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三十五
しおりを挟む「バドさんありがとうございました」
ユグナはお礼をいい一礼した。
「また来てくれよ!」
気さくな笑顔でバドさんは見送ってくれた。
ユグナは俺の手を握り市場の人混みをかき分けるように歩いた。
……なんだかかっこいい…
右に見える一番奥の店でユグナは止まった。
「ヴェリさん!お久しぶりです」
ユグナはその店の初老女性に声をかける。
ちょっと鋭い目つきをしているけれどユグナを見る目は温かい。
あれ…この人……誰かに似てる……まさか
「凪様紹介しますね。こちらはリギアのお母さんのヴェリさんです」
やっぱり……そんな気がした
「ゆーちゃん元気にしてた? 愛想の悪いうちの息子がゆーちゃんを困らせているんじゃないかって心配でね」
「リギアさんにはいつも助けられてばかりです」
「あら?そう?あの子なりに頑張ってるのね」
ゆーちゃんって呼ばれているんだ…俺だって呼びた……いやなんでもない。
にしても…リギアの性格とは百八十度違う……
明るく温厚そうな人だ
「あ!そうそう…ゆーちゃんが頼んでいたコレ届いてるよ」
「ありがとうございます!嬉しいです!」
「そういって貰えて良かったよ!…でもそれ想い人に贈るものでしょ? ……もしやゆーちゃん…」
少女のように目をきらきらされるヴェリさんに対してユグナはいたずらっぽく微笑む。
「これは私の大切な人に贈るんです…彼の誕生日に」
照れを隠しきれない様子のユグナにヴェリさんははしゃぎだす。
「ちょっと…!ちょっと!ゆーちゃんがそんな表情するってよっぽど好きな人なんじゃないの!」
ヴェリさんは両手を頬に当てなんだか嬉しそうだ。
……ユグナさんの大切な人って誰?
……………。でもそっかユグナさんはあくまでも俺の執事。
執事として俺に優しくしてくれているだけ
そう…そう……そうなんだ
俺は自分にそういいきかせる
でもなぜだか視界が潤む。
悲しくて悲しくてどうしょうもない。
「…凪様?」
ユグナは俺の顔を覗こうとしたのでとっさにそらす
「………凪様…楽しくありませんか?」
ユグナは心配そうに俺を見つめる。
違う…違う…俺はただ…………
ぐっと手を握りしめ俺はユグナを見る。
「………ユグナさんの大切な人って……誰なんですか?」
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