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sideイツキ
勇者は皇子に恋をする②
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へらへらの第五皇子……ルークスは、他の奴と違った。見た目や言動とは異なり、いつも周りを気遣い、空気を読んで、和ませて。
魔術しか興味のない魔導師に、王家と筋肉を心酔する騎士隊長。こちらの常識や勝手などわからない異世界人俺達。そのフォローをアイツ一人がしてた。
自分を遊び人だと称し、ちゃらんぽらんな体を装っていたけど、荷物の補充も、宿屋の手配も、旅先での領主やギルドや街の人との先触れややり取りや交渉全て、アイツ一人がやっていた。
自分は役立たずだから……と、戦いで力になれなくてすまないと零すが、スキルの向上やサポート、全体を見通し、絶妙なタイミングでフォローを入れるアイツがいるからこそ、協調性がなくバラバラな俺達でも戦えているのだと思う。
初めて魔物を殺した夜、食事もできず、ひとりになりたいと部屋に篭った俺に、アイツはへらっとした顔で尋ねてきた。
「こういう時、ひとりになるとさ、余計な事考えちゃうし……嫌かもしれないけど、オレ傍にいてもいい?」
控えめな言葉と裏腹に、ぐいぐいと押しより、俺の横に座った。
「ごめんね」
魔物を殺した感触が、手に残っている。切り付けた瞬間、飛び散った赤い体液。熱くて、ヌルッとしてて、俺と同じ血が流れてて……桜がすぐに浄化してくれたけど、あの感触も断末魔も、俺の身体に残ってる……。
小刻みに震える俺の手を、俺よりも少し高い体温が、包みこんだ。
「なにに対して……謝ってんだよ」
「なにもかも……かな」
「勝手に召喚して、一方的に役目を押し付けて、キミ達に辛い思いをさせて……それを止める事もできなくて」
「ごめん」
俺よりも辛そうに、眉根を下げ謝るそいつに、泣きそうになった。
「なんでお前が謝るんだよ」
「だって……オレ、一応王族だから……」
責任がある……という。なら、それこそやたらキラキラした胡散臭いお前の兄貴が謝るべきだろ。お前個人は、何も悪くないのに。
「王族はそんな簡単に謝っていいのか」
初めて会った時も、コイツは謝ってきた。公の場で。王と臣下の前で。
「うーん。ダメかな」
「ならなんで」
「ごめんね。オレの独りよがり。勇者にとってオレの謝罪なんか必要ないよね……でも、王族が謝ったって事実は、大きな意味を持つから、受け入れられなくても謝る事を許して欲しい」
勇者と聖女の召喚は、国に非がある。それを王族が認めている。……そうコイツは言ってる。多分、独断でやった事なんだろう。困ったような顔で笑うルークス。なんてバカな奴なんだと思った。
「そんな事よりさ。勇者。はい。あーん」
「は?」
真剣な雰囲気をぶち壊すように、ルークスは徐に俺の唇に果物を押し付けた。
「リカンの実。少し酸味があるけど、疲労回復にいいんだよ?」
「んぐっ」
「食欲無い時でも、食べれるし、胃のムカつき抑えてくれんの」
「むぐっ」
「王子のオレ、手ずから剥いてあげてんだからね。ほら、お口あけて?」
へにゃっと緩んだ微笑みを浮かべ、俺の口に甲斐甲斐しくリカンの実を運ぶルークス。その白く長い指先が、俺の唇を掠め、ドキリとした。
「オレも、初めて魔物を殺した時……めっちゃ吐いたよ。んでいっぱい泣いた」
それが当たり前の世界なんだけどさ……やっぱり辛いもんは辛いよね。殺す事に慣れたくない。偽善なんだけど……そう笑う
「食欲ないとは思うんだけどさ。少しでも食べて?」
─好きだと思った。
俺の痛みに気付いて、傍に居てくれて……案じてくれる。こんなエゴに塗れた、掃き溜めみたいな世界で見返りを求めず、寄り添おうとしてくれる存在。役立たずと揶揄され、それでも腐らず、自分のしたい事を貫く綺麗な人……。
惚れるなというのが無理だ。
気付いたら、俺はルークスに惚れていた。
魔術しか興味のない魔導師に、王家と筋肉を心酔する騎士隊長。こちらの常識や勝手などわからない異世界人俺達。そのフォローをアイツ一人がしてた。
自分を遊び人だと称し、ちゃらんぽらんな体を装っていたけど、荷物の補充も、宿屋の手配も、旅先での領主やギルドや街の人との先触れややり取りや交渉全て、アイツ一人がやっていた。
自分は役立たずだから……と、戦いで力になれなくてすまないと零すが、スキルの向上やサポート、全体を見通し、絶妙なタイミングでフォローを入れるアイツがいるからこそ、協調性がなくバラバラな俺達でも戦えているのだと思う。
初めて魔物を殺した夜、食事もできず、ひとりになりたいと部屋に篭った俺に、アイツはへらっとした顔で尋ねてきた。
「こういう時、ひとりになるとさ、余計な事考えちゃうし……嫌かもしれないけど、オレ傍にいてもいい?」
控えめな言葉と裏腹に、ぐいぐいと押しより、俺の横に座った。
「ごめんね」
魔物を殺した感触が、手に残っている。切り付けた瞬間、飛び散った赤い体液。熱くて、ヌルッとしてて、俺と同じ血が流れてて……桜がすぐに浄化してくれたけど、あの感触も断末魔も、俺の身体に残ってる……。
小刻みに震える俺の手を、俺よりも少し高い体温が、包みこんだ。
「なにに対して……謝ってんだよ」
「なにもかも……かな」
「勝手に召喚して、一方的に役目を押し付けて、キミ達に辛い思いをさせて……それを止める事もできなくて」
「ごめん」
俺よりも辛そうに、眉根を下げ謝るそいつに、泣きそうになった。
「なんでお前が謝るんだよ」
「だって……オレ、一応王族だから……」
責任がある……という。なら、それこそやたらキラキラした胡散臭いお前の兄貴が謝るべきだろ。お前個人は、何も悪くないのに。
「王族はそんな簡単に謝っていいのか」
初めて会った時も、コイツは謝ってきた。公の場で。王と臣下の前で。
「うーん。ダメかな」
「ならなんで」
「ごめんね。オレの独りよがり。勇者にとってオレの謝罪なんか必要ないよね……でも、王族が謝ったって事実は、大きな意味を持つから、受け入れられなくても謝る事を許して欲しい」
勇者と聖女の召喚は、国に非がある。それを王族が認めている。……そうコイツは言ってる。多分、独断でやった事なんだろう。困ったような顔で笑うルークス。なんてバカな奴なんだと思った。
「そんな事よりさ。勇者。はい。あーん」
「は?」
真剣な雰囲気をぶち壊すように、ルークスは徐に俺の唇に果物を押し付けた。
「リカンの実。少し酸味があるけど、疲労回復にいいんだよ?」
「んぐっ」
「食欲無い時でも、食べれるし、胃のムカつき抑えてくれんの」
「むぐっ」
「王子のオレ、手ずから剥いてあげてんだからね。ほら、お口あけて?」
へにゃっと緩んだ微笑みを浮かべ、俺の口に甲斐甲斐しくリカンの実を運ぶルークス。その白く長い指先が、俺の唇を掠め、ドキリとした。
「オレも、初めて魔物を殺した時……めっちゃ吐いたよ。んでいっぱい泣いた」
それが当たり前の世界なんだけどさ……やっぱり辛いもんは辛いよね。殺す事に慣れたくない。偽善なんだけど……そう笑う
「食欲ないとは思うんだけどさ。少しでも食べて?」
─好きだと思った。
俺の痛みに気付いて、傍に居てくれて……案じてくれる。こんなエゴに塗れた、掃き溜めみたいな世界で見返りを求めず、寄り添おうとしてくれる存在。役立たずと揶揄され、それでも腐らず、自分のしたい事を貫く綺麗な人……。
惚れるなというのが無理だ。
気付いたら、俺はルークスに惚れていた。
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