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リルアイゼとは顔を合わせないように、学園ではなるべく余計なところへは出向かないようにしていた。学食もお弁当を持参し、庭の隅でひっそりと摂っていた。なのに・・・・。
1年生の時はまだよかった。私がリルアイゼを嫌っているという噂話が流れたくらいで、実害はなく、ただ、クラスから孤立しただけだった。
「いいんですのよ。わたくしがお母様のお腹にいたときに全ての能力を奪ってしまったんですもの。嫌われて当然ですわ」
たまたま通りかかって柱の陰でそれを聞いた私以外には、申し訳なさそうに目を伏せて語るリルアイゼの口許がほんの少しだけ上がっているのに気づいた者はいなかった。噂のもとはお前か、リルアイゼ。
2年生になると実戦で遠征をするリルアイゼとその仲間たちは、愛し子というネームバリューと合わさり徐々に英雄視されるようになっていった。それにつれて、姉なのに役に立たないどころか足を引っ張る私に非難の視線が集まるようになった。
「お姉様は悪くありませんわ。お兄様のように魔法の能力が高いわけでもありませんし、弟のクルーガのように剣の才能があるわけでもないのです。平民と同じで戦う術を持たないのですもの。きっと貴族であることが辛いはずよ。だからそんなにお姉様を責めないで」
周りは「ああ、リルアイゼ様はなんとお優しい」とか言ってるけど、それ、大っぴらに私は無能だと、貴族なんて辞めてしまえと言ってるってことに気付いてる?
3年生になって、クルーガが入学してきた。もちろんSクラスだ。私の噂を聞いて憤ってくれた。いい子だ。クルーガは、王都の屋敷には住まず、離れの別宅に住んでいる。いろいろと思うところはあるようだが、両親やリルアイゼとは上手くやっているようだ。
「わたくし、家でお姉様に・・・・」
ポロポロと涙を流すリルアイゼとそのリルアイゼを慰めるハーレムたち。私はあなたの住む家にはおりませんが?そんなことは誰も知らない。最後まで言わないあたりが小賢しい。
そして、とうとう実害が出始めた。とは言っても、私にではなく、私に危害を加えようとした人たちに、だ。私にはキュウちゃんとコマちゃんの鉄壁な守りがある。相手が何かしようとする前にふたりが防いでくれるのだ。例えば、私の頭上に植木鉢を落とそうとすると、その人は植木鉢を持ったまま落とす前に転ぶ。私を池に突き落とそうとすると、私がキュウちゃんに呼ばれて振り向いた隙に相手が池に落ちる。私の机に蛙の入った箱を置こうとすると、コマちゃんによって箱が開けられ蛙が飛び出す。その人から見れば、箱が勝手に開いたように見えるのだから恐怖だ。そんなことが続けば、私に危害を加えようとすると呪われるという噂が立ち始めて、更に私の周りから人がいなくなった。
「ムキー!!!」
本当にハンカチを噛み締めてそんな唸り声をあげる人がいるとは思わなかった。折角のお顔が台無しよ?リルアイゼ。
4年生になった。もう完全に孤立無援の状態だ。ただひとりクルーガだけは変わらずに声をかけてくれる。そのクルーガも女性不振になりつつある。リルアイゼの二面性を間近に見ていたらそうなるだろう。お兄様は全ての縁談を断るクルーガに頭を抱えてしまった。どちらも可哀想に。
「シュシュ。卒業したらすぐに式をあげるぞ?」
18歳を迎えたある日、突然ガイウスからビックリな発言が飛び出した。
「急にどうしたの?」
「いや。急でもないだろ?」
いやいや。そんな予兆なんてなかったよね?
「ガイウスは、それでいいの?」
「まだ言うのか、それ」
「だって・・・・」
「お前は?いいのか?他にも選べるだろう?」
「私は・・・・。選べるような立場にはないよ。知ってるでしょう、私の学園での扱い」
「学園ではな。だが、そんな狭い世界じゃなくて、お前を欲しているやつはたくさんいる」
「愛し子の姉として?」
「そういうやつも、そうでないやつも」
「・・・・」
それでも私は・・・・。
「俺はシュシュをちゃんと女として愛してるぞ?」
『僕はだりあをちゃんと女性として愛してるよ?』
え?誰?頭が傾いでいく。だりあって?私?
ガイウスが初めてちゃんと言葉にしてくれた。その想いに答えたいのに、また・・・・。
「シュシュ、シュシュ!」
強制的にここに引き戻される。
「・・・・」
「またか?」
気遣うガイウスの声に私を責める色はない。
「うん」
「やっぱり、危なっかしいな、お前は。俺にしておけ」
泣きそうな私をそっと抱き締めてくれた。ガイウスの匂いはいつも私を落ち着かせてくれる。
「うん。私もガイウスのこと、ちゃんと愛してるよ」
「そうか」
私は暫くその心地よさに身を委ねた。
1年生の時はまだよかった。私がリルアイゼを嫌っているという噂話が流れたくらいで、実害はなく、ただ、クラスから孤立しただけだった。
「いいんですのよ。わたくしがお母様のお腹にいたときに全ての能力を奪ってしまったんですもの。嫌われて当然ですわ」
たまたま通りかかって柱の陰でそれを聞いた私以外には、申し訳なさそうに目を伏せて語るリルアイゼの口許がほんの少しだけ上がっているのに気づいた者はいなかった。噂のもとはお前か、リルアイゼ。
2年生になると実戦で遠征をするリルアイゼとその仲間たちは、愛し子というネームバリューと合わさり徐々に英雄視されるようになっていった。それにつれて、姉なのに役に立たないどころか足を引っ張る私に非難の視線が集まるようになった。
「お姉様は悪くありませんわ。お兄様のように魔法の能力が高いわけでもありませんし、弟のクルーガのように剣の才能があるわけでもないのです。平民と同じで戦う術を持たないのですもの。きっと貴族であることが辛いはずよ。だからそんなにお姉様を責めないで」
周りは「ああ、リルアイゼ様はなんとお優しい」とか言ってるけど、それ、大っぴらに私は無能だと、貴族なんて辞めてしまえと言ってるってことに気付いてる?
3年生になって、クルーガが入学してきた。もちろんSクラスだ。私の噂を聞いて憤ってくれた。いい子だ。クルーガは、王都の屋敷には住まず、離れの別宅に住んでいる。いろいろと思うところはあるようだが、両親やリルアイゼとは上手くやっているようだ。
「わたくし、家でお姉様に・・・・」
ポロポロと涙を流すリルアイゼとそのリルアイゼを慰めるハーレムたち。私はあなたの住む家にはおりませんが?そんなことは誰も知らない。最後まで言わないあたりが小賢しい。
そして、とうとう実害が出始めた。とは言っても、私にではなく、私に危害を加えようとした人たちに、だ。私にはキュウちゃんとコマちゃんの鉄壁な守りがある。相手が何かしようとする前にふたりが防いでくれるのだ。例えば、私の頭上に植木鉢を落とそうとすると、その人は植木鉢を持ったまま落とす前に転ぶ。私を池に突き落とそうとすると、私がキュウちゃんに呼ばれて振り向いた隙に相手が池に落ちる。私の机に蛙の入った箱を置こうとすると、コマちゃんによって箱が開けられ蛙が飛び出す。その人から見れば、箱が勝手に開いたように見えるのだから恐怖だ。そんなことが続けば、私に危害を加えようとすると呪われるという噂が立ち始めて、更に私の周りから人がいなくなった。
「ムキー!!!」
本当にハンカチを噛み締めてそんな唸り声をあげる人がいるとは思わなかった。折角のお顔が台無しよ?リルアイゼ。
4年生になった。もう完全に孤立無援の状態だ。ただひとりクルーガだけは変わらずに声をかけてくれる。そのクルーガも女性不振になりつつある。リルアイゼの二面性を間近に見ていたらそうなるだろう。お兄様は全ての縁談を断るクルーガに頭を抱えてしまった。どちらも可哀想に。
「シュシュ。卒業したらすぐに式をあげるぞ?」
18歳を迎えたある日、突然ガイウスからビックリな発言が飛び出した。
「急にどうしたの?」
「いや。急でもないだろ?」
いやいや。そんな予兆なんてなかったよね?
「ガイウスは、それでいいの?」
「まだ言うのか、それ」
「だって・・・・」
「お前は?いいのか?他にも選べるだろう?」
「私は・・・・。選べるような立場にはないよ。知ってるでしょう、私の学園での扱い」
「学園ではな。だが、そんな狭い世界じゃなくて、お前を欲しているやつはたくさんいる」
「愛し子の姉として?」
「そういうやつも、そうでないやつも」
「・・・・」
それでも私は・・・・。
「俺はシュシュをちゃんと女として愛してるぞ?」
『僕はだりあをちゃんと女性として愛してるよ?』
え?誰?頭が傾いでいく。だりあって?私?
ガイウスが初めてちゃんと言葉にしてくれた。その想いに答えたいのに、また・・・・。
「シュシュ、シュシュ!」
強制的にここに引き戻される。
「・・・・」
「またか?」
気遣うガイウスの声に私を責める色はない。
「うん」
「やっぱり、危なっかしいな、お前は。俺にしておけ」
泣きそうな私をそっと抱き締めてくれた。ガイウスの匂いはいつも私を落ち着かせてくれる。
「うん。私もガイウスのこと、ちゃんと愛してるよ」
「そうか」
私は暫くその心地よさに身を委ねた。
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