マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜

潟湖

文字の大きさ
55 / 125

第55話 職業とジョブ

しおりを挟む
「そういえば、皆さんの職業は何ですか?」

 ライトは思いきって、職業のことをダイレクトに尋ねてみた。
 そう、この世界でライト自身未だによく分かっていない『職業システム』。その謎の一端が少しでも分かればめっけもんだ、とライトは考えたのだ。

 ところが、ライトの意に反してクルト達はきょとんとした顔をしている。

「職業?」
「俺達の職業、か?」
「そりゃあ、見ての通り全員冒険者よ?」
「うん、全員冒険者」
「というか、冒険者以外に見えたりする?」

 ん?話が通じない?
 どういうことだ?

「えーっと、あの、ほら、【戦士】とか【闘士】とか【僧侶】とか、いろいろとあるでしょ?」
「戦士?僧侶?そんなジョブ、あったっけ?」

 どうしたことか、未だに話が通じない。
 これは双方の間に、何か重大かつ決定的な齟齬が生じているような気がしてならない。
 ライトが強烈な不安を覚え始めた、その時。

「……ああ、ライト君が言ってる職業ってのは、ジョブのことじゃない?」

 モルガーナが『ピコーン!思いついた!』とばかりに、手をポン、と合わせながら言った。
 モルガーナは錫色の艷やかな長いストレートの髪を、緩い三つ編みでまとめて右側に流している。
 綺麗な若紫の瞳は、いつも皆をまとめ役を務めるしっかり者のお姉さん、というようなオーラを感じさせる。

「……ジョブ?」
「そう、ジョブ。私の場合は、火炎術師よ」
「ああ、そういうことね。俺はこぶしの方の拳士で、クルト兄さんは剣の方の剣士だ」
「私は弓士、ネヴァンは回復師よ」

 モルガーナに呼応するように、ガロンとヴァハがそれぞれのジョブを明かす。
 ヴァハは鮮やかな紅色のポニーテールに樺色の瞳、動きやすさを優先したのか少々肌の露出が多めの軽装が印象的な女性だ。
 一方、質問した側のはずであるライトは、ぽけっとしていた。

「……火炎術師?拳士?弓士?」
「ああ、ライト君はまだ冒険者登録できる年齢じゃないし、ジョブのことは詳しくは知らないだろう」

 クルトがフォローするように言う。

「ジョブというのはね、まず神殿で適性判断してもらうんだ」
「適性判断ってのは、その人が持つHPやMP、攻撃力や魔力、敏捷などの素質とか属性の傾向なんかだね」
「それらの結果を見て、その人にとってどれが最も適した役割を持てるかを総合的に判断して、スクロールを授けられるんだ」
「例えばほら、HPや攻撃力が高くてMPや魔力が少ない人が、魔法使いにはなれないだろう?」
「逆に、HPや攻撃力が低くてMPや魔力が高い人は、剣士にはなれない」
「いや、なろうとしてなれないこともないよ?適性の合わないジョブでも、無理矢理なろうと思えばなれるはず」
「だけど、それはあまりにも効率が悪過ぎて、非現実的なんだ」
「それに、そもそも適性を無視した不向きなジョブのスクロールを、神殿が授けてくれるとも思えないし」
「ちなみにスクロールは、適正ジョブ以外の人でも入手できるよ。地水火風光闇、いわゆる六大属性の初級魔法なら街の巻物屋で普通に売られていて、お金を出せば誰でも手に入れられるんだ」
「ただ、初級でも値段はかなり高いから、普通の人はあれこれたくさん買えないけど。それでも普段の日常生活に使える生活魔法として、とても重宝するんだ」
「中級以上になると、さすがに店売りはなくて適正ジョブでないと修められないけどね」

 クルトが立て続けに丁寧に解説しているが、ライトはぽけっとした顔のままでちゃんと聞いているんだがいないんだか分からないような、何ともいえない表情をしている。

「……おっと、ライト君にはちょっと難し過ぎてついていけなかったかな?ごめんね、いきなりたくさん話して」

 クルトはライトの気の抜けた表情に気づき、申し訳なさそうに謝った。

「……あ、いえ、そんなことはありません。ぼくが知りたかったことを聞けて、すごくためになりました。ありがとうございます」
「そうかい?だったらいいけど」
「クルト兄さんは超真面目だからなー、話が長過ぎて寝ちゃっても仕方ないと俺は思うぜ?」

 横でいっしょに聞いていたガロンが、頭の後ろに手を組んで笑いながら茶化すように言う。

「そういうガロンは、もうちょっと真面目にクルトの話を聞いた方がいいと思うわよ?」
「そうそう、依頼完了後の反省会でいっつも怒られるのはガロンなんだからね?」
「絶対にガロンの方が、ライト君よりお子様だと思う……」

 女三人衆に速攻でツッコミ連打されるガロン。
 自分より年下の、パーティー最年少であるネヴァンにまで即時ツッコミを入れられるとは、ガロンの普段の行いというものが伺い知れる。
 ネヴァンは黒に近い紺色のふんわりとしたショートボブに瑠璃色の瞳の少女、回復師らしく白のフード付きローブを着ている。

 そんな女性陣の勢いに若干たじろぎながらも、ガロンはへこたれない。

「う、うるせー!俺だってそれなりに成果出してるだろ!」
「失敗を振り返り、反省して次に活かす。それが生き残る道に繋がる。さっきレオニスさんが仰ってたことよ?」
「それをまるっと無視するつもり?」
「うわー、ガロンっていつからそんな偉くなったのー?」

 目の前にいる、尊敬してやまないレオニスの言を引き合いにされて、ガロンは反論できずにぐぬぬとなるしかない。

「まぁまぁ、そう皆して責め立ててやるな。ガロンにだって、長所はたくさんあるさ」
「レオニスさぁぁぁぁんッ」
「だが、ガロンも仲間の苦言は素直に受けておけよ?皆お前のためを思って言ってくれてることなんだからな」
「……はいッ!!」

 レオニスに上手に諭されて、涙目になったり感激したり、いろいろと忙しそうなガロン。
 皆いい落とし所を得て、笑顔になる。
 それと同時に、若手パーティー連中のレオニスを見る眼差しが更に尊敬度をマシマシにしていた。

「……さ、飯もだいたい食い終えたことだし、お前達も討伐から帰ってきたばかりなら疲れてるだろう。そろそろお開きにするか」
「はい!レオニスさん、今日は本当にありがとうございました!」
「ここの支払いは俺が出すから。お前ら、これからも頑張れよ」
「……!!ごちそうさまです!!」
「ま、お前達が今よりもっと出世したら、今度は俺に奢ってくれやwww」
「「「「「はいッ!!」」」」」

 憧れの人とたくさん語りながらお腹いっぱい飲み食いしただけでなく、晩飯代まで奢ってもらった龍虎双星の五人。全員揃って本当に感激の面持ちだ。

「じゃ、またな。ほら、ライト、行くぞ」
「……あ、はい。皆さん、今日はたくさんお話を聞かせていただき、ありがとうございました」
「いや、こちらこそライト君と知り合えて、本当に嬉しいよ」
「ラグーン学園でたくさん友達できるといいな!」
「またギルドで会ったら、今度は外でお茶しようね!」
「そしたら次は、ライト君の学園話も聞かせてね!」
「またねー!」

 ライトは慌てて挨拶をして、レオニスが飲食代の支払いを済ませてから共に冒険者ギルド総本部に向かう。
 龍虎双星のメンバーも、それぞれライトに声をかけて別れの挨拶とともに二人を見送る。

 時刻は午後の19時半を回った頃。夜の帳が音も立てずに、静かに舞い下りてくる。
 ライト達は冒険者ギルド総本部の転移門を使い、ディーノ村からカタポレンの森への帰路に就くのだった。




====================

 ライトの言う職業については、第24話「ステータスと職業」を読み返していただければ思い出していただけると思います。
 というか、よくよく見返したら30話も昔に出した話でした。昔話参照推奨とは、何とも申し訳なく……ゴニョゴニョモニョモニョ。

 そして今回のレオニス。先輩冒険者としていつもよりしっかりとした、それはもう金剛級冒険者と呼ばれるに相応しい、頼もしい熟練者の顔をしています。後輩の若手パーティーの前でくらい、多少は格好つけても許されるでしょう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

黄金の魔導書使い  -でも、騒動は来ないで欲しいー

志位斗 茂家波
ファンタジー
‥‥‥魔導書(グリモワール)。それは、不思議な儀式によって、人はその書物を手に入れ、そして体の中に取り込むのである。 そんな魔導書の中に、とんでもない力を持つものが、ある時出現し、そしてある少年の手に渡った。 ‥‥うん、出来ればさ、まだまともなのが欲しかった。けれども強すぎる力故に、狙ってくる奴とかが出てきて本当に大変なんだけど!?責任者出てこぉぉぉぃ!! これは、その魔導書を手に入れたが故に、のんびりしたいのに何かしらの騒動に巻き込まれる、ある意味哀れな最強の少年の物語である。 「小説家になろう」様でも投稿しています。作者名は同じです。基本的にストーリー重視ですが、誤字指摘などがあるなら受け付けます。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

ゴミ捨て場領主のクラフト無双 ~最弱魔法【分解と合成】で領地を黄金郷に変えたら、俺を見下していた大貴族令嬢たちが掌を返してすり寄ってきた件~

namisan
ファンタジー
東西南北の大貴族から「毒の川」「凶暴な魔獣」「莫大な借金」を押し付けられ、王国の『ゴミ捨て場』と化したローゼンベルク領。 父と兄を謀殺され、その絶望の領地を押し付けられた無能貴族のアークは、領地の分割を企む高慢な令嬢たち(王女、公爵令嬢、姫将軍など)に嘲笑われていた。 だが、彼には現代の知識と、隠された最強チート能力があった! 触れたものを瞬時に素材に戻し、全く別のモノに作り変える神の御業――【分解と合成】。 「毒の川」を分解して『超高価な宝石と純水』へ! 「魔獣の死骸」と「瓦礫」を合成して『絶対に壊れない防壁』へ! 借金取りには新素材を高値で売りつけ、逆に敵の経済を支配していく。 圧倒的なクラフト能力で、瞬く間にゴミ捨て場を「無敵の黄金郷」へと作り変えていくアーク。 己の敗北を悟り、震え上がる悪徳貴族と高慢な令嬢たち。 さらに、アークの圧倒的な知略と底知れぬ実力は、気高い令嬢たちの本能に深く刻み込まれていく。 「どうか、私をあなたの手駒としてお使いください……っ!」 プライドを完全にへし折られた最高位の美少女たちは、いつしかアークの与える『恩恵』なしでは生きられないほど、彼に絶対の忠誠と依存を誓うようになっていく――。 最弱のゴミ捨て場から始まる、爽快クラフト内政&ざまぁファンタジー、堂々開幕!

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

処理中です...