マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜

潟湖

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第5話 訃報 (side:レオニス/グラン)

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「何だと!?」

 レオニスに届けられた報せを聞き、いつもは冷静沈着な彼にしては珍しく血相を変えて叫んだ。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 その時レオニスは、公国と冒険者ギルド双方からの直接の依頼により、アクシーディア公国南西部奥地にある【廃都の魔城】と呼ばれる魔窟の攻略の遠征に出ていた。
 普段彼が住む拠点のカタポレンの森は最北部に位置し、南西部奥地の廃都の魔城までは首都経由で通常片道1ヶ月ほどかかる遠距離だ。
 その目的地である廃都の魔城の直前まで辿り着き、野営地として構える準備をしていた時にレオニスは、炊事場でとある顔見知りの冒険者に話しかけられた。

「俺達が今回向かう魔城の先遣隊に、お前と同郷のグランという名の冒険者がいたらしい」

 それはレオニスにとって、まさしく寝耳に水だった。
 そもそもレオニスという伝説の金剛級冒険者が、国王や冒険者ギルド直々の依頼により廃都の魔城の攻略部隊に担ぎ出されたのは、魔城攻略に先立ち冒険者ギルドが送り出した先遣隊が完膚無きまでに全滅したからである。

 先遣隊とはいえ、冒険者ギルド選りすぐりの選抜隊である。人員もその数100人。聖銀級を筆頭とし、白金級、黄金級の冒険者を中心に組んだ、上位冒険者のみで構成された大規模部隊であったと聞く。
 そんな精鋭部隊が、何事も成せずに一人残らず全滅するなどとは、まさしく前代未聞であり―――国としても冒険者ギルドとしても、到底放置しておける事態ではなかった。
 レオニスも、直接国と関わる仕事はなるべくしたくなかったが、こうした状況から依頼を引き受けざるを得なかった。

 その全滅した精鋭部隊の中に、レオニスが兄とも慕うグランがいたという―――それが意味するところは『グランが死んだ』ということに他ならない。
 一瞬にして顔色を失ったレオニス。目の前が真っ暗になったように、ただただ呆然と立ち竦んでいた。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 グランはレオニスと同じく、ディーノ村の孤児院で育った。
 レオニスより5歳上で、孤児院では典型的なわんぱく坊主だが面倒見の良いリーダーでもあり。皆の頼れる兄貴分だった。

 孤児院では15歳になったら院を出て、各自自立しなければならない。
 グランもその慣例に従い、15歳になった時に院を出た。
 その時7歳だったレオニスは、グランと離れるのが悲しくて寂しくて、別れの日も他の皆といっしょにグランにしがみついて大泣きし、グランを困らせた。

 グランは院を出てすぐに、冒険者としての活動を開始した。
 冒険者になるのに、基本的に年齢制限はない。ただし、心身面や道徳的な問題もあって、冒険者登録は10歳からという暗黙の不文律がある。
 グランも10歳になってすぐに冒険者登録し、薬草採取や道路の清掃、荷物運びの手伝い等々、子供でも可能な下級依頼を着実にこなしていた。
 いずれ来たる、自立しなければならない日を迎えるために。

 そんな彼の背中を、レオニスはずっと見ていた。
 燃えるような赤い短髪に、同じく燃えるような深紅の瞳。
 体格が良く、少し切れ長な目で一見強面に見える顔つきだったが、笑うととても人懐っこくて明るく快活な笑顔を見せる―――そう、周囲を明るく照らす太陽そのもののような人だった。

 18歳の時に、グランと同時期に院を出たレミと結婚した、と聞いた。
 レミはグランと同い年で、ふわっとした煉瓦色の髪に鶯色の瞳の、小柄で華奢な女性だ。
 グラン同様面倒見の良い性格で、孤児院の中でも皆の優しいお姉さん的な存在だった。

 二人は結婚式こそ挙げはしなかったが、古巣の孤児院に報告しにきてくれた時の二人の笑顔はとても眩しくて綺麗だった。
 少し尖った八重歯を見せて、ニカッと明るく笑うグランの笑顔と、頬を桜色に染めて照れくさそうにはにかむレミ。
 レオニスとともに二人を取り囲み、口々に「おめでとう!」「やったね!」と祝福する孤児院の子供たち。

 その光景は、限りなく美しく、穏やかで、本当に―――本当に幸せな景色だった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 その頃のグランは黄金級の冒険者で、今回の先遣隊の成果次第で白金級に昇格するという話も出ていた。
 廃都の魔城への遠征という危険な任務だが、討伐本隊ではなく先遣隊であること、また上級冒険者を集めた編成で総勢100人という大規模部隊であったことから、そこまで苛烈な任務になるなどとは誰も予想していなかった。

 当然グランとしても、そこまで危険だとは思わなかっただろう。特に今は、愛するレミが自分の子をその身の内に宿している。
 何があっても生きて帰らねばならぬ身であることは、グラン自身が最も分かっていたはずだった。

 だが、我が子が生まれてくるからこそ、父となるべき己が最も頑張らねばならぬ時でもある。グランはそう覚悟して、廃都の魔城先遣隊に志願した。
 行くだけで1ヶ月かかるほどの遠征だ、往復だけで2ヶ月、先遣調査期間を含めたら3ヶ月4ヶ月かかるかもしれない。

「ねぇ、グラン……本当に大丈夫なの?この子が産まれる頃には、絶対に帰ってきてくれるのよね……?」

 任務内容の話を聞いて心配するレミに、グランは努めて明るく笑いながら言う。

「大丈夫だって!俺より強い、聖銀級や白金級の人達もたくさんいるんだから。それに、俺だってもうすぐ父親になるんだ。生まれてくる子のため、そして何より愛するレミ―――  お前のためにも頑張らなくちゃな!」

 いつもと変わらぬ明るく優しく、太陽のように力強い笑顔。
 その笑顔が、レミの元に戻ることは二度となかった―――
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