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第16話 増える蓄えとその使い方
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何枚かの金貨を用意できるほどの銀貨が貯まった!
あれから数日、ポーションを作っては、単語を教わる日々を過ごした。お姉さんの面倒見が良すぎて頼りきりだ。お姉さんの名前はカミラと言うそうだ。椿の発音は難しいらしく、ツェヴァーキみたいになってしまう。椿って英語でなんて言ったかな、カメリアだったかな。外国語読みに言い換えて貰おうかと思ったが、カミラと被るな……
ポーションは1日に30個ほどしか引き取ってくれないようだ。色の違う方は材料が少ないようで、教わった日から新しく作ることはなかった。二人掛かりで消費の激しいヨモギは、自分で何度か採取に行った。門を通るとき、ずいぶんと門番に心配されてしまった。そうしてヨモギを持ち帰ると、一人で街の外に出たのかと、お姉さんにも心配される。そう言えば、材料の採取は業者に頼んでいるくらいだ、外は危険なのかもしれない。例の冒険者ギルドを利用する案件なのかな? ああ、ゴブさんは良いとして、獣も居たな。アレから、どちらにも遭遇していないが。たしかに、軽率だったかも……
そうそう、ずっと気にしていた、服を半ば奪ってきたあのお店に行こうと思うのだ。
もし城からお金が出ていなかった場合、この服が高価であった場合、あの剣がなぜ店にあるのかと王族に問われた場合、考え出すと色々と迷惑を掛けている可能性がある。いや、かなり迷惑を被っているはずだ。一度はきちんと訪れて、必要があれば、多分、必要だろうけど、お金を支払いたかった。
とある昼下がり、いつものように身振り手振りでカミラに意思表示する。
「『服』『銀貨』『お店』、チャリチャリを払いに行ってくる」
分かったような、分からなかったような、いつも気だるいカミラの曖昧な頷きを確認してから外に出た。
大通りまで10分、そこから噴水広場まで更に10分ほど、天気のいい日は通りを歩く人達もどこかご機嫌だ。
ここでは、隣接する家々と同じ間隔で街路樹が植えられている。自動車など走っていないこの世界の空気は、天気に合わせた匂いがするのだ。まあ、今日は少し埃っぽいかな。
変わらぬ佇まいの店に安心してから、あの時と同じように、ズバッと店に入った。
店長さんがこちらに気づき、困ったような表情をする。店員達には明らかに敵意や、怒りの表情が浮かんでいる。またタカリに来たと思われたろうか? しかし、今日は目的があってやってきたのだ。堂々と店長さんに近づいた。
「『服』の『銀貨』は大丈夫でしたか?」
城の方向を指差し、剣を持つような形に作った手の甲を指差し、最後に吊るすように両肩で服を摘んで見せた。まだお金と言う単語が分からないので、『銀貨』と貨幣の名前を代用する。買い物のときによく聞いた表現だ、間違いないだろう。
「※※※、※※※※※※※。
※※※※※※※※※※※、※※※※※※※※※※」
ため息を付くように顔を伏せて、ふるふると首を振る。どうやら思った通り、悪い方の予感が当たったのだろう。すぐに手持ちの巾着袋を取り出して店長に差し出した。
驚いた表情に変わったが、すぐに察してくれた。店員の少し年嵩の子を呼び、袋の中身のお金を数え始めた。
しばらくして椿を見てふるふると首を振る店長さん、どうやら足りなかったらしい。
「幾ら『大銀貨』『金貨』足りなかったでしょうか? 『いいえ』の『1』『2』『3』を教えてください」
話しながら、机の上の銀貨を巾着袋から遠ざけるように指で離し、何枚か積んでみせる。
察しの良すぎる店長さんはすぐ理解してくれたようだ。持ち込んだのは金貨2枚と大銀貨が5枚だ。店長さんは金貨1枚と、別に用意した大銀貨も加えた10枚ほどを積み上げた。この服は、総額で金貨4枚強と言う訳か、やはり高級品だったらしい。
手持ちの薬草を全部ポーションに変えてカミラに売ってきてもらえれば数日で貯まる。
自分の服を眺めている椿に、店長さんは首を降って見せる。椿の着ている外套を摘み、金貨を3枚積んで見せる。なるほど、この外套が高いのか…… 金貨3枚…… 去り際に適当に持ち出したのだ。さぞかし焦っただろうな……
空になった巾着袋を手に取り、新たにお金を詰め込むような仕草をして見せる。そうして店を出た。伝わったのだろう、誰も追いかけてこない。姿が見切れる前に、店の中の店長さんに手を振ると、曖昧に微笑んでくれた。
このまま採取に出て、帰ったらポーションを量産だ。
あれから数日、ポーションを作っては、単語を教わる日々を過ごした。お姉さんの面倒見が良すぎて頼りきりだ。お姉さんの名前はカミラと言うそうだ。椿の発音は難しいらしく、ツェヴァーキみたいになってしまう。椿って英語でなんて言ったかな、カメリアだったかな。外国語読みに言い換えて貰おうかと思ったが、カミラと被るな……
ポーションは1日に30個ほどしか引き取ってくれないようだ。色の違う方は材料が少ないようで、教わった日から新しく作ることはなかった。二人掛かりで消費の激しいヨモギは、自分で何度か採取に行った。門を通るとき、ずいぶんと門番に心配されてしまった。そうしてヨモギを持ち帰ると、一人で街の外に出たのかと、お姉さんにも心配される。そう言えば、材料の採取は業者に頼んでいるくらいだ、外は危険なのかもしれない。例の冒険者ギルドを利用する案件なのかな? ああ、ゴブさんは良いとして、獣も居たな。アレから、どちらにも遭遇していないが。たしかに、軽率だったかも……
そうそう、ずっと気にしていた、服を半ば奪ってきたあのお店に行こうと思うのだ。
もし城からお金が出ていなかった場合、この服が高価であった場合、あの剣がなぜ店にあるのかと王族に問われた場合、考え出すと色々と迷惑を掛けている可能性がある。いや、かなり迷惑を被っているはずだ。一度はきちんと訪れて、必要があれば、多分、必要だろうけど、お金を支払いたかった。
とある昼下がり、いつものように身振り手振りでカミラに意思表示する。
「『服』『銀貨』『お店』、チャリチャリを払いに行ってくる」
分かったような、分からなかったような、いつも気だるいカミラの曖昧な頷きを確認してから外に出た。
大通りまで10分、そこから噴水広場まで更に10分ほど、天気のいい日は通りを歩く人達もどこかご機嫌だ。
ここでは、隣接する家々と同じ間隔で街路樹が植えられている。自動車など走っていないこの世界の空気は、天気に合わせた匂いがするのだ。まあ、今日は少し埃っぽいかな。
変わらぬ佇まいの店に安心してから、あの時と同じように、ズバッと店に入った。
店長さんがこちらに気づき、困ったような表情をする。店員達には明らかに敵意や、怒りの表情が浮かんでいる。またタカリに来たと思われたろうか? しかし、今日は目的があってやってきたのだ。堂々と店長さんに近づいた。
「『服』の『銀貨』は大丈夫でしたか?」
城の方向を指差し、剣を持つような形に作った手の甲を指差し、最後に吊るすように両肩で服を摘んで見せた。まだお金と言う単語が分からないので、『銀貨』と貨幣の名前を代用する。買い物のときによく聞いた表現だ、間違いないだろう。
「※※※、※※※※※※※。
※※※※※※※※※※※、※※※※※※※※※※」
ため息を付くように顔を伏せて、ふるふると首を振る。どうやら思った通り、悪い方の予感が当たったのだろう。すぐに手持ちの巾着袋を取り出して店長に差し出した。
驚いた表情に変わったが、すぐに察してくれた。店員の少し年嵩の子を呼び、袋の中身のお金を数え始めた。
しばらくして椿を見てふるふると首を振る店長さん、どうやら足りなかったらしい。
「幾ら『大銀貨』『金貨』足りなかったでしょうか? 『いいえ』の『1』『2』『3』を教えてください」
話しながら、机の上の銀貨を巾着袋から遠ざけるように指で離し、何枚か積んでみせる。
察しの良すぎる店長さんはすぐ理解してくれたようだ。持ち込んだのは金貨2枚と大銀貨が5枚だ。店長さんは金貨1枚と、別に用意した大銀貨も加えた10枚ほどを積み上げた。この服は、総額で金貨4枚強と言う訳か、やはり高級品だったらしい。
手持ちの薬草を全部ポーションに変えてカミラに売ってきてもらえれば数日で貯まる。
自分の服を眺めている椿に、店長さんは首を降って見せる。椿の着ている外套を摘み、金貨を3枚積んで見せる。なるほど、この外套が高いのか…… 金貨3枚…… 去り際に適当に持ち出したのだ。さぞかし焦っただろうな……
空になった巾着袋を手に取り、新たにお金を詰め込むような仕草をして見せる。そうして店を出た。伝わったのだろう、誰も追いかけてこない。姿が見切れる前に、店の中の店長さんに手を振ると、曖昧に微笑んでくれた。
このまま採取に出て、帰ったらポーションを量産だ。
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