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王宮?違う?離宮?同じだし!
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カタコトと言いたいところだが、ガッタゴットとお尻の痛くなる音を立てながら、私とアダベルトを乗せた馬車は、王宮内に入っていった。アダベルトに抱えられているから、何とか座っていられる、アダベルトの膝の上に。ヴィーグも今回は、馬車に乗っている。でないと、王宮には入れない。
「おろしてよ」
「ダメだ。逃げるだろう?」
「・・・・」
そりゃ、逃げるさ。こんな扱いを甘んじて受けるほどお人よしじゃない。犯罪者でもないのに、未だに拘束されたままって、あり得ないでしょ?
「グレイのことは、すまなかった。あいつは、妹がエルフ族で・・・・」
何故かアダベルトはグレイモールのことを語り始めた。
幼い頃に半身を見つけたグレイモールの妹は、その子をそばに置きたいと願った。その子も親もドワーフ族で、半身への理解は皆無だった。平民の親はゴネたようだが、最終的に同意を得られ引き取ることになった。そして、高位の貴族である妹に相応しいようにと教育を施し、大切に育てたにもかかわらず、半身の男は、結婚式の前日、忙しく立ち働く使用人たちの目をかい潜り逃げ出した。それを知った妹は、怒り狂い、半身を見つけ出すことに全力を割き、とうとう見つけ出したその場で、無理心中したそうだ。男には、既に妻も子も居たにもかかわらず。
「はは。それは可哀そうだわ」
「ああ。あいつの妹は、精神を病み、半身を見つけることだけが心の支えだったんだ」
しんみりと言われてもね。私が可哀そうだと言ったのは、半身の男の方だよ。だって、そうでしょう?金と権力で家族と引き離されて、囲い込まれて逃げ場もなく、憎むべき相手のために努力を強要されたんだもの。半身に対するアダベルトの様子を見る限り、その子の自由なんて皆無だっただろうし。逃げ出す気概があっただけでも賞賛できる。できることなら、逃げ切ってほしかった。
「ここが、俺の住む離宮だ」
話を聞き流している間に、王宮に連れ込まれてしまった。アダベルトは、私が逃げることを分かっていて、決して離そうとはしない。無念。
「とうとう王城に足を踏み入れちゃったよ」
「ここは、王城ではない。離宮だ。王城は、もっと大きいぞ?今日からここに住んでもらおうと思う」
どっちも似たようなものでしょ。私にとってここは・・・・。
「随分と煌びやかな監獄だことで」
「なっ?!監獄などではない!ここは、君の家だ」
ギョッとして目を見開くアダベルトだけど、慌てて言い直しても同じことなんだけどな。
「私の家はハルシュバーンが残してくれた家だけ。そんなことは、どうでもいいや。で、話があるんでしょ?」
アダベルトは、グッと何かを堪えるように目を閉じた。次に目を開けた時、彼は覚悟を決めて引き結んだ唇を開いた。
「君は俺の半身だ。共にあるべき相手だ。サイカ、君にはここに留まってもらう。それ以外の選択肢は与えられない」
「ハァ」
横暴すぎる話に溜め息しか出てこない。
「話はそれだけだ。食事にしよう」
その日一日、アダベルトは私と目を合わせようとはしなかった。気まずくなるくらいなら、言わなきゃいいのに。何も反論せず、粛々と従う私に気を良くしたアダベルトは、何かと私の世話をしたがった。表情を出さない私に、甘ったるい笑みを惜しげもなく向けてくる。いつか私が籠絡され、自分を受け入れると思っているんだろう。常に私のそばにいて離そうとはしない。仕方なく離れるときにも、誰かが私に触れている。
『飲むなよ。かなりキツい媚薬が仕込まれておる』
「最低!」
「な、何が?」
私がなかなか籠絡されないことに業を煮やしたのか、姑息な手段に出た。
「飲んで?」
自分のカップをアダベルトの口元につけた。
「?」
不思議そうにしながらも、アダベルトは、何の疑いもなくそれを口に含もうとした。その刹那。
ガッシャ~ン
カップは、侍女によって叩き落とされた。
「ダメです!」
「どういうことだ?」
私とその侍女を交互に見た後、私に向かって質問してきた。知るか!
「私じゃなくて、侍女に確認したら?」
「どういうことだ?」
質問された侍女は、俯いて震えるばかりだ。
「メルビス、その紅茶を鑑定しろ」
「は。・・・・これは。媚薬が盛られております。それもかなり強力なものが」
アダベルトは、ピクリと眉を上げた。
「お前か?」
「あの、わた、わたし、だけじゃ、なくて、あの、みん、みんなで、その」
「分かった。侍女を全員拘束しろ」
その日から、臨時の侍女が離宮の仕事に就いた。アダベルトは、信頼していた侍女たちの起こしたこの事件の処理にかかりきりになっている。監視の目が緩んだ。この好機を逃すわけにはいかない!隙を突いて、私は逃げた。連れ去られて、17日後のことだった。
【権力にものを言わせるような奴は願い下げ。ってことで、じゃあねぇ】
さて、王都から出て、国境を越えてしまわなくてはね。閉鎖はないだろうけど、指名手配とかされてたら帰れなくなる。隠蔽の魔法陣を私とヴィーグに施して王城を抜け出した後、宿の近くの路地でそれを解いた。そして、副ギルド長を訪ねると、幸いなことに、明日出立予定だったそう。急いで、《肉追い人》と副ギルド長にテントを引き渡した。時間のあるときに、作っておいた甲斐があるというものだ。
「はい。これ、例のテント。確認して」
広い部屋でよかった。テント2台出しても余裕がある。
「私たちとは帰らないのですか?」
「うん。追われると思うから。私のことは内緒にして?ちょっと旅をしてからシーアーバンスに帰るよ」
「では、これを。立ち寄る魔法ギルドで見せるといいでしょう」
副ギルド長は、さらさらと私の身元と魔法陣の品質を保証する証明書を作成してくれた。
「ありがとう」
「気を付けていけよ?」
「達者でな」
「向こうでまた会おうぜ」
「またな」
「うん。シーアーバンスで会おうね!」
私は、みんなと別れを告げて、その日のうちに国境を抜けた。テントのおかげで、懐はあたたかい。ヴィーグとちょっと贅沢に旅をしながら国内外を回れるくらいの余裕はある。
「う~ん。やっと、自由になれた」
清々しい。窮屈だった生活の反動からか、真っ直ぐにシーアーバンスに帰ろうとは思えなかった。
「いろんな街を見て回ろうか」
『好きにするといい。我は共に行くだけだ』
「ヴィーグ、大好き!」
「おろしてよ」
「ダメだ。逃げるだろう?」
「・・・・」
そりゃ、逃げるさ。こんな扱いを甘んじて受けるほどお人よしじゃない。犯罪者でもないのに、未だに拘束されたままって、あり得ないでしょ?
「グレイのことは、すまなかった。あいつは、妹がエルフ族で・・・・」
何故かアダベルトはグレイモールのことを語り始めた。
幼い頃に半身を見つけたグレイモールの妹は、その子をそばに置きたいと願った。その子も親もドワーフ族で、半身への理解は皆無だった。平民の親はゴネたようだが、最終的に同意を得られ引き取ることになった。そして、高位の貴族である妹に相応しいようにと教育を施し、大切に育てたにもかかわらず、半身の男は、結婚式の前日、忙しく立ち働く使用人たちの目をかい潜り逃げ出した。それを知った妹は、怒り狂い、半身を見つけ出すことに全力を割き、とうとう見つけ出したその場で、無理心中したそうだ。男には、既に妻も子も居たにもかかわらず。
「はは。それは可哀そうだわ」
「ああ。あいつの妹は、精神を病み、半身を見つけることだけが心の支えだったんだ」
しんみりと言われてもね。私が可哀そうだと言ったのは、半身の男の方だよ。だって、そうでしょう?金と権力で家族と引き離されて、囲い込まれて逃げ場もなく、憎むべき相手のために努力を強要されたんだもの。半身に対するアダベルトの様子を見る限り、その子の自由なんて皆無だっただろうし。逃げ出す気概があっただけでも賞賛できる。できることなら、逃げ切ってほしかった。
「ここが、俺の住む離宮だ」
話を聞き流している間に、王宮に連れ込まれてしまった。アダベルトは、私が逃げることを分かっていて、決して離そうとはしない。無念。
「とうとう王城に足を踏み入れちゃったよ」
「ここは、王城ではない。離宮だ。王城は、もっと大きいぞ?今日からここに住んでもらおうと思う」
どっちも似たようなものでしょ。私にとってここは・・・・。
「随分と煌びやかな監獄だことで」
「なっ?!監獄などではない!ここは、君の家だ」
ギョッとして目を見開くアダベルトだけど、慌てて言い直しても同じことなんだけどな。
「私の家はハルシュバーンが残してくれた家だけ。そんなことは、どうでもいいや。で、話があるんでしょ?」
アダベルトは、グッと何かを堪えるように目を閉じた。次に目を開けた時、彼は覚悟を決めて引き結んだ唇を開いた。
「君は俺の半身だ。共にあるべき相手だ。サイカ、君にはここに留まってもらう。それ以外の選択肢は与えられない」
「ハァ」
横暴すぎる話に溜め息しか出てこない。
「話はそれだけだ。食事にしよう」
その日一日、アダベルトは私と目を合わせようとはしなかった。気まずくなるくらいなら、言わなきゃいいのに。何も反論せず、粛々と従う私に気を良くしたアダベルトは、何かと私の世話をしたがった。表情を出さない私に、甘ったるい笑みを惜しげもなく向けてくる。いつか私が籠絡され、自分を受け入れると思っているんだろう。常に私のそばにいて離そうとはしない。仕方なく離れるときにも、誰かが私に触れている。
『飲むなよ。かなりキツい媚薬が仕込まれておる』
「最低!」
「な、何が?」
私がなかなか籠絡されないことに業を煮やしたのか、姑息な手段に出た。
「飲んで?」
自分のカップをアダベルトの口元につけた。
「?」
不思議そうにしながらも、アダベルトは、何の疑いもなくそれを口に含もうとした。その刹那。
ガッシャ~ン
カップは、侍女によって叩き落とされた。
「ダメです!」
「どういうことだ?」
私とその侍女を交互に見た後、私に向かって質問してきた。知るか!
「私じゃなくて、侍女に確認したら?」
「どういうことだ?」
質問された侍女は、俯いて震えるばかりだ。
「メルビス、その紅茶を鑑定しろ」
「は。・・・・これは。媚薬が盛られております。それもかなり強力なものが」
アダベルトは、ピクリと眉を上げた。
「お前か?」
「あの、わた、わたし、だけじゃ、なくて、あの、みん、みんなで、その」
「分かった。侍女を全員拘束しろ」
その日から、臨時の侍女が離宮の仕事に就いた。アダベルトは、信頼していた侍女たちの起こしたこの事件の処理にかかりきりになっている。監視の目が緩んだ。この好機を逃すわけにはいかない!隙を突いて、私は逃げた。連れ去られて、17日後のことだった。
【権力にものを言わせるような奴は願い下げ。ってことで、じゃあねぇ】
さて、王都から出て、国境を越えてしまわなくてはね。閉鎖はないだろうけど、指名手配とかされてたら帰れなくなる。隠蔽の魔法陣を私とヴィーグに施して王城を抜け出した後、宿の近くの路地でそれを解いた。そして、副ギルド長を訪ねると、幸いなことに、明日出立予定だったそう。急いで、《肉追い人》と副ギルド長にテントを引き渡した。時間のあるときに、作っておいた甲斐があるというものだ。
「はい。これ、例のテント。確認して」
広い部屋でよかった。テント2台出しても余裕がある。
「私たちとは帰らないのですか?」
「うん。追われると思うから。私のことは内緒にして?ちょっと旅をしてからシーアーバンスに帰るよ」
「では、これを。立ち寄る魔法ギルドで見せるといいでしょう」
副ギルド長は、さらさらと私の身元と魔法陣の品質を保証する証明書を作成してくれた。
「ありがとう」
「気を付けていけよ?」
「達者でな」
「向こうでまた会おうぜ」
「またな」
「うん。シーアーバンスで会おうね!」
私は、みんなと別れを告げて、その日のうちに国境を抜けた。テントのおかげで、懐はあたたかい。ヴィーグとちょっと贅沢に旅をしながら国内外を回れるくらいの余裕はある。
「う~ん。やっと、自由になれた」
清々しい。窮屈だった生活の反動からか、真っ直ぐにシーアーバンスに帰ろうとは思えなかった。
「いろんな街を見て回ろうか」
『好きにするといい。我は共に行くだけだ』
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