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第十二話 幸せの時間(R15)

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王子は長廊下に視線を向ける

そこには愛おしい人が立っていた。

「……聞いていたのであろう。」

王子は俺の手をぎゅっと両手で握り

「ついて来て欲しい」

と言いルイナ妃を置いて居室を後にした。


白い手が俺の頬に伸びる。驚き顔をそらそうとする俺の頬を追いかけるように手を伸ばす。
温かい体温が全身に安らぎを与えてくれる。

王子は親指で俺の唇に触れた。

「……こんなにも好きでたまらないのに…」

そう言うと王子は俺の唇に口づけをした。

溶けてしまいそうだった…もう溶けてしまってもいいと思った…

こんなにも俺のことを大切に想ってくれる王子と二人で生きていきたい… 

王子は背後に回り俺を引き寄せ、ぎゅーっと抱きついた。

肩に顔を埋め子どものような表情で俺を見つめる。

………可愛い……俺も…王子が…好きで…たまらない

溢れそうになる感情を抑えるのに必死になった。

思わず王子の頬に手を伸ばしそうになり止める。

しゅんとなった王子の表情に心が揺さぶられる。

気持ちを抑えられなくなり王子の頬に手を触れた。

天使のように微笑む王子が可愛らしい…

……許されないかもしれない…地位も…運命も…それでも俺は王子を愛したい


ぎゅーっと抱きつくと王子は顔を真っ赤にした。

……移りそうになる……

しばらく二人はお互いを見つめ抱き合っていた。
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