上 下
11 / 28

第十一話 甘い記憶

しおりを挟む
(…………あ……そうか……そうか 俺は王子様の兵士だった…!!)

長廊下で話をひと通り聞き終えた俺の脳内にあの時の記憶が蘇る。

 

料理を作るたび 美味しそうに食べてくれた。

大敵に立ち向かうたび 心配し手を握ってくれた。

寝る時 そばにいてくれ 頭を撫でてくれた。

心地よく幸せな記憶が蘇る。
 
忘れたくなかったはずの記憶なのに…


あの日、俺は舞った。

大好きな人のために。

普段着ることのない高貴な服を着て化粧をして。

しなやかに美しく。

俺だけを見てほしかった…

温かな瞳で…

「頑張ったな」と言って褒めてほしかった…

低く甘い声で…

……その後の記憶は無い



…その裏で民の血は流れたのだろうか…

俺と王子が生活を共にする間、命を落とす者はいたのだろうか…


甘い記憶と悲しい運命に涙を流す。



……好きな人と幸せになることは叶わないのだろうか……


しおりを挟む

処理中です...