巻き込まれて死亡?!神様、責任とってくださいね?

紅子

文字の大きさ
13 / 36

簡単に離れられますけど、何か?

今回の事件は、隷属の魔法陣を用いた悪質なものを含むため、クレイガー王国では、国王陛下御自ら関わって捜査が進められているそうだ。貴族の起こす事件としては、最悪のものだろうことが窺える。

「特殊な隷属がされていることをうちの国が証明するからな。下手な処分は国の信用を著しく損なうだろう」

そう言い切るのは、アダベルト。ルクセンバルグ王国は、隷属された状態の9人全員のステータスを転写した証拠物を押さえているから、クレイガー王国の処分と対応次第では、いろいろと圧力をかけやすくなるらしい。不利益は何一つない。

「2日後にクレイガー王国の騎士が来る予定だから、すぐに引き渡す」

あの道のりプラス王都までか。大変だね。

「転移の魔力はあちら持ちだ」

転移?!そんな裏技があったんだ。

『行き先が決められた大がかりな魔法陣だ。罪人の引き渡しに使われたり、王族の公務の際にしか使われん。受け入れ側の許可が必要だ。手紙とは訳が違う』

確かに、手紙や小さな荷物は特定の場所で小さな魔法陣でやりとりしていた。この世界にも、郵便局とか宅配のようなものがある。

「9人プラス騎士数名か。相当魔力がいるな」

「私も駆り出されましたよ。搾り取られそうで怖いですね」

肩をすくめる副ギルド長の魔力量は、恐らく特大より上だと思う。それが搾り取られるって。転移って、そんなに魔力使うっけ?

『サイカの魔法陣は洗練されて気品に満ちているからな。美しい魔法陣は、魔力量も最小限に抑えることが可能だ。なかなかお目にはかかれないがな』

知らなかったぁ。じゃあ、私の創作魔法陣を固定魔法陣に登録した方がいいのかな?

『止めておけ。目をつけられるだけだ。身の危険が増す』

何故、私の考えてることが?!!!思考を読めるの?!ギョッとして、足元にいるヴィーグを凝視した。

『顔に出ている』

なんてことだ。私は顔に出やすいらしい。ポーカーフェイスなんて出来ないけどね。

「あの隷属の魔法陣を無効化する術がないのが痛いな」

え?破壊しちゃえばいいと思うんだけど?

「で「ガウッ!」」

『サイカ。監禁されたいか?されたくないなら喋るな』

私の言葉に被せてヴィーグが警告を発した。コクコクと首を縦に振りながら、口に手を当てた。不用意な言葉は破滅の元だと肝に銘じよう。

「どうしました?何かありましたか、サイカ」

「何でもありません!」

この場にいる全員が訝しげな目で見るのは辛いが、監禁なんて嫌だ。どんな魔法陣も破壊できる魔法陣の存在は、誰にも言ってはいけない。

「そうだ!サイカ、あの時使用した一時的に無効化する魔法陣!あれなら」

「「は?!一時的に無効化できる?!」」

「無理だよ。あれは使い捨てだし、もうない」

「残念です。では、あれを解読して長期使用するように創り換えることは?」

「・・・・出来ないよ。創作魔法陣だから、無理に解読したら消えてなくなる。ハルシュバーンもさすがに解読してないし、創ってもないからね」

「そうですかぁ」

「「ハルシュバーンだと?!」」

アダベルトとグレイモールの声が重なった。うるさい!

「おや、知りませんでしたか?サイカはハルシュバーンの愛弟子ですよ」

「違いますから!!!ハルシュバーンは、私の養い親です!」

しまった。自らバラしてしまった。今頃気付いても後の祭りというもの。ヴィーグもそんなアホな子を見る目を向けないで!

「サイカが狙われたのもそのためです。手に入れて隷属させれば、手柄も魔法陣も思いのままでしょうね」

そんなことはない、と言いきれないのが悔しい。ヴィーグが私の身の危険を危惧するほどなのだから。

「何故、こんな新人を?と思ったが、納得した。ハルシュバーンの弟子と言うだけで価値がある。魔法陣描きとしての能力も高いようだ」

「俺の半身、凄い」

アダベルトの耳がピクピクと激しく動き、尻尾は高速でソファーの背もたれを叩いている。グレイモールの眼がキラッとした。

「サイカは、アダベルトの半身だったな。それなら、この国で暮らすんだよな?」

「!!!そうだな!サイカは、ここの魔法ギルドに所属を移せばいい。俺は、さすがにクレイガー王国に席を移すことは出来ないからな!」

意気揚々とアダベルトは言い切った。得意そうに動く尻尾が鬱陶しい。

「え?家に帰るけど?」

「「は?何故?!」」

「何故って、家があるから」

どうして、この国に残るなんて思うんだろうか?

「は、半身だろ?俺たち」

「はあ。だから何?」

私とあなたは初対面でしょ?耳がぺしゃんと倒れても尻尾がへたれても絆されないったら、絆されない!

「はん、半身は、離れられない、と」

アダベルトの焦る様子を見ても何とも思えない。そこに私への熱を見つけていても。尻尾が落ち着かなく揺れていても。

「ふーん。そんな感じ全くしないけどね」

半身だから一緒にいたいと言われてもね。グレイモールは、私を取り込みたいだけだし。私がこっちに引っ越す話になってるのが気に入らない。

「マジか。たまにいるんだよ。半身を認識できない獣人が。特に小型の獣人に多いようだ。アダベルト、運が悪かったな」

何故か、半身の分からない欠陥品と言われた気がした。

「そんな・・・・」

がっくりとうなだれるアダベルトをグレイモールは、気の毒そうに背中を叩いている。

『サイカの魂はもともとこの世界のものではないからな。半身を見分ける力など備わっておらんさ。そもそも、この世界に半身がいたことの方が驚きだ。ただ、その習性は引き継いでいるから、気を付けろ』

ヴィーグは慰めるように、私の手の甲に鼻を押しつけた。ありがとうと声に出す代わりに、ヴィーグを撫でる。

「ハァ。今回の事件に関する話は以上でいいですか?私もサイカもこの後、魔法ギルドの会合が控えています。そろそろお暇したいのですが」

うんうん。もういいよね、帰っても。さすが、副ギルド長だね!

「待ってくれ。サイカと話がしたい」

「それは、個人的なことでしょう?会合の後、おふたりでお願いします」

あれ?巻き込まれたくないって聞こえた気が?気のせい気のせい。ばっとアダベルトがこちらを向いた。

「サイカ・・・・」

う~ん。話すことなんてないと思うんだけどなぁ。

「機会があれば、またお目にかかりましょう」

微笑んで社交辞令を述べた。

「明日の午前中に宿に行くから!それなら、いいだろう?」

う~ん。必死なアダベルトに少しだけ同情が湧く。でも、会ったら碌なことにならない気がする。

「サイカ。君の身柄は騎士団で預からせてもらう」

「何を」

理由を問う間もなく、グレイモールによって拘束された。物理的に。私に為す術はない。唸り声を上げ、威嚇しようとしたヴィーグを宥め諭す。ここではダメだ。下手なことをすれば、ヴィーグは殺処分されてしまう。その間に副ギルド長が抗議してくれたが、「第4王子殿下の生命を脅かす存在だからな」と言われ、その意味を正確に読み取った副ギルド長は、憐れみの目を私に向けると、「無事に帰ることを祈っています」と言い残して去って行った。置いてかないでぇ~!

「グレイ、やり過ぎだろう?」

尻尾は口ほどに物を言う。嬉しいのがまるわかり。ソワソワと落ち着きがない。

「こうでもせねば、逃げられていたと思うが?」

まあ、当たらずといえども遠からず。アダベルトに会うつもりはなかった。

「横暴」

「フン!半身を見分けられない者に半身の重要性など説いても無駄だろう?」

「あなたにだって、そんなもの分からないじゃない」

グレイモールは鬼族だから、半身なんて存在しない。

「君と同じにしないでくれ。半身を失った者の行く末を俺は知っている」

グレイモールの声は、苦いものを含んでいた。その視線は凍えそうなほど冷たい。

「だから、私に犠牲になれと?見ず知らずの人のために?それに、あなたが欲しいのは、ハルシュバーンの愛弟子でしょ?私は違うからね」

侮蔑を込めて、グレイモールを見据えた。だから何だというのだろう?そんな犠牲的な精神は持ち合わせていない!綺麗事を並べたところで、結局、クライスターと同類ということだ。

「チッ。アダベルト、これを持って帰れ。さっさと話し合え」

それだけ言うと、私の拘束を解くこともなく、グレイモールは出て行った。

あなたにおすすめの小説

転生したので前世の大切な人に会いに行きます!

本見りん
恋愛
 魔法大国と呼ばれるレーベン王国。  家族の中でただ一人弱い治療魔法しか使えなかったセリーナ。ある出来事によりセリーナが王都から離れた領地で暮らす事が決まったその夜、国を揺るがす未曾有の大事件が起きた。  ……その時、眠っていた魔法が覚醒し更に自分の前世を思い出し死んですぐに生まれ変わったと気付いたセリーナ。  自分は今の家族に必要とされていない。……それなら、前世の自分の大切な人達に会いに行こう。そうして『少年セリ』として旅に出た。そこで出会った、大切な仲間たち。  ……しかし一年後祖国レーベン王国では、セリーナの生死についての議論がされる事態になっていたのである。   『小説家になろう』様にも投稿しています。 『誰もが秘密を持っている 〜『治療魔法』使いセリの事情 転生したので前世の大切な人に会いに行きます!〜』 でしたが、今回は大幅にお直しした改稿版となります。楽しんでいただければ幸いです。

初恋の還る路

みん
恋愛
女神によって異世界から2人の男女が召喚された。それによって、魔導師ミューの置き忘れた時間が動き出した。 初めて投稿します。メンタルが木綿豆腐以下なので、暖かい気持ちで読んでもらえるとうれしいです。 毎日更新できるように頑張ります。

面倒くさがりやの異世界人〜微妙な美醜逆転世界で〜

蝋梅
恋愛
 仕事帰り電車で寝ていた雅は、目が覚めたら満天の夜空が広がる場所にいた。目の前には、やたら美形な青年が騒いでいる。どうしたもんか。面倒くさいが口癖の主人公の異世界生活。 短編ではありませんが短めです。 別視点あり

前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~

高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。 先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。 先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。 普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。 「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」 たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。 そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。 はちみつ色の髪をした竜王曰く。 「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」 番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした

エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ 女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。 過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。 公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。 けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。 これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。 イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん) ※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。 ※他サイトにも投稿しています。