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ストーカー現る
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『サイカの創る魔法陣は何度見ても美しいな』
ヴィーグは、私の魔法陣を見るのが好きだ。美しいとか洗練されているとか、褒め倒してくれる。もっと褒めてくれてもいい。やる気が出る。
「ありがとう。この転移の魔法陣を改良して転移先を追跡できないようにしたいんだよね。それに、出来れば、魔法陣に転移先を指定するんじゃなくて、思い描いた先に行けるとなおよし!」
転移先ごとに魔法陣が必要だと、魔石や紙などの媒体の数ばかり増えて面倒じゃない?
『追跡不可は難しくはなかろうが、任意の場所に転移するとなるとどう指定するのだ?』
「そこなんだよねぇ。そこが上手くいかなくて。ちょっと気分転換に外に行こうか」
煮詰まってるときには、自然に触れると頭の中がリセットされてアイデアが湧いてくる。これ、前の世界の実体験。ヴィーグをお供に海に採集に来た。貝類が豊富に獲れる穴場で素潜りしながら、わかめや昆布を引っこ抜く。ヴィーグも海老などを器用に捕まえていた。
「これだけあれば、暫くもつかな」
『今日は、デカい蟹もいたぞ』
本日の成果を見せあい、洗浄の魔法陣を起動した。海水べっとりで不快だった私とヴィーグの身体は、あっという間にサッパリとした。気分もスッキリしたところで、バケツを無限鞄にしまい、気分転換ということで、貴族御用達のおしゃれなカフェに。テラス席のあるそこはヴィーグと来るにはぴったりのところで、お高いだけあってケーキも美味しい。私の足元に陣取ったヴィーグを撫でていると向かいの椅子に座った者がいる。
「やあ、奇遇だね、サイカ。ここの領主に会ったんだって?」
「・・・・・・」
今私が最も迷惑に思っている人物だ。最近はここに来ると必ずこうして向かいに座る。ここでなくても、私が向かう先に必ずいて、声をかけてくるのだ。気持ちが悪い。
「あっ。僕にもコーヒー」
私が曖昧な微笑みを浮かべて無視をしても図々しく居座るのだから、しかめっ面になるのも仕方がないと思う。
「そんなに固くならなくても、仲良くしたいだけなんだけどなぁ」
初めての出会いが、ここの領主様の子息との揉め事の仲裁だったから、初めのころは、感謝もあり、世間話程度の会話はした。外見だけ見れば、エルフのクライスターは特上と言ってもいいから浮かれてしまったのは否めない。挨拶から始まり、どこそこのパン屋で新作が出たとか、あそこのカフェはあのケーキが美味しいとか、実りの森でそろそろベリーが摘み時だとか、そんな他愛のない話が楽しかった。それでも、そんなことが何度も続くと周りの特に女性は黙っていない。「何あの子?」「クライスター様と親しいって見せつけたいのかしら?」「釣り合わないわ」「アルキナッサ様がお可哀想よ」等と騒ぎ出し、今も続いている。彼はこの騒ぎを知っていながら放置し、何の手も打つつもりはないと分かって、身の危険を感じたから距離を取ることにした。これで親しくなんて出来るわけもないし、打ち解けろも何もないものだ。
「・・・・・・」
これだけ邪険にしているのに近づいてくる理由が分からない。ヴィーグを欲しているわけでもないのに、どこに行っても会うようになると不気味になってくる。
「今日はどこにいたのかな?最近は市場にもギルドにも行ってないでしょう?」
ニコニコと話しかけてくるこの男に、あなたが付き纏ってくるからどこにも出掛ける気にならないのだと教えてあげたい。クライスターが貴族でなかったら、はっきりと迷惑だと伝えただろう。残念ながら、貴族であることが分かっているために対処に困っているのが現状。この男は放っておいて、私は、目の前のケーキを食べることに専念しようと一口口に入れた。美味しいはずのケーキが口に重い。
「すいませ~ん。このケーキ、持ち帰りにしてください」
折角のケーキを無駄にしたくはない。私は、紅茶を一気に飲み干した。
「ヴィーグ、行くよ」
「残念だな。もう、行ってしまうのかい?またね」
去ろうとする私を引き留めるわけでもなく、気分を害するわけでもなく、ニコニコと手を振るこの男の目的が分からない。怖いんですけど!彼に家だけは知られたくない。真逆の道を辿り、ゴチャゴチャと複雑な道をした路地に入り込んで暫くした後、ヴィーグを連れて家に転移した。
『あの男が原因か?だが、家は既に知られておるぞ』
「何が?ていうか、家、バレてたんだ」
遠回りした私の労力は・・・・。
『魔法陣の改良だ』
「ああああ。うん。この街から引っ越してもいいんだけど、まだ16歳でしょ。家を買うのも借りるのも難しいから、出来れば、今の家を手放したくはないんだよね」
『何故、ギルド長やナーサリーに相談しない?それに、あの者の素性すら鑑定していないのだろう?』
「え?鑑定?」
え?鑑定って言った?
ヴィーグから意外なことを指摘されてギョッとした。
『そうだ。せっかく神から授けられたのだ。自分の身を護るために使わずにどうする?』
そうか。鑑定すればよかったのか。
「もっと早く教えてよぉ。魔法なんて使い慣れてないから気が付かなかった」
『そうなのか?ああ。サイカはもともと、魔力のない世界で生きていたのだったな。日常生活で違和感なく使っておったから失念していた。今後は、早めに教えるとしよう』
「是非そうして!」
まあ、そうだよね。庭の畑の水遣りとか、お風呂のお水を溜めるとか洗い物とか魔法で普通にしてたし。ちなみに、使える魔法は、水属性だけ。魔法陣があれば大抵のことは出来ちゃうこの世界でよかった。それから、ヴィーグのアドバイス通り、ギルドで絡まれた際にこっそりと鑑定した。その直後、クライスターは怪しげにキョロキョロと周りを見回したが、「またね」と首を傾げながら、去って行った。
クライスターの結果は・・・・
クライスター・ハインツライト(23)
エルフ族
ハインツライト侯爵家の次男
王国魔法師団の魔法師
HP 大
MP 大
属性
火・風・水・土・光
スキル
詠唱短縮・器用さ
特筆事項
サイカを専属の魔法陣描きにして監禁したい
手柄は自分のものに!
王立魔法師団での地位を確立して、大公女にふさわしいと認められたい
優しい見た目と穏やかで気さくな人柄から、人望を集めてはいるが、見た目だけの詐欺師
その驚きの鑑定結果に愕然とし、どうしたものかと頭を抱えてしまった。
ヴィーグは、私の魔法陣を見るのが好きだ。美しいとか洗練されているとか、褒め倒してくれる。もっと褒めてくれてもいい。やる気が出る。
「ありがとう。この転移の魔法陣を改良して転移先を追跡できないようにしたいんだよね。それに、出来れば、魔法陣に転移先を指定するんじゃなくて、思い描いた先に行けるとなおよし!」
転移先ごとに魔法陣が必要だと、魔石や紙などの媒体の数ばかり増えて面倒じゃない?
『追跡不可は難しくはなかろうが、任意の場所に転移するとなるとどう指定するのだ?』
「そこなんだよねぇ。そこが上手くいかなくて。ちょっと気分転換に外に行こうか」
煮詰まってるときには、自然に触れると頭の中がリセットされてアイデアが湧いてくる。これ、前の世界の実体験。ヴィーグをお供に海に採集に来た。貝類が豊富に獲れる穴場で素潜りしながら、わかめや昆布を引っこ抜く。ヴィーグも海老などを器用に捕まえていた。
「これだけあれば、暫くもつかな」
『今日は、デカい蟹もいたぞ』
本日の成果を見せあい、洗浄の魔法陣を起動した。海水べっとりで不快だった私とヴィーグの身体は、あっという間にサッパリとした。気分もスッキリしたところで、バケツを無限鞄にしまい、気分転換ということで、貴族御用達のおしゃれなカフェに。テラス席のあるそこはヴィーグと来るにはぴったりのところで、お高いだけあってケーキも美味しい。私の足元に陣取ったヴィーグを撫でていると向かいの椅子に座った者がいる。
「やあ、奇遇だね、サイカ。ここの領主に会ったんだって?」
「・・・・・・」
今私が最も迷惑に思っている人物だ。最近はここに来ると必ずこうして向かいに座る。ここでなくても、私が向かう先に必ずいて、声をかけてくるのだ。気持ちが悪い。
「あっ。僕にもコーヒー」
私が曖昧な微笑みを浮かべて無視をしても図々しく居座るのだから、しかめっ面になるのも仕方がないと思う。
「そんなに固くならなくても、仲良くしたいだけなんだけどなぁ」
初めての出会いが、ここの領主様の子息との揉め事の仲裁だったから、初めのころは、感謝もあり、世間話程度の会話はした。外見だけ見れば、エルフのクライスターは特上と言ってもいいから浮かれてしまったのは否めない。挨拶から始まり、どこそこのパン屋で新作が出たとか、あそこのカフェはあのケーキが美味しいとか、実りの森でそろそろベリーが摘み時だとか、そんな他愛のない話が楽しかった。それでも、そんなことが何度も続くと周りの特に女性は黙っていない。「何あの子?」「クライスター様と親しいって見せつけたいのかしら?」「釣り合わないわ」「アルキナッサ様がお可哀想よ」等と騒ぎ出し、今も続いている。彼はこの騒ぎを知っていながら放置し、何の手も打つつもりはないと分かって、身の危険を感じたから距離を取ることにした。これで親しくなんて出来るわけもないし、打ち解けろも何もないものだ。
「・・・・・・」
これだけ邪険にしているのに近づいてくる理由が分からない。ヴィーグを欲しているわけでもないのに、どこに行っても会うようになると不気味になってくる。
「今日はどこにいたのかな?最近は市場にもギルドにも行ってないでしょう?」
ニコニコと話しかけてくるこの男に、あなたが付き纏ってくるからどこにも出掛ける気にならないのだと教えてあげたい。クライスターが貴族でなかったら、はっきりと迷惑だと伝えただろう。残念ながら、貴族であることが分かっているために対処に困っているのが現状。この男は放っておいて、私は、目の前のケーキを食べることに専念しようと一口口に入れた。美味しいはずのケーキが口に重い。
「すいませ~ん。このケーキ、持ち帰りにしてください」
折角のケーキを無駄にしたくはない。私は、紅茶を一気に飲み干した。
「ヴィーグ、行くよ」
「残念だな。もう、行ってしまうのかい?またね」
去ろうとする私を引き留めるわけでもなく、気分を害するわけでもなく、ニコニコと手を振るこの男の目的が分からない。怖いんですけど!彼に家だけは知られたくない。真逆の道を辿り、ゴチャゴチャと複雑な道をした路地に入り込んで暫くした後、ヴィーグを連れて家に転移した。
『あの男が原因か?だが、家は既に知られておるぞ』
「何が?ていうか、家、バレてたんだ」
遠回りした私の労力は・・・・。
『魔法陣の改良だ』
「ああああ。うん。この街から引っ越してもいいんだけど、まだ16歳でしょ。家を買うのも借りるのも難しいから、出来れば、今の家を手放したくはないんだよね」
『何故、ギルド長やナーサリーに相談しない?それに、あの者の素性すら鑑定していないのだろう?』
「え?鑑定?」
え?鑑定って言った?
ヴィーグから意外なことを指摘されてギョッとした。
『そうだ。せっかく神から授けられたのだ。自分の身を護るために使わずにどうする?』
そうか。鑑定すればよかったのか。
「もっと早く教えてよぉ。魔法なんて使い慣れてないから気が付かなかった」
『そうなのか?ああ。サイカはもともと、魔力のない世界で生きていたのだったな。日常生活で違和感なく使っておったから失念していた。今後は、早めに教えるとしよう』
「是非そうして!」
まあ、そうだよね。庭の畑の水遣りとか、お風呂のお水を溜めるとか洗い物とか魔法で普通にしてたし。ちなみに、使える魔法は、水属性だけ。魔法陣があれば大抵のことは出来ちゃうこの世界でよかった。それから、ヴィーグのアドバイス通り、ギルドで絡まれた際にこっそりと鑑定した。その直後、クライスターは怪しげにキョロキョロと周りを見回したが、「またね」と首を傾げながら、去って行った。
クライスターの結果は・・・・
クライスター・ハインツライト(23)
エルフ族
ハインツライト侯爵家の次男
王国魔法師団の魔法師
HP 大
MP 大
属性
火・風・水・土・光
スキル
詠唱短縮・器用さ
特筆事項
サイカを専属の魔法陣描きにして監禁したい
手柄は自分のものに!
王立魔法師団での地位を確立して、大公女にふさわしいと認められたい
優しい見た目と穏やかで気さくな人柄から、人望を集めてはいるが、見た目だけの詐欺師
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