を持つ人、木の枝と根を手足に持つ人などファンタジーの世界に迷い込んだよう。獣人、鬼人、エルフ、ドワーフ、有翼人、海魚人、樹木人だと後で知った。召喚されたところとは世界がまるで違う。狐に化かされた気分だ。そんな人たちの中で、樹木人をじっと観察して、私はそれに擬態することにした。

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