番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ

紅子

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これは運命です?

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もうすぐ11歳になろうというある日、私は両親に連れられて、お城のお茶会に来ていた。

「大丈夫かい、クリスレイア?」

「顔が真っ青よ?」

私はなんとか歩いているけど、ともすれば過呼吸に陥りすぐにでも倒れてしまいそうだ。両親にこのお茶会の話をされたときには、実際に倒れている。それはそうだろう。このお茶会はもうすぐ13歳になる第2王子殿下の最後の番探しのための催しなのだから。もしかしたら、ここは私の知るあの世界とは違うところなのでは?と一縷の望みが少しずつ大きくなり始めた矢先の出来事だったのだ。私には、ひたすら、どうか第2王子殿下がウィリアム殿下ではありませんように、と祈るくらいしかできない。もし、また出逢ってしまったら?番だと言われたら?あるいは、番ではなかったら?もう、頭の中はグチャグチャだ。

「王妃様。この度はお招きいただき、光栄でございます」

お父様が挨拶すると、その隣でお母様が王妃様に対し淑女の礼をとっているのを真似て、私も礼をとる。

「久しぶりね。去年のお茶会には流行り病で出席できなかったでしょう?あの子がきちんと諦められるように歳の合うご令嬢にはできる限り会わせたかったの。わたくしの我儘よ。来てくれて嬉しいわ」

「もったいないお言葉でございます。これが娘のクリスレイアでございます」

「お初にお目にかかります。リンデン伯爵が息女クリスレイアでございます」

お父様に促され、なるべく控えめに目立たないように挨拶をした。

「クリスレイアは慎ましいのですね。顔色が良くないようですが、緊張しているのかしら?」

「は、はい。あ、いえ、そんなことは」

「固くなることはないのよ?楽しんでいって」

「はい。ありがとうございます」

この会話の間、私は失礼にならない程度にずっと視線を下げていたから気が付かなかった。会場入りし王妃様に近づく第2王子殿下が驚愕の目で私を見ていることに。

「母上」

私はその声にビクッと肩を震わせてしまった。なぜなら、その声が私のよく知っている人に似ていたから。もうほとんど確信していたけれど、顔をあげて確かめるのが怖かった。もう一度逢える嬉しさとそれを上回る恐怖。身体が小刻みに震え始める。

「見つけました♪彼女です。彼女が僕の番です!」

その言葉を聞いた瞬間、私はゆっくりと顔をあげ、そして言いようのない感情とともに意識を手放した。

神様。何故、再び巡り合わせたのですか?あの苦しい日々をまた過ごせと?そして・・・・。





「あなた、たかだか伯爵令嬢のくせに、殿下の周りをウロウロするのはおよしなさい!」

「そうですわよ。身のほど知らず、という言葉をご存じ?」

「公爵家のご令嬢であるローズマリー様を差し置いて殿下の隣に居ようなんて図々しいのよ」

「まあ、皆様。おやめになって。そのようなことクリスレイア様も分かっておいでよ?」

また始まった。あのお茶会の日以来、私の穏やかな日々は終わりを告げた。サリーとも引き離され、王宮から派遣された侍女に取って変わった。王子妃教育を受け、ご令嬢たちに妬まれる生活が始まったのだ。以前の生と同じくウィリアム殿下は私にとても優しくしてくださる。宝物でも扱うかのように大切にしてくださる。でも、そう扱われれば扱われるほど、周りのご令嬢や高位の貴族家からの嫉妬や妬みは苛烈になり、私は不安でたまらなくなるのだ。また、殺されるのではないかと。その不安は的中する。今度は、結婚式を2日後に控えた夜、両親との最後の晩餐で、私は王宮から派遣された侍女の淹れた紅茶を飲んだ瞬間に焼けるような激痛を口内や喉に感じ苦しみにのたうち回った挙げ句、そのまま息を引き取った。18歳だった。










「!ハアハアハア・・・・」

目覚めとともに周りを見回し、自分の身体を確認した。もう何度目だろう?私はまた死に戻ったのだ。死ぬのはいつも18歳の結婚式直前。戻るのは10歳。これは変わらない。5回目の死に戻りくらいまでは、希望があった。10回目の死に戻りで絶望し、20回目の死に戻りで諦めた。それ以来数えるのを止めた。どんなに避けても逃げても、出会ってしまうのだ。まるで呪いのように。

「ハァ」

今度はどんな家柄なのだろう?どんな死に方をするのだろう?毒殺、暗殺、追放されて餓死、獣に襲われたこともあるし、崖から落とされたこともある。全て私がウィリアム王子の番であることを妬んだある貴族家の仕業だと思う。死んだ後のことなど分からない。もう、疲れた。



コンコンコン

「失礼致します」

久しぶりのサリーだ。サリーの顔を見ると安心する。そして、私はこの生のこれまでの記憶を辿って私がどこの誰なのかを確認した。

「お嬢様、朝ですよ。あら、起きてらっしゃいますね。珍しいこともあること。さあ、着替えましょう」

私の10歳が始まった。
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