マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜

潟湖

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第51話 転移門の設置

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 執務室と呼ばれたその部屋は、階段を上がってすぐ右にあった。
 ラウルがどこからか鍵を取り出し、カチャリと解錠して扉を開ける。
 広々とした部屋で、右側の壁には立派な書架があり、何やらずらりと本が並んでいる。
 正面にはカーテンが引かれた大きな窓と執務用の机、左側の壁に別の扉があった。
 おそらくは、その左側の扉が宝物庫なのだろう。

「宝物庫に入る前に、ライトの指紋認証と虹彩認証を登録するぞ」

 レオニスは扉の中央辺りに手を当てながら、ライトを宝物庫の扉の前に立たせた。
 レオニスに言われるがまま、ライトは扉の取手を左右両方それぞれの手で握り、先程レオニスが手を当てていた扉中央に嵌めてある緑色の大きな宝石のようなものを見つめた。

 しばらくそうしていると、何だか身体がムズムズするような感覚がライトの中で湧き上がる。
 どうもこの扉自身が、ライトの身体を隅から隅までじっくりとスキャンしているようだ。
 緑色の宝石がふっ、と青い色に変わり、しばらくして再び最初の緑色に戻った。
 レオニスがライトに扉の説明をする。

「よし、これで登録完了っと」
「この扉は指紋と虹彩、両方の認証登録をした者以外は開けられないようになっている」
「また、万が一扉が開けっ放しにされていても、中は見えないように認識阻害もかけてあるし」
「扉を通る時にスキャンされるから、登録済みの者以外は入ることはおろか覗き見すら叶わない」
「でもまぁ、扉はきちんと閉めておくに限るから、ライトも毎回出入りする度にちゃんと閉めるようにな?」

 おおお、これまた何という鉄壁ガード!!
 さすがに宝物庫という場所柄なだけのことはある、認証登録済みの関係者以外は絶対に誰も入れないような警戒態勢だ。
 警備会社泣かせの厳重かつ完璧仕様だねぇ、この世界に警備会社なんてないだろうけど。

 登録を済ませた後、三人は宝物庫に入った。
 当然のことながら、レオニスとラウルは既に認証登録済みなので難なく部屋に入れる。
 宝物庫というだけあって、外部の日光を取り入れる窓は一切なかったが、壁に複数かけられたランタンのような照明器具が入室後すぐに淡い光を灯す。
 事前に聞いていた通り、宝物どころか何一つない完全に空っぽの空間が広がる部屋だった。

「さ、んじゃ早速転移門を置くか」
「さすがに部屋のド真ん中に描いてもなー、後から邪魔になってもいけないから一応出入りしやすい扉側の奥の隅にするか」

 そう言いながら、レオニスは空間魔法陣から何やら操作パネルのようなもののついた石柱?をひょい、と取り出す。
 それを、扉がある壁側の隅の方の壁際に置き、石柱の上に左手をしばらく置いている。何やら石柱が光り輝いているようだ。
 その後、少し距離の離れたところに立ってから、その石柱の近くの床に向けて手を翳した。

 しばらくその様子を見ていると、手を翳した床から一瞬強めの光がパァッ、と四方に広がり、すぐにそれは収まった。
 目を傷めるほどの眩しさではなかったが、ライトは少しだけびっくりした。

「よし、こっちも完了っと」
「次は行き先指定と空欄作りだな」

 レオニスは事も無げに魔法陣の設置完了宣言しながら、石柱のパネルを何やら操作している。
 傍から見れば、それは本当に造作もない簡単なお仕事のように思える風景だ。
 だがこれはきっと、ライトが思うよりもはるかに途轍もなくすごい御技なのだろう。

「あ、この石柱にお前の掌紋認証登録を済ませておきたいから、こっち来てくれ」

 レオニスに呼ばれて、ライトはレオニスと石柱の近くに寄る。

「まずはこの石柱に、ライトの掌紋認証を取るぞ」
「石柱のこの上面部分に、手のひらをべたっと張り付けるようにして置くんだ」
「利き手は操作画面を弄るから、認証は利き手じゃない方を登録するんだ」
「ライトの場合は右利きだから、左手を掌紋認証に使う」

 レオニスはライトに、簡潔だが分かりやすく説明していく。

「……こう?」
「そうそう、そのまましばらく待つんだ」
「さっきやった、宝物庫の扉の認証と同じようなもの?」
「ああ、そうだ、あれと同じ仕組みだ」
「この掌紋認証登録は、俺達以外に使えないようにするための処置でな。冒険者ギルドとか宮殿なんかの、いわゆる不特定多数が使う前提の転移門にはいちいち登録する必要はない」

 石柱の上面部分にライトの左の手のひらを押しつけると、石柱上面から淡い光が発する。
 淡い光はしばらく輝いていたが、10秒ほど経過したらフッ、と消えた。

「よし、これでライトもここの転移門を自由に使えるようになったぞ。後は、念の為にカタポレンの森の家の方の転移門にも掌紋認証登録しておくことにするか」
「うん……なんかあまり実感湧かないけど、きっとすごいことなんだろうね」
「ま、こんなもんは慣れだ、慣れ」

 レオニスは、事も無げに言う。
 転移門を使い放題できる人間なんて、王侯貴族にもいないはずなのだが。

「今度はこの石柱の上面に、左の手のひらを翳してみな」
「……こう?」
「そうそう。そうすると、石柱の上に操作画面が出てくる」
「……あ、ホントだ、何か出てきた」

 ライトはレオニスの指導のもと、転移門の操作方法を教わる。
 レオニスに言われた通りに、石柱の上面に左の手のひらをを翳すと、ライトの目の前にホログラムのような半透明の淡い水色の操作パネルが浮き出てきた。
 何だか近未来のVRみたいですごい!と、ライトはワクテカ顔でホログラムに見入る。

「操作画面のここ、これが行き先な。行き先を指で軽く指で触れれば、そこを指定先として転移する」
「転移する際には、当然のことだが魔法陣の中から行う。別に陣の中央に立たなくてもいい、荷物をいっしょに運んだりすることもあるからな」

 魔法陣の中に荷物を入れれば、人間といっしょに運べるらしい。それは何とも便利である。
 ただし、転移させるものの質量により魔力の消費量が変わるらしいので、欲張って一度にたくさんの荷物を運ぼうとすると大変なことになりそうだが。

「そして、この転移門というのは基本この石柱と魔法陣、両方が設置してある場所にしか転移はできない」
「本来なら緯度経度を数値入力して、そこに直接転移する方がありとあらゆる場所に飛べるし、技術的にも可能っちゃ可能なんだが」
「それを可能にすると、絶対に戦争だの強盗だの悪事に使う奴が現れるのは目に見えてるんでな……国際的にも、座標入力による転移は禁止されている」

 それもそうだ。ピンポイントで移動し放題となったら、絶対に宮殿とか大商人の家に押し入って泥棒しまくる奴がすぐに出てくるに違いない。
 というか、泥棒程度ならまだ可愛い。これが戦争や要人暗殺なんぞに使われたら、それこそ目も当てられない。
 悲しいことに、いつの世にもそういう愚かで強欲な輩はいるものなのだ。

「さ、設置作業もだいたい完了したが。今日の帰りは冒険者ギルドの転移門を使うぞー、行きで使ったから帰りも一応そっち使っておかんとな」
「分かったー、そしたらこの新しい転移門の試運転はまた明日?」
「そうだな、今日は意外と時間かかったし、家の周辺案内や学園までの道程はまた明日以降にするか」
「はーい。レオ兄ちゃん、そしたらここに、ぼくの学園用品置き場なんかも作ってもらっていい?」
「おお、そうだな。その方がライトも使いやすくなるから、後でラウルに棚とか設えといてもらうか」
「ありがとう!ラウル、お願いね!」
「おう、任せとけ」

 ライトとレオニス、二人の方針が決まったところで、ラウルがパンパンと手を叩く。

「さ、んじゃ一休みってことで下でおやつにでもするか」
「「賛成ー!」」

 三人して部屋を出て、いそいそと階下に降りるのだった。




====================

 認証登録に用いる、宝物庫の扉の緑色の宝石みたいなもの。
 最初は某指輪物語のような目玉仕様にしようかと思ったのですが、さすがにそれは魔城系になってしまう……ということで断念。
 あの燃えるような爛々と怪しく光るお目々でギョロリと睨まれた日には、ライトでなくてもチビりかけて夜な夜な悪夢に魘されそうです。
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