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寄り添う姉妹(ふたり)
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歩いていた。ただ、それだけで少しは気が紛れる気がした。
宛てもなく探すように、レイヤの姿を追い求めるように……サリタは、街を彷徨っていた。
『探しに行くしかないでしょう』
あのエリスの言葉が、今の彼女を動かしている。その言葉には感情は無く、ただ現実として彼女を突き動かす事実だけが示されていた。
レイヤが姿を消してから、どれ程の時間が経ったのだろうか。
あの小さな黄色いカナリアの事を、ふと思い出していた。温もりを失い、冷たくなってしまった小鳥。どこにも行けず、命を落とす事になったあのカナリア。小鳥を埋めた庭の片隅を思い出し、胸に冷たい恐怖が再び広がる。
レイヤも、このまま消えてしまうのではないか。その考えが、サリタを強く突き動かしていた。恐怖に支配され、彼を見つけられなければ全てが終わる気がして、否応なくその思いが心を占めていく。
サリタの足は無意識に早くなり、風の冷たさにふと気づいた。レイヤは……寒がっていないだろうか。
しかしどこを探しても、レイヤの姿は見当たらない。かつて彼が友人と寄り道したダイナーにも行った。それ以上は、探す場所に心当たりが無かった。
それでも探さなければならない。探すことをやめてはいけない。だがサリタ自身、何処をどう探せば良いのか、分からなかった。
最早目的地のない旅をしているようだった。探すという行為そのものが、自分を保つための儀式にすり替わっているようで、それがまた苦しかった。
既に夜の帳が下り、街灯が一つまた一つと明かりを灯す。辺りはすっかり暗くなり、冷たい風が吹き抜ける中、サリタは歩みを進めていた。
しかし、何度目の角を曲がってもレイヤの姿は見つからない。とうとう彼女は、街の喧騒を背に、諦めるように屋敷へと引き返した。
サリタが帰宅したとき、その顔には浮かない表情が広がっていた。探し続けた足取りがどこか重く感じ、胸の中に広がる空虚さをどうしても拭えないまま、サリタはただ静かに部屋へと歩を進めた。
その姿を見たエリスは、何も言わずに彼女の後ろをついて行った。
部屋に入ると、サリタは無言でソファに腰を下ろす。エリスはその横に、少し間を空けて座った。二人の間に沈黙が降りる。
エリスは、サリタが何を考えているのか、何も聞かなくても分かる気がした。
「見つけられなかった」
サリタの声が、部屋の静けさを破った。それは、何とも言えない重さを帯びていて、エリスの胸に響いた。彼女の悔しさ、無力感、全てがその一言に込められているようだった。
エリスは声をかけられなかった。かけるべきとも思えたが、ただ静かに寄り添うしかなかった。
せめて彼が無事であることを伝えたいとも思った。だが、自分が先に彼を見つけたという事実をサリタに告げるのは、残酷にも思えた。
エリスは、彼女自身の手で彼を見つけることに意味があると感じていた。
そしてそこに、少しのエゴもあった。彼女はサリタの気持ちに寄り添うことに満足しながらも、どこかでサリタが自分に頼り、弱さを見せることに僅かな優越感を感じている。ただ静かに寄り添うことで、満たされるものがあった。
エリス自身、サリタの事を愛してしまっていた。それは姉妹愛のようであり、どこかそれとは違うもののようであり。その感情が、エリスの中で次第に膨らみ、サリタを大切に思う気持ちとはまた違う、何かが混ざり合っていることに気づかされる。
彼女達の間に流れる、奇妙に強く結びついた絆。それが、どこかで恐ろしい程に自分を支配し始めていることを、エリスは無意識のうちに感じていた。
記憶と感情の共有が、彼女達の間にあるものを変えてしまっていた。
「大丈夫、きっと。見つけられますよ」
根拠のない言葉ではある。ただ、エリスは自分の言葉で彼女の心が少しでも救われるなら、と考えた。
サリタはその言葉でエリスを見、小さく頷いた。
「私も……あなたの記憶を見てしまった」
不意に、サリタは言う。
「面白いものではなかったでしょう」
エリスは自嘲気味に言い、彼女が何を見たのかを想像した。
エリス自身、サリタの見られたくはないであろう記憶を見てしまっていた。逆に自分のそれを見られたところで、今更どうという事はないと考えた。
「辛くはなかった? その、代わる代わる……」
サリタの中には、エリスの記憶の断片が思い出された。毎晩違う男の顔、エリスの以前の“仕事”の様子だった。
反射的に目をぎゅっと閉じる。だが、心の中に投影されたそれは消えることはなく。
「そういう用途で造られたので。辛いだとかは、無かった」
エリスは僅かに目を伏せるが、その声はただ淡々としていた。サリタの見たものが何か、察しがついた。
身を預けるように寄り添うサリタの手をエリスが取った。慈しむように、その輪郭を確かめるように、指で撫でる。
「あなたみたいだったら、私も辛くなかったのかな」
サリタは呟いた。言ってしまってから、自分の口にした言葉に驚いた。……まるで、感情がないことが救いだとでも言うような。
そんなつもりじゃなかった。ただ、痛みをどう処理していいのか、分からなくなっていただけなのに。
その一言が、エリスの胸を掠める。けれど彼女は、いつものように無表情を保っていた――少なくとも、表面上は。
「感情が無かったから……そうですね」
機械のように紡がれた返答。その声には、微かに揺れるものがあった。サリタはそれに気づき、はっと目を見開く。
「ごめんなさい、そんなつもりじゃ……」
思わず口をついて出た謝罪。その声には、確かに後悔が滲んでいた。
だが、エリスは反応しない。視線を逸らしたまま、唇だけが僅かに震えていた。
感情が無かったから――その言葉が、何度も頭の中で反響する。
彼女の中で、何かが軋む音がした。けれど、それが何なのか。エリスには、まだ名前を与えることが出来なかった。
「……別に、気にしてません。あなたの方がよっぽど辛かった」
エリスは小さく、でも確かにサリタに向かって言った。自分でもその言葉にどれ程の重みを込めたのか、分からなかった。ただ、サリタが心配し過ぎていることだけは伝えたかった。
サリタはエリスの目をじっと見つめ、何かを感じ取るようにその眼差しを暫く保ち続けた。静寂が二人を包み、何も言わなくても、心の中で共有しているものがあるような気がした。
「本当に、ごめんなさい……」
サリタの声には、ほんの少しの恐れと、彼女なりの優しさが同居していた。その響きが、エリスには心地良いようでいて、どこか不安をかき立てる。触れてはならないものに指先が触れたような、微かなざわめき。
エリスはそっと目を閉じた。記憶の奥に沈んでいた筈の断片が、不意に浮かび上がる。そこにあるのは、自分のものではない感情。サリタの記憶が、まるで自分の中に溶け込んでいるかのようだった。
……夜の公園。灯りの滲むベンチ。誰かを見つめる視線。
「サリタ」
静かに、エリスは口を開いた。
「なに?」
「坊っちゃんとの思い出の場所、どこか……思い浮かびませんか?」
一瞬、言葉の意味が理解出来なかったのか、サリタは首を傾げた。けれど、すぐに目を見開く。
「……!」
その名もなき記憶が、急に色を取り戻す。
立ち上がったサリタの動作は、もうそれ以上の説明を必要としなかった。
そこに彼が居る保証など、どこにもない。けれど、エリスには妙な確信があった。
あの日、あの場所。彼もまた、あの風景をまだ覚えている気がした。
記憶とはそういうものだ――忘れようとしても、残ってしまうものがある。
ならば、彼もまた。
宛てもなく探すように、レイヤの姿を追い求めるように……サリタは、街を彷徨っていた。
『探しに行くしかないでしょう』
あのエリスの言葉が、今の彼女を動かしている。その言葉には感情は無く、ただ現実として彼女を突き動かす事実だけが示されていた。
レイヤが姿を消してから、どれ程の時間が経ったのだろうか。
あの小さな黄色いカナリアの事を、ふと思い出していた。温もりを失い、冷たくなってしまった小鳥。どこにも行けず、命を落とす事になったあのカナリア。小鳥を埋めた庭の片隅を思い出し、胸に冷たい恐怖が再び広がる。
レイヤも、このまま消えてしまうのではないか。その考えが、サリタを強く突き動かしていた。恐怖に支配され、彼を見つけられなければ全てが終わる気がして、否応なくその思いが心を占めていく。
サリタの足は無意識に早くなり、風の冷たさにふと気づいた。レイヤは……寒がっていないだろうか。
しかしどこを探しても、レイヤの姿は見当たらない。かつて彼が友人と寄り道したダイナーにも行った。それ以上は、探す場所に心当たりが無かった。
それでも探さなければならない。探すことをやめてはいけない。だがサリタ自身、何処をどう探せば良いのか、分からなかった。
最早目的地のない旅をしているようだった。探すという行為そのものが、自分を保つための儀式にすり替わっているようで、それがまた苦しかった。
既に夜の帳が下り、街灯が一つまた一つと明かりを灯す。辺りはすっかり暗くなり、冷たい風が吹き抜ける中、サリタは歩みを進めていた。
しかし、何度目の角を曲がってもレイヤの姿は見つからない。とうとう彼女は、街の喧騒を背に、諦めるように屋敷へと引き返した。
サリタが帰宅したとき、その顔には浮かない表情が広がっていた。探し続けた足取りがどこか重く感じ、胸の中に広がる空虚さをどうしても拭えないまま、サリタはただ静かに部屋へと歩を進めた。
その姿を見たエリスは、何も言わずに彼女の後ろをついて行った。
部屋に入ると、サリタは無言でソファに腰を下ろす。エリスはその横に、少し間を空けて座った。二人の間に沈黙が降りる。
エリスは、サリタが何を考えているのか、何も聞かなくても分かる気がした。
「見つけられなかった」
サリタの声が、部屋の静けさを破った。それは、何とも言えない重さを帯びていて、エリスの胸に響いた。彼女の悔しさ、無力感、全てがその一言に込められているようだった。
エリスは声をかけられなかった。かけるべきとも思えたが、ただ静かに寄り添うしかなかった。
せめて彼が無事であることを伝えたいとも思った。だが、自分が先に彼を見つけたという事実をサリタに告げるのは、残酷にも思えた。
エリスは、彼女自身の手で彼を見つけることに意味があると感じていた。
そしてそこに、少しのエゴもあった。彼女はサリタの気持ちに寄り添うことに満足しながらも、どこかでサリタが自分に頼り、弱さを見せることに僅かな優越感を感じている。ただ静かに寄り添うことで、満たされるものがあった。
エリス自身、サリタの事を愛してしまっていた。それは姉妹愛のようであり、どこかそれとは違うもののようであり。その感情が、エリスの中で次第に膨らみ、サリタを大切に思う気持ちとはまた違う、何かが混ざり合っていることに気づかされる。
彼女達の間に流れる、奇妙に強く結びついた絆。それが、どこかで恐ろしい程に自分を支配し始めていることを、エリスは無意識のうちに感じていた。
記憶と感情の共有が、彼女達の間にあるものを変えてしまっていた。
「大丈夫、きっと。見つけられますよ」
根拠のない言葉ではある。ただ、エリスは自分の言葉で彼女の心が少しでも救われるなら、と考えた。
サリタはその言葉でエリスを見、小さく頷いた。
「私も……あなたの記憶を見てしまった」
不意に、サリタは言う。
「面白いものではなかったでしょう」
エリスは自嘲気味に言い、彼女が何を見たのかを想像した。
エリス自身、サリタの見られたくはないであろう記憶を見てしまっていた。逆に自分のそれを見られたところで、今更どうという事はないと考えた。
「辛くはなかった? その、代わる代わる……」
サリタの中には、エリスの記憶の断片が思い出された。毎晩違う男の顔、エリスの以前の“仕事”の様子だった。
反射的に目をぎゅっと閉じる。だが、心の中に投影されたそれは消えることはなく。
「そういう用途で造られたので。辛いだとかは、無かった」
エリスは僅かに目を伏せるが、その声はただ淡々としていた。サリタの見たものが何か、察しがついた。
身を預けるように寄り添うサリタの手をエリスが取った。慈しむように、その輪郭を確かめるように、指で撫でる。
「あなたみたいだったら、私も辛くなかったのかな」
サリタは呟いた。言ってしまってから、自分の口にした言葉に驚いた。……まるで、感情がないことが救いだとでも言うような。
そんなつもりじゃなかった。ただ、痛みをどう処理していいのか、分からなくなっていただけなのに。
その一言が、エリスの胸を掠める。けれど彼女は、いつものように無表情を保っていた――少なくとも、表面上は。
「感情が無かったから……そうですね」
機械のように紡がれた返答。その声には、微かに揺れるものがあった。サリタはそれに気づき、はっと目を見開く。
「ごめんなさい、そんなつもりじゃ……」
思わず口をついて出た謝罪。その声には、確かに後悔が滲んでいた。
だが、エリスは反応しない。視線を逸らしたまま、唇だけが僅かに震えていた。
感情が無かったから――その言葉が、何度も頭の中で反響する。
彼女の中で、何かが軋む音がした。けれど、それが何なのか。エリスには、まだ名前を与えることが出来なかった。
「……別に、気にしてません。あなたの方がよっぽど辛かった」
エリスは小さく、でも確かにサリタに向かって言った。自分でもその言葉にどれ程の重みを込めたのか、分からなかった。ただ、サリタが心配し過ぎていることだけは伝えたかった。
サリタはエリスの目をじっと見つめ、何かを感じ取るようにその眼差しを暫く保ち続けた。静寂が二人を包み、何も言わなくても、心の中で共有しているものがあるような気がした。
「本当に、ごめんなさい……」
サリタの声には、ほんの少しの恐れと、彼女なりの優しさが同居していた。その響きが、エリスには心地良いようでいて、どこか不安をかき立てる。触れてはならないものに指先が触れたような、微かなざわめき。
エリスはそっと目を閉じた。記憶の奥に沈んでいた筈の断片が、不意に浮かび上がる。そこにあるのは、自分のものではない感情。サリタの記憶が、まるで自分の中に溶け込んでいるかのようだった。
……夜の公園。灯りの滲むベンチ。誰かを見つめる視線。
「サリタ」
静かに、エリスは口を開いた。
「なに?」
「坊っちゃんとの思い出の場所、どこか……思い浮かびませんか?」
一瞬、言葉の意味が理解出来なかったのか、サリタは首を傾げた。けれど、すぐに目を見開く。
「……!」
その名もなき記憶が、急に色を取り戻す。
立ち上がったサリタの動作は、もうそれ以上の説明を必要としなかった。
そこに彼が居る保証など、どこにもない。けれど、エリスには妙な確信があった。
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