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ここは公爵領
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私が感傷に浸っている間に、ラフランシアの討伐の話になっていた。
「討伐もあと数日で終わる。多少のけが人は出たが、毒による死者が出なかったことは幸いだった。サイカの提供してくれた防毒と灯りの魔法陣のおかげだ。感謝する」
「いえ。お役に立てたのなら光栄です」
腐敗の森に生えているだけあって、ラフランシアの毒は強力だ。だが、その根っこは上級の魔力回復薬の材料になるし、葉っぱは乾燥して防虫剤に、肉厚な花弁からは精力剤が抽出される。
「キルギリス公爵家の専属にならないか?」
「は?!」「なっ!」
真っ直ぐに私を見つめる領主様のこの発言に、思わず声を出してしまったのは、ギルド長と副ギルド長だった。
「どうだ?なりたくてもなれるものではないぞ。報酬としては、破格だと思うが」
だから、来たくなかったんだよ。
「報酬?領主様は報酬の意味をご存じない?」
「むっ」
「今回の件、それが報酬になるとお考えなら、改めた方がよいかと」
「サイカ!」
ギルド長が小声で私を制止してきた。私が、ここに来ることすら嫌がっていたのを知っているから、何を言い出すのか気が気でないのだろう。
「十分に報いておると思うが?不服か?」
「ええ。元々、見返りが欲しかったわけではありませんし。持て余していた在庫をギルドに卸しただけなので、分不相応なものはいただけません。もし、報酬をくださるというなら、そうですね。この紅茶とお菓子を月替わりで1年間が妥当でしょうか」
ここの紅茶とお菓子は美味しい。
「何を言っているのですか、サイカ」
「報酬のお話ですよ、副ギルド長」
その理解できないという顔はやめて。
「お菓子・・・・そんなものが報酬?子供のお使いでもあるまいに。無欲な質なのか?だが、あれだけの貢献をお菓子で済ませるなど、我が家紋の恥・・・・いや、まだ成人したて故に、遠慮?」
違うし!領主様相手に遠慮なんてしない。私の発言の意図を汲みきれず、領主様は困惑しながらも、改めて私にこの報酬の意味を説明し始めた。
「んんっ。サイカよ。そういう訳にもいかぬのだ。今回のことはそれだけの貢献なのだよ。相応の報酬を出さねば、我が家の恥となることを分かってほしい」
貴族って面倒だよねぇ。
「報酬は、この紅茶とお菓子を月替わりで1年間。それで充分です。平民の私にとって、このような甘味は贅沢の極み。お貴族様とは違いますから」
下町のカフェで食べられるものとは質が大きく異なるのだから、専属よりもこっちの方が嬉しい。
「ギルド長、教育不足ではありませんか?ご領主様のご厚意を無下にするとは、不敬と言われても仕方ありませんぞ?」
後ろに控えていた人がギルド長に苦言を呈した。
「ジェラルド、控えよ」
「はっ。失礼致しました」
「我が家の家令が失礼した。よかろう。報酬は望み通りする紅茶と菓子だ。月の初めに用意しておくので」
ふ~ん、家令か。執事とは違うんだ?後に教わったこと。執事は、貴族家の内向きのことをする人、家令は、領地も含めた外向きのことをする人、だそうだ。へ~。
「交渉成立ですね。報酬は、月初めに魔法ギルドに届けてください。ギルド長、受付で預かってね」
ひとりでここに来るつもりはない。失礼なことと分かっていて領主様の言葉に被せて先手を打たせてもらった。
「いいだろう。保管しておく」
即座のギルド長の承諾に、領主様も後ろのジェラルドという人も苦虫を噛み潰したような顔をしている。定期的にここに通わせて、自分の息子と見合いでもさせるつもりだったか。たしか、17歳と15歳の息子がいたはずだ。あるいは、私を徐々に懐柔して取り込むつもりだったか。
「私の養親は、この国以外にも家を持っていました。この意味が分かりますよね?」
世間的にはそういうことになっているけど、私が持っているのはあの家だけ。はったりだよ、はったり。釘はしっかりと刺しておかないとね。
「グヌヌヌヌ・・・・。ハァ。まあよいわ。サイカがこの領地にいるだけでもよしとする。報酬は、紅茶とお菓子を月替わりで5年間だ。これは、譲れんからな。それとこれを」
差し出されたのはメダル。ジェラルド経由でそれを受け取った。何これ?と思いながら、説明を求めてギルド長たちを見ると、そのメダルを凝視して驚愕している。何、何、何?!
「サイカ。それは、公爵家から信頼されているという証だ。それを見せれば、国内なら大抵のことは融通が利くだろう。・・・・庇護を受けているともいうが」
最後、小声で呟いた言葉も私には聞こえたからね!
「これは」
「受け取ってくれるな?サイカの功績に対して、紅茶とお菓子だけではこの公爵家の面目に関わるのだ」
今度は、あちらが言葉を被せてきた。
「サイカ。受け取っておきなさい」
「副ギルド長。分かりました。ありがたく頂きます」
ヴィーグの無限収納にお蔵入り決定。すっとバッグに仕舞い込むふりをして、影にいるヴィーグに託した。
「ところで、今日はサイカの従魔は一緒ではないのか?」
「はあ、まあ」
従魔とその主は、常に一緒にいる。従魔は魔物であるから、自宅でない限り置いていくことは出来ないし、目の届くところにいるのが常識となっている。ギルド長たちには、今回ヴィーグは、自宅待機と言ってある。だが、ヴィーグは神獣であり、私の護衛だから、離れることはない。それ故に私の影に入ることが出来る。これは誰にも教えるつもりはないが。
「息子たちが見たいと希望しておったのだがな。今度、従魔と遊びに来んか?」
「従魔は見世物ではないので、連れてくるつもりはありません」
「領主様。サイカは、従魔を家族のように大切にしております。従魔に何かあれば、何の躊躇もなくすぐにこの国を出て行くでしょう。街でもよく絡まれておりますから、興味を持たれることに酷く敏感になっているのも仕方のないことと寛大に受け取っていただけると有り難い」
ギルド長の援護にコクコクと肯定しておく。
「うぅむ。そうだな。サイカのようなか弱い者からなら奪えると思う輩は多いだろうな。我が息子たちがそのような非道を働くとは思えんが、そういうことなら諦めよう」
ああ。領主様は知らないんだ。下の息子さんは、私からヴィーグを奪おうとしましたよ。しかも、往来のど真ん中で。幸いにもクライスターという貴族が取りなしてくれたおかげで、事なきを得たけどね。でも、今も狙ってますよ。ジェラルドは知っているみたいだ。眉間に皺が寄っている。
「もうこんな時間ですか。我々はそろそろお暇致します」
漸く帰れる。もう少し、私を引き留めたい領主様の視線をヒシヒシと感じるが、それに気付かないふりで、私たちはさっさとお屋敷を後にした。帰りの馬車の中「ヒヤヒヤさせられた」「寿命が縮んだ」と散々2人に文句を言われながら。私は、ぴょこぴょこと飛び跳ねていて、反論どころじゃなかったよね!
「討伐もあと数日で終わる。多少のけが人は出たが、毒による死者が出なかったことは幸いだった。サイカの提供してくれた防毒と灯りの魔法陣のおかげだ。感謝する」
「いえ。お役に立てたのなら光栄です」
腐敗の森に生えているだけあって、ラフランシアの毒は強力だ。だが、その根っこは上級の魔力回復薬の材料になるし、葉っぱは乾燥して防虫剤に、肉厚な花弁からは精力剤が抽出される。
「キルギリス公爵家の専属にならないか?」
「は?!」「なっ!」
真っ直ぐに私を見つめる領主様のこの発言に、思わず声を出してしまったのは、ギルド長と副ギルド長だった。
「どうだ?なりたくてもなれるものではないぞ。報酬としては、破格だと思うが」
だから、来たくなかったんだよ。
「報酬?領主様は報酬の意味をご存じない?」
「むっ」
「今回の件、それが報酬になるとお考えなら、改めた方がよいかと」
「サイカ!」
ギルド長が小声で私を制止してきた。私が、ここに来ることすら嫌がっていたのを知っているから、何を言い出すのか気が気でないのだろう。
「十分に報いておると思うが?不服か?」
「ええ。元々、見返りが欲しかったわけではありませんし。持て余していた在庫をギルドに卸しただけなので、分不相応なものはいただけません。もし、報酬をくださるというなら、そうですね。この紅茶とお菓子を月替わりで1年間が妥当でしょうか」
ここの紅茶とお菓子は美味しい。
「何を言っているのですか、サイカ」
「報酬のお話ですよ、副ギルド長」
その理解できないという顔はやめて。
「お菓子・・・・そんなものが報酬?子供のお使いでもあるまいに。無欲な質なのか?だが、あれだけの貢献をお菓子で済ませるなど、我が家紋の恥・・・・いや、まだ成人したて故に、遠慮?」
違うし!領主様相手に遠慮なんてしない。私の発言の意図を汲みきれず、領主様は困惑しながらも、改めて私にこの報酬の意味を説明し始めた。
「んんっ。サイカよ。そういう訳にもいかぬのだ。今回のことはそれだけの貢献なのだよ。相応の報酬を出さねば、我が家の恥となることを分かってほしい」
貴族って面倒だよねぇ。
「報酬は、この紅茶とお菓子を月替わりで1年間。それで充分です。平民の私にとって、このような甘味は贅沢の極み。お貴族様とは違いますから」
下町のカフェで食べられるものとは質が大きく異なるのだから、専属よりもこっちの方が嬉しい。
「ギルド長、教育不足ではありませんか?ご領主様のご厚意を無下にするとは、不敬と言われても仕方ありませんぞ?」
後ろに控えていた人がギルド長に苦言を呈した。
「ジェラルド、控えよ」
「はっ。失礼致しました」
「我が家の家令が失礼した。よかろう。報酬は望み通りする紅茶と菓子だ。月の初めに用意しておくので」
ふ~ん、家令か。執事とは違うんだ?後に教わったこと。執事は、貴族家の内向きのことをする人、家令は、領地も含めた外向きのことをする人、だそうだ。へ~。
「交渉成立ですね。報酬は、月初めに魔法ギルドに届けてください。ギルド長、受付で預かってね」
ひとりでここに来るつもりはない。失礼なことと分かっていて領主様の言葉に被せて先手を打たせてもらった。
「いいだろう。保管しておく」
即座のギルド長の承諾に、領主様も後ろのジェラルドという人も苦虫を噛み潰したような顔をしている。定期的にここに通わせて、自分の息子と見合いでもさせるつもりだったか。たしか、17歳と15歳の息子がいたはずだ。あるいは、私を徐々に懐柔して取り込むつもりだったか。
「私の養親は、この国以外にも家を持っていました。この意味が分かりますよね?」
世間的にはそういうことになっているけど、私が持っているのはあの家だけ。はったりだよ、はったり。釘はしっかりと刺しておかないとね。
「グヌヌヌヌ・・・・。ハァ。まあよいわ。サイカがこの領地にいるだけでもよしとする。報酬は、紅茶とお菓子を月替わりで5年間だ。これは、譲れんからな。それとこれを」
差し出されたのはメダル。ジェラルド経由でそれを受け取った。何これ?と思いながら、説明を求めてギルド長たちを見ると、そのメダルを凝視して驚愕している。何、何、何?!
「サイカ。それは、公爵家から信頼されているという証だ。それを見せれば、国内なら大抵のことは融通が利くだろう。・・・・庇護を受けているともいうが」
最後、小声で呟いた言葉も私には聞こえたからね!
「これは」
「受け取ってくれるな?サイカの功績に対して、紅茶とお菓子だけではこの公爵家の面目に関わるのだ」
今度は、あちらが言葉を被せてきた。
「サイカ。受け取っておきなさい」
「副ギルド長。分かりました。ありがたく頂きます」
ヴィーグの無限収納にお蔵入り決定。すっとバッグに仕舞い込むふりをして、影にいるヴィーグに託した。
「ところで、今日はサイカの従魔は一緒ではないのか?」
「はあ、まあ」
従魔とその主は、常に一緒にいる。従魔は魔物であるから、自宅でない限り置いていくことは出来ないし、目の届くところにいるのが常識となっている。ギルド長たちには、今回ヴィーグは、自宅待機と言ってある。だが、ヴィーグは神獣であり、私の護衛だから、離れることはない。それ故に私の影に入ることが出来る。これは誰にも教えるつもりはないが。
「息子たちが見たいと希望しておったのだがな。今度、従魔と遊びに来んか?」
「従魔は見世物ではないので、連れてくるつもりはありません」
「領主様。サイカは、従魔を家族のように大切にしております。従魔に何かあれば、何の躊躇もなくすぐにこの国を出て行くでしょう。街でもよく絡まれておりますから、興味を持たれることに酷く敏感になっているのも仕方のないことと寛大に受け取っていただけると有り難い」
ギルド長の援護にコクコクと肯定しておく。
「うぅむ。そうだな。サイカのようなか弱い者からなら奪えると思う輩は多いだろうな。我が息子たちがそのような非道を働くとは思えんが、そういうことなら諦めよう」
ああ。領主様は知らないんだ。下の息子さんは、私からヴィーグを奪おうとしましたよ。しかも、往来のど真ん中で。幸いにもクライスターという貴族が取りなしてくれたおかげで、事なきを得たけどね。でも、今も狙ってますよ。ジェラルドは知っているみたいだ。眉間に皺が寄っている。
「もうこんな時間ですか。我々はそろそろお暇致します」
漸く帰れる。もう少し、私を引き留めたい領主様の視線をヒシヒシと感じるが、それに気付かないふりで、私たちはさっさとお屋敷を後にした。帰りの馬車の中「ヒヤヒヤさせられた」「寿命が縮んだ」と散々2人に文句を言われながら。私は、ぴょこぴょこと飛び跳ねていて、反論どころじゃなかったよね!
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