勇者と魔王とオレちゃんと

りりっく

文字の大きさ
12 / 15
sideイツキ

勇者は皇子に恋をする②

しおりを挟む
 へらへらの第五皇子……ルークスは、他の奴と違った。見た目や言動とは異なり、いつも周りを気遣い、空気を読んで、和ませて。
 魔術しか興味のない魔導師変人に、王家と筋肉を心酔する騎士隊長筋肉バカ。こちらの常識や勝手などわからない異世界人俺達。そのフォローをアイツ一人がしてた。

 自分を遊び人だと称し、ちゃらんぽらんな体を装っていたけど、荷物の補充も、宿屋の手配も、旅先での領主やギルドや街の人との先触れややり取りや交渉全て、アイツ一人がやっていた。

 自分は役立たずだから……と、戦いで力になれなくてすまないと零すが、スキルの向上やサポート、全体を見通し、絶妙なタイミングでフォローを入れるアイツがいるからこそ、協調性がなくバラバラな俺達でも戦えているのだと思う。





 初めて魔物を殺した夜、食事もできず、ひとりになりたいと部屋に篭った俺に、アイツはへらっとした顔で尋ねてきた。

「こういう時、ひとりになるとさ、余計な事考えちゃうし……嫌かもしれないけど、オレ傍にいてもいい?」

 控えめな言葉と裏腹に、ぐいぐいと押しより、俺の横に座った。
 
「ごめんね」

 魔物を殺した感触が、手に残っている。切り付けた瞬間、飛び散った赤い体液。熱くて、ヌルッとしてて、俺と同じ血が流れてて……桜がすぐに浄化してくれたけど、あの感触も断末魔も、俺の身体に残ってる……。
 小刻みに震える俺の手を、俺よりも少し高い体温が、包みこんだ。

「なにに対して……謝ってんだよ」
「なにもかも……かな」

「勝手に召喚して、一方的に役目を押し付けて、キミ達に辛い思いをさせて……それを止める事もできなくて」

「ごめん」

 俺よりも辛そうに、眉根を下げ謝るそいつに、泣きそうになった。

「なんでお前が謝るんだよ」
「だって……オレ、一応王族だから……」

 責任がある……という。なら、それこそやたらキラキラした胡散臭いお前の兄貴が謝るべきだろ。お前個人は、何も悪くないのに。

「王族はそんな簡単に謝っていいのか」

 初めて会った時も、コイツは謝ってきた。公の場で。王と臣下の前で。

「うーん。ダメかな」
「ならなんで」

「ごめんね。オレの独りよがり。勇者にとってオレの謝罪なんか必要ないよね……でも、王族が謝ったって事実は、大きな意味を持つから、受け入れられなくても謝る事を許して欲しい」

 勇者と聖女の召喚は、国に非がある。それを王族が認めている。……そうコイツは言ってる。多分、独断でやった事なんだろう。困ったような顔で笑うルークス。なんてバカな奴なんだと思った。

「そんな事よりさ。勇者。はい。あーん」
「は?」

 真剣な雰囲気をぶち壊すように、ルークスは徐に俺の唇に果物を押し付けた。

「リカンの実。少し酸味があるけど、疲労回復にいいんだよ?」
「んぐっ」
「食欲無い時でも、食べれるし、胃のムカつき抑えてくれんの」
「むぐっ」
「王子のオレ、手ずから剥いてあげてんだからね。ほら、お口あけて?」

 へにゃっと緩んだ微笑みを浮かべ、俺の口に甲斐甲斐しくリカンの実を運ぶルークス。その白く長い指先が、俺の唇を掠め、ドキリとした。

「オレも、初めて魔物を殺した時……めっちゃ吐いたよ。んでいっぱい泣いた」

 それが当たり前の世界なんだけどさ……やっぱり辛いもんは辛いよね。殺す事に慣れたくない。偽善なんだけど……そう笑う

「食欲ないとは思うんだけどさ。少しでも食べて?」

 ─好きだと思った。

 俺の痛みに気付いて、傍に居てくれて……案じてくれる。こんなエゴに塗れた、掃き溜めみたいな世界で見返りを求めず、寄り添おうとしてくれる存在。役立たずと揶揄され、それでも腐らず、自分のしたい事を貫く綺麗な人……。

 惚れるなというのが無理だ。

 気付いたら、俺はルークスに惚れていた。



 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

囚われた元王は逃げ出せない

スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた そうあの日までは 忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに なんで俺にこんな事を 「国王でないならもう俺のものだ」 「僕をあなたの側にずっといさせて」 「君のいない人生は生きられない」 「私の国の王妃にならないか」 いやいや、みんな何いってんの?

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

今度こそ、どんな診療が俺を 待っているのか

相馬昴
BL
強靭な肉体を持つ男・相馬昴は、診療台の上で運命に翻弄されていく。 相手は、年下の執着攻め——そして、彼一人では終わらない。 ガチムチ受け×年下×複数攻めという禁断の関係が、徐々に相馬の本能を暴いていく。 雄の香りと快楽に塗れながら、男たちの欲望の的となる彼の身体。 その結末は、甘美な支配か、それとも—— 背徳的な医師×患者、欲と心理が交錯する濃密BL長編! https://ci-en.dlsite.com/creator/30033/article/1422322

処理中です...