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交わる魂~再開~
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リン君が勢いよく扉を開いて、緑葉に突進していった。お外遊びのあとは、必ず騎士様の様子を見に行く。不安なのだろう。リン君の嬉しそうな叫び声で騎士様が目覚めたことが伝わってきた。
暫くして、緑葉に先導された騎士様と嬉しそうなリン君がダイニングにやって来た。
「シェリアさんや。こやつも目覚めたからのぉ、お昼にしてくれるか。病人食でなくて、力のでそうなメニューじゃよ。獣人は頑丈じゃから病人食では足りん」
「はいはい。わかりました。じゃ、これがいいかな。リン君は、これを並べてくれる?出来るかなぁ?」
リン君にフォークとナイフを見せる。
「できる~!」
「殿下!そのようなことは私が致します」
えっと。殿下?殿下って言った?
ただの貴族じゃなくて、王族ってこと?
リン君がお手伝いしたそうだったからお願いしてたけど、不味かったかなぁ。貴族だろうって時点でお願いするべきじゃなかったかも。
「助けていただいたことは感謝しておりますが、このようなことをさせてよいお方ではありません。以降はお控え願いたい」
何故か、緑葉に向かって話している。
私は、うん、睨まれました。
緑葉がなにげに臨戦態勢だよ。えっと、白銀も来なくて大丈夫だからね?
「申し訳ございません。どうぞ、座ってお待ちください。リン君も座って待てるかなぁ?」
「えー、もうしちゃダメなの?お手伝い楽しかったのに・・・・」
私の、いや、騎士様の安全のために我慢してほしい。
「殿下、食事のマナーは覚えておいでですね?席で座ってお待ちください」
リン君は、渋々ダイニングテーブルの子供用の席へ座った。
「貴女も下働きの下女ならば、立場を弁えることをお勧めします。雇い主の品格を疑われかねません」
ひくっ。口の端がひきつるわぁ。この人、親切で言ってくれてるんだろうけど、ここでは不味いよ。白銀と緑葉の目が怖い。
「おい、小僧。今すぐにここから追い出されたいか」
いつもより声のトーンが一段低い。
「やはり、助けるべきではなかったようじゃな。恩を仇で返すとはこの事じゃ」
目が据わっている。
騎士様は、白銀と緑葉の威圧にグッと息を飲んで動けないでいる。
「白銀!緑葉!ダメよ。貴族なら料理を作るのは、下働きの仕事なんだもの。勘違いしてもおかしくないでしょう?申し遅れました。わたくしがここの主、シェリアと申します。このふたりは白銀と緑葉。貴方のお世話を任せておりました。料理は、わたくしの趣味ですの」
私が主だ!発言に騎士様は、驚きで目を見開いている。そうだった。気にしたことなかったけど、私、18歳だった。服装にも問題がある。この世界の町娘の格好をしているのだ。が、ドレスなんぞ着てられるか!
「こ、これは、申し訳ない。勘違いとはいえ、主を下女などと・・・・」
白銀と緑葉のただ事でない雰囲気を察したのか、あたふたと謝罪してくれた。
「ねぇ、シェリアお姉ちゃん、ぼく、お腹すいたよ」
ちょうどよいタイミングでリン君がこの居たたまれない雰囲気をぶち破ってくれた。
でかした!リン君!
「さぁ、殿下もお待ちですし、食事に致しましょう?」
騎士様は、何か言いたそうだったがおとなしく席についてくれた。
丁度、蒼貴と紅蓮も帰って来た。お昼には必ず戻ってくる。白銀と緑葉が憮然としているのに気づき、ふたりも臨戦態勢だよ。
食事の前に、リン君の食事の毒見をするしないで揉めたけど、リン君が、量が減るから嫌だ!と頑として受け入れず食べ始めてしまったことで、最終的に騎士様がおれた。
毒見なんて、本当に今更だ。
そして、お茶タイム。
「食べたことがないものばかりでした。何より殿下が嫌がらずに野菜を召し上がるとは・・・・」
「あのね、お姉ちゃんのご飯はとっても美味しいんだよ。いつも、違うご飯なんだ」
「誉めてくれてありがとう、リン君。さぁ、リン君はお昼寝の時間だよ。起きたら、おやつかな?はい、あーんして」
リン君の口の中を浄化する。虫歯になったら大変だ。
リン君を部屋まで送っていった白銀が戻ってきたところで、大人のお話が始まる。
「この度は、殿下と私を助けていただき、感謝致します。私は、ローゼンタール王国の騎士、ジルベルト・バーデン。リンハルト殿下は第三王子であらせられます」
「わたくしは、先程名乗りましたからいいですね?赤い髪は紅蓮。青い髪は蒼貴。緑の髪は緑葉。銀の髪は白銀。わたくしの護衛です」
「あの、貴女は、どういったご身分の方でしょう?とても平民には思えません」
それに答える義理はない。にっこりと微笑むことで、返答を拒否した。
自己紹介の後、ジルベルト様は、これまでの経緯をかいつまんで話してくれた。安全なはずの街道に、オークやオーガ、ゴブリンなどの初級から中級程度の魔獣が、100体以上の集団で現れたのが、そもそもの原因らしい。
「小規模なスタンピードではないか」
「あの辺りは、殿下と殿下の番殿が頻繁に通るため常に騎士団が討伐に出ております。故にあのような規模の魔獣が現れるなどあり得ません。私たちが通る3日前にも討伐隊が向かいましたが、そのような兆候や集団の目撃はありませんでした」
「追い込まれて、集団化したか。その街道からここは逆方向だな」
「魔獣の集団が来たのと反対に逃げましたから。殿下が近くにいては、護衛や侍女は殿下を守るため、戦わなくてはなりません。無駄死にさせず、離脱させるためには、この方法しかなかったのです」
「つまり、魔獣は、ビジュー王国から来た可能性が高いか」
「街道は魔獣で塞がれ、森の浅いところを抜けて城へ戻るつもりでしたが、森にも魔獣が多く、逃げるうちにどんどんと奥へ来てしまいました」
「そういえば、1週間くらい前にビジュー王国側の森で魔獣を討伐してる集団がいたよ。魔獣を1ヶ所に追い詰めてたから討伐してると思ってたけど、追い詰めてただけだったのかなぁ」
「なぜ、それを我らに伝えぬ!」
「紅蓮殿、それは、本当ですか?!」
「えーぇ、ここからずいぶん離れてたし、討伐してると思ったんだよ」
「まあ、シェリアに危害を加えられなければ、別にどうでもいいな」
「仮にスタンピードが起きても、ここは安全じゃしのぉ」
ジルベルト様は、怒りで顔を赤くして手を握りしめていた。
「あの国は、数年前まで人族至上主義で今も我々獣人への差別が激しいのですが、王族が通ると知っている街道に魔獣を追い込むとは!」
「ハァ、知っているから仕掛けたんだろう?戦争にでもしたかったか」
「あそこは、確か王族内でも王太子争いが激しかったはずだ。人族至上主義派の第一王子と他種族友好派の第二王子の争いに巻き込まれたか。第一王子は、2年前に聖女召喚に成功しておる。このまま、勢いをつけたいというところだな」
「!!!何故、そのようなことを知っておいでなのですか。我が国の諜報でさえ、そんな情報は掴んでいないのに・・・・」
「ふほほほほ。蛇の道は蛇じゃよ」
2年前って、私がここに来た年だよね?私以外にこの世界に来た人がいる?同じ世界から?まさかあの高校生・・・・?別ルートって、そういうこと?人間たちの聖女召喚に便乗って、一緒に来たあの子は無事なの?
「・・リア、シェリア!聞いているか?」
「あ、あー、ごめんね。ちょっと考え事。何だった?」
「こいつら、助けが来るまではここに居たいそうだ」
「はい。私がここに辿り着いた直後に緊急救助信号を出しました。8日程で来るはずです。ですから、厚かましいのは、承知しております。ですが、どうかそれまでの間、ここに滞在させてほしいのです」
ジルベルト様は、立ち上がって頭を下げた。貴族が平民に頭を下げるなんてあり得ない。が、ここに留まりたい一心なんだろう。森の中で子供とふたり、5日間を乗り切るなんて無理だもんね。それに、たぶん、私に頭を下げてるというよりは、従魔たちに、かな?みんな、嫌そうな顔してるもんね。
「もちろん、いいですよ。リン君とふたりでこの森を抜けるのは難しいと思いますから」
私は、あっさりと許可をした。従魔たちは、呆れてるけど、せっかく助けたんだから、迎えと帰った方が安心だよ。
「ありがとうございます!」
「但し、ここにいる間は、リン君にも貴方にも働いてもらいます」
「それは、・・・・。わかりました」
一瞬、考えたようだが、すぐに了承した。リン君の命と労働を天秤にかけたんだろう。
それから、3日。
思ったより早く、迎えがやって来た。
その間は、宣言通り、リン君にもお手伝いをしてもらい、ジルベルト様にも働いてもらった。と言っても、リン君にはクッキーを作るとか味見をするとか。ジルベルト様には従魔たちと手合わせとか。仕事事体がなかったんだよね。
「ひゃあ」
「我が出迎えよう。ここに通せばよいな?」
「私は、ふたりを呼んでこよう。紅蓮は、シェリアの護衛を頼む」
「うん。お願い」
わたしは、お茶の準備だね。
すっとキッチンへ引っ込んだ。といっても、オープンキッチンだから、ダイニングとリビングは見渡せる。
すぐに蒼貴と4人の騎士様が入ってきた気配がした。続いて、白銀と緑葉、リン君とジルベルト様がやって来た。
「兄上!」
「リンハルト、無事だったか!よかった」
びくん!
その声を聞いた途端、身体が震えた。ずっと聞きたかった声に、胸の奥が震える。でも、それは二度と叶わないはずなのに。他人の空似?
「シェリアぁ?!!!」
「どうしたんじゃ?!!!」
「えっ?」
ぽつり。
机に滴が落ちた。
ぽつり、ぽつり、ぽつり・・・・。
止めどなく落ちてくるそれは・・・・。
「どうした?!」
「何かあったか?!」
白銀と蒼貴が飛び込んできた。
「シェリア、何故泣いておる?」
「えっ?」
泣いてる?誰が?私?
「あれ?なんで泣いてるんだろう?ごめん、止まらない・・・・」
ガタン!
「シェリア、シェリアなのか?」
びくん!
背後から静かに名前を呼ばれた。
「Do you understand what I say?」
何故、この世界でその言葉を話すの?
私を知っているの?
なんでこんなに胸が痛いの?
怖くて動けない。
「Please answer me, Saria.」
「Who are you?
Why do you know this language?」
震えそうになる声をなんとか絞りだし、振り向くこともできないまま、背後の人に問いかける。従魔たちは、事の成り行きを見守るようだ。
「Look at me.」
このままでは、埒があかない。震える心を叱咤してそろそろと振り向いた。が、そこには、知らない男の人が立っていた。20代半ばから後半といったところか。190cmはあるし、脂肪なんてなさそうな体型をしている。綺麗な黄金の切れ長の目に黒い髪。
でも・・・・。
「Oh, you are truly Saria.
Are you younger than we met first?」
「Who are you?」
「You know the answer, don't you.」
「・・・・You are..... AL, Albert?
Is it true?」
「Yes. I am your AL.
I am sorry I made you to be alone.」
どうしていいか分からない。声だけなら、アルなのに、アルに似ても似つかないガッチリと筋肉のついた大男を何故、アルだと感じるのか?でも、この人はアルだ。
俯いたまま涙が止まらない。いつも、アルと離れるときには涙が止まらなくなってた。数年に一度、少しだけ一緒に過ごす大切な時間。その終わりには、涙が止まらない。勝手に出てくるのだ。それと同じ。
「Don't be cry.」
アルの足が視界に入ったと思ったら、抱き締められた。その時何故か、やっと帰って来れたんだなぁと無意識に背中に腕を回していた。
周りは全員、ポカン???だ。話が全く見えてこない。ふたりは知り合いかもしれない?くらいしかわからない。言葉すら理解できない。一緒にやって来た3人も困惑している。
「えっと、誰ですか、あなた?団長の皮を被った魔物とか?」
「あり得る。いつの間に入れ替わったんだ?」
「そんなわけないだろ!団長だ、たぶん・・・・」
びくっ!
頭が混乱して感情がぐちゃぐちゃだったせいで、周りのことをすっかり忘れていた。
恥ずかしすぎる・・・・。
どうやらそれは、アルも同じだったらしい。顔をしかめている。
「あー、安全なところは?」
小声できかれ、すぐに2階へと続く階段をそっと指差した。それを確認したアルは、私を横抱きにするとさっと階段へ移動した。後ろを振り向かずに叫ぶ。
「全員、そこで待機!」
慌てて私も、ついてこようとする従魔たちを制する。
「下で待ってて!」
それでもついてこようとしたが、結界に阻まれたようだ。
「シェリアアアアア!!!初対面の奴に着いていくとはどういう了見だ!!!」
「我らまで締め出すやつがあるか!!!」
「逃げられたね」
「あれ、本当に団長だよな?」
「兄、上?」
「・・・・、さあ、殿下。席に着いて、お茶にしましょう」
「そうじゃの。降りてくるまで、待つしかないのぉ」
全員の頭の上には???と!!!が踊っていた。
暫くして、緑葉に先導された騎士様と嬉しそうなリン君がダイニングにやって来た。
「シェリアさんや。こやつも目覚めたからのぉ、お昼にしてくれるか。病人食でなくて、力のでそうなメニューじゃよ。獣人は頑丈じゃから病人食では足りん」
「はいはい。わかりました。じゃ、これがいいかな。リン君は、これを並べてくれる?出来るかなぁ?」
リン君にフォークとナイフを見せる。
「できる~!」
「殿下!そのようなことは私が致します」
えっと。殿下?殿下って言った?
ただの貴族じゃなくて、王族ってこと?
リン君がお手伝いしたそうだったからお願いしてたけど、不味かったかなぁ。貴族だろうって時点でお願いするべきじゃなかったかも。
「助けていただいたことは感謝しておりますが、このようなことをさせてよいお方ではありません。以降はお控え願いたい」
何故か、緑葉に向かって話している。
私は、うん、睨まれました。
緑葉がなにげに臨戦態勢だよ。えっと、白銀も来なくて大丈夫だからね?
「申し訳ございません。どうぞ、座ってお待ちください。リン君も座って待てるかなぁ?」
「えー、もうしちゃダメなの?お手伝い楽しかったのに・・・・」
私の、いや、騎士様の安全のために我慢してほしい。
「殿下、食事のマナーは覚えておいでですね?席で座ってお待ちください」
リン君は、渋々ダイニングテーブルの子供用の席へ座った。
「貴女も下働きの下女ならば、立場を弁えることをお勧めします。雇い主の品格を疑われかねません」
ひくっ。口の端がひきつるわぁ。この人、親切で言ってくれてるんだろうけど、ここでは不味いよ。白銀と緑葉の目が怖い。
「おい、小僧。今すぐにここから追い出されたいか」
いつもより声のトーンが一段低い。
「やはり、助けるべきではなかったようじゃな。恩を仇で返すとはこの事じゃ」
目が据わっている。
騎士様は、白銀と緑葉の威圧にグッと息を飲んで動けないでいる。
「白銀!緑葉!ダメよ。貴族なら料理を作るのは、下働きの仕事なんだもの。勘違いしてもおかしくないでしょう?申し遅れました。わたくしがここの主、シェリアと申します。このふたりは白銀と緑葉。貴方のお世話を任せておりました。料理は、わたくしの趣味ですの」
私が主だ!発言に騎士様は、驚きで目を見開いている。そうだった。気にしたことなかったけど、私、18歳だった。服装にも問題がある。この世界の町娘の格好をしているのだ。が、ドレスなんぞ着てられるか!
「こ、これは、申し訳ない。勘違いとはいえ、主を下女などと・・・・」
白銀と緑葉のただ事でない雰囲気を察したのか、あたふたと謝罪してくれた。
「ねぇ、シェリアお姉ちゃん、ぼく、お腹すいたよ」
ちょうどよいタイミングでリン君がこの居たたまれない雰囲気をぶち破ってくれた。
でかした!リン君!
「さぁ、殿下もお待ちですし、食事に致しましょう?」
騎士様は、何か言いたそうだったがおとなしく席についてくれた。
丁度、蒼貴と紅蓮も帰って来た。お昼には必ず戻ってくる。白銀と緑葉が憮然としているのに気づき、ふたりも臨戦態勢だよ。
食事の前に、リン君の食事の毒見をするしないで揉めたけど、リン君が、量が減るから嫌だ!と頑として受け入れず食べ始めてしまったことで、最終的に騎士様がおれた。
毒見なんて、本当に今更だ。
そして、お茶タイム。
「食べたことがないものばかりでした。何より殿下が嫌がらずに野菜を召し上がるとは・・・・」
「あのね、お姉ちゃんのご飯はとっても美味しいんだよ。いつも、違うご飯なんだ」
「誉めてくれてありがとう、リン君。さぁ、リン君はお昼寝の時間だよ。起きたら、おやつかな?はい、あーんして」
リン君の口の中を浄化する。虫歯になったら大変だ。
リン君を部屋まで送っていった白銀が戻ってきたところで、大人のお話が始まる。
「この度は、殿下と私を助けていただき、感謝致します。私は、ローゼンタール王国の騎士、ジルベルト・バーデン。リンハルト殿下は第三王子であらせられます」
「わたくしは、先程名乗りましたからいいですね?赤い髪は紅蓮。青い髪は蒼貴。緑の髪は緑葉。銀の髪は白銀。わたくしの護衛です」
「あの、貴女は、どういったご身分の方でしょう?とても平民には思えません」
それに答える義理はない。にっこりと微笑むことで、返答を拒否した。
自己紹介の後、ジルベルト様は、これまでの経緯をかいつまんで話してくれた。安全なはずの街道に、オークやオーガ、ゴブリンなどの初級から中級程度の魔獣が、100体以上の集団で現れたのが、そもそもの原因らしい。
「小規模なスタンピードではないか」
「あの辺りは、殿下と殿下の番殿が頻繁に通るため常に騎士団が討伐に出ております。故にあのような規模の魔獣が現れるなどあり得ません。私たちが通る3日前にも討伐隊が向かいましたが、そのような兆候や集団の目撃はありませんでした」
「追い込まれて、集団化したか。その街道からここは逆方向だな」
「魔獣の集団が来たのと反対に逃げましたから。殿下が近くにいては、護衛や侍女は殿下を守るため、戦わなくてはなりません。無駄死にさせず、離脱させるためには、この方法しかなかったのです」
「つまり、魔獣は、ビジュー王国から来た可能性が高いか」
「街道は魔獣で塞がれ、森の浅いところを抜けて城へ戻るつもりでしたが、森にも魔獣が多く、逃げるうちにどんどんと奥へ来てしまいました」
「そういえば、1週間くらい前にビジュー王国側の森で魔獣を討伐してる集団がいたよ。魔獣を1ヶ所に追い詰めてたから討伐してると思ってたけど、追い詰めてただけだったのかなぁ」
「なぜ、それを我らに伝えぬ!」
「紅蓮殿、それは、本当ですか?!」
「えーぇ、ここからずいぶん離れてたし、討伐してると思ったんだよ」
「まあ、シェリアに危害を加えられなければ、別にどうでもいいな」
「仮にスタンピードが起きても、ここは安全じゃしのぉ」
ジルベルト様は、怒りで顔を赤くして手を握りしめていた。
「あの国は、数年前まで人族至上主義で今も我々獣人への差別が激しいのですが、王族が通ると知っている街道に魔獣を追い込むとは!」
「ハァ、知っているから仕掛けたんだろう?戦争にでもしたかったか」
「あそこは、確か王族内でも王太子争いが激しかったはずだ。人族至上主義派の第一王子と他種族友好派の第二王子の争いに巻き込まれたか。第一王子は、2年前に聖女召喚に成功しておる。このまま、勢いをつけたいというところだな」
「!!!何故、そのようなことを知っておいでなのですか。我が国の諜報でさえ、そんな情報は掴んでいないのに・・・・」
「ふほほほほ。蛇の道は蛇じゃよ」
2年前って、私がここに来た年だよね?私以外にこの世界に来た人がいる?同じ世界から?まさかあの高校生・・・・?別ルートって、そういうこと?人間たちの聖女召喚に便乗って、一緒に来たあの子は無事なの?
「・・リア、シェリア!聞いているか?」
「あ、あー、ごめんね。ちょっと考え事。何だった?」
「こいつら、助けが来るまではここに居たいそうだ」
「はい。私がここに辿り着いた直後に緊急救助信号を出しました。8日程で来るはずです。ですから、厚かましいのは、承知しております。ですが、どうかそれまでの間、ここに滞在させてほしいのです」
ジルベルト様は、立ち上がって頭を下げた。貴族が平民に頭を下げるなんてあり得ない。が、ここに留まりたい一心なんだろう。森の中で子供とふたり、5日間を乗り切るなんて無理だもんね。それに、たぶん、私に頭を下げてるというよりは、従魔たちに、かな?みんな、嫌そうな顔してるもんね。
「もちろん、いいですよ。リン君とふたりでこの森を抜けるのは難しいと思いますから」
私は、あっさりと許可をした。従魔たちは、呆れてるけど、せっかく助けたんだから、迎えと帰った方が安心だよ。
「ありがとうございます!」
「但し、ここにいる間は、リン君にも貴方にも働いてもらいます」
「それは、・・・・。わかりました」
一瞬、考えたようだが、すぐに了承した。リン君の命と労働を天秤にかけたんだろう。
それから、3日。
思ったより早く、迎えがやって来た。
その間は、宣言通り、リン君にもお手伝いをしてもらい、ジルベルト様にも働いてもらった。と言っても、リン君にはクッキーを作るとか味見をするとか。ジルベルト様には従魔たちと手合わせとか。仕事事体がなかったんだよね。
「ひゃあ」
「我が出迎えよう。ここに通せばよいな?」
「私は、ふたりを呼んでこよう。紅蓮は、シェリアの護衛を頼む」
「うん。お願い」
わたしは、お茶の準備だね。
すっとキッチンへ引っ込んだ。といっても、オープンキッチンだから、ダイニングとリビングは見渡せる。
すぐに蒼貴と4人の騎士様が入ってきた気配がした。続いて、白銀と緑葉、リン君とジルベルト様がやって来た。
「兄上!」
「リンハルト、無事だったか!よかった」
びくん!
その声を聞いた途端、身体が震えた。ずっと聞きたかった声に、胸の奥が震える。でも、それは二度と叶わないはずなのに。他人の空似?
「シェリアぁ?!!!」
「どうしたんじゃ?!!!」
「えっ?」
ぽつり。
机に滴が落ちた。
ぽつり、ぽつり、ぽつり・・・・。
止めどなく落ちてくるそれは・・・・。
「どうした?!」
「何かあったか?!」
白銀と蒼貴が飛び込んできた。
「シェリア、何故泣いておる?」
「えっ?」
泣いてる?誰が?私?
「あれ?なんで泣いてるんだろう?ごめん、止まらない・・・・」
ガタン!
「シェリア、シェリアなのか?」
びくん!
背後から静かに名前を呼ばれた。
「Do you understand what I say?」
何故、この世界でその言葉を話すの?
私を知っているの?
なんでこんなに胸が痛いの?
怖くて動けない。
「Please answer me, Saria.」
「Who are you?
Why do you know this language?」
震えそうになる声をなんとか絞りだし、振り向くこともできないまま、背後の人に問いかける。従魔たちは、事の成り行きを見守るようだ。
「Look at me.」
このままでは、埒があかない。震える心を叱咤してそろそろと振り向いた。が、そこには、知らない男の人が立っていた。20代半ばから後半といったところか。190cmはあるし、脂肪なんてなさそうな体型をしている。綺麗な黄金の切れ長の目に黒い髪。
でも・・・・。
「Oh, you are truly Saria.
Are you younger than we met first?」
「Who are you?」
「You know the answer, don't you.」
「・・・・You are..... AL, Albert?
Is it true?」
「Yes. I am your AL.
I am sorry I made you to be alone.」
どうしていいか分からない。声だけなら、アルなのに、アルに似ても似つかないガッチリと筋肉のついた大男を何故、アルだと感じるのか?でも、この人はアルだ。
俯いたまま涙が止まらない。いつも、アルと離れるときには涙が止まらなくなってた。数年に一度、少しだけ一緒に過ごす大切な時間。その終わりには、涙が止まらない。勝手に出てくるのだ。それと同じ。
「Don't be cry.」
アルの足が視界に入ったと思ったら、抱き締められた。その時何故か、やっと帰って来れたんだなぁと無意識に背中に腕を回していた。
周りは全員、ポカン???だ。話が全く見えてこない。ふたりは知り合いかもしれない?くらいしかわからない。言葉すら理解できない。一緒にやって来た3人も困惑している。
「えっと、誰ですか、あなた?団長の皮を被った魔物とか?」
「あり得る。いつの間に入れ替わったんだ?」
「そんなわけないだろ!団長だ、たぶん・・・・」
びくっ!
頭が混乱して感情がぐちゃぐちゃだったせいで、周りのことをすっかり忘れていた。
恥ずかしすぎる・・・・。
どうやらそれは、アルも同じだったらしい。顔をしかめている。
「あー、安全なところは?」
小声できかれ、すぐに2階へと続く階段をそっと指差した。それを確認したアルは、私を横抱きにするとさっと階段へ移動した。後ろを振り向かずに叫ぶ。
「全員、そこで待機!」
慌てて私も、ついてこようとする従魔たちを制する。
「下で待ってて!」
それでもついてこようとしたが、結界に阻まれたようだ。
「シェリアアアアア!!!初対面の奴に着いていくとはどういう了見だ!!!」
「我らまで締め出すやつがあるか!!!」
「逃げられたね」
「あれ、本当に団長だよな?」
「兄、上?」
「・・・・、さあ、殿下。席に着いて、お茶にしましょう」
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