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第九話 あの日の真相

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「あの者…いいや…彼はずっと私のそばで護衛にあたってくれていた女兵隊の一人だった。食事も睡眠も彼と共にした。

…詳しい事情は知らないが…女兵隊でなければいけない事情があったのだろう…

……不覚にも見てしまったのだ着替えているところを…

彼に胸はなかった。代わりに胸板が厚かった。

小さな体で細い手で敵と必死に戦ってくれた…私の命を狙おうとする者の前に率先して立ち、私を…彼の軍隊達を守り抜いたのだ…彼は…

……あの日もそうだった…王宮の大切な行事である祭り事に彼は赤い衣装を身に纏い美しい女の姿で現れた…

どの女兵士も同じ格好をし白粉をしているのだけれど…彼はひときわ目立って美しかった…

…赤い女神を見ているようだった…今すぐ駆け寄って抱きたい…私のものになってほしい…そんな愚かな気持ちも抱いた…
 その美しさに見惚れていたさなか、彼は何者かにより胸をさされたのだ

私はすぐに駆け寄った…医官を呼び救命に尽力した。

…彼が目を開けた時…私は歓喜した。そこで私は自分の気持ちに気づいた。

もう…私の為に戦って身を削ってほしくない…そばにいてほしい

…もっと幸せになってほしい……大好きな人だから…

違反ではあるが気づかれなければ良い…そう思った私は彼に側室に来て欲しい旨を伝えたのだ…

……もしも彼が私の元から離れる事を望むのであればそれで良い……


…彼のようなかけがえのない存在を失いたくない…
……愛おしく可愛い彼が……私は好きだ…

同情? そんなものですませないでほしい…

私と彼は…親友を超えた大切な仲なのだ」

溢れ出る想いを吐き出すように王子はルイナ妃に伝える。

ルイナ妃の顔は真っ青になり言葉が出ない様子であった。
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