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1章 街へ

6 公爵家では(ファーレン視点)

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(ファーレン視点)


 あの無能が出ていって1週間、、の顔を見る必要がなくなって気分がいい。

 優秀な私と美しいカトレアから、なぜあんな無能な女が生まれたのか……もう一人の娘ミラは、学園での成績も上位だというのに……!

 さて、使用人たちに任せていた仕事の進み具合の確認でもしておくか。
 カトレアとミラとの時間を仕事ごときで無駄にするわけにはいかないから、使用人たちに全て任せているが、確認くらいはしてやらないとな。

 まぁ、今まで問題なくやっていたのだから大丈夫だろうが……。

 そう思いながら、普段は入らない執務室に入ると私の机の上は書類で溢れていた。       

 なぜだ!?
 せっかく公爵家の運営に関する仕事まで任せてやっているのに仕事をしないとは!!


「───おい! 誰かいるか!?」 


「は、はい、旦那様………いかがなさいました?」

 少しして、使用人の一人が慌てて執務室に駆け込んできた。
 こいつは執事長だから、この原因も把握しているだろう。

「なぜ、こんなに書類が貯まっているんだ!?」

「……心当たりはございませんか?」

「あるわけがないだろう!? せっかく栄誉ある仕事を与えてやっているのに怠けるとは………!」

「本当に、あの方の才能にお気付きでなかったのですね……」

「………あの方とは誰だ?」

「もちろん、先日この屋敷を出ていかれたリーナお嬢様ですよ」

「?はっ、 あんな無能に才能なんてあるわけないだろう!!」


「───あなた? 大きな声を出して、、どうかなさったの?」

「あぁいや、カトレア。何でもないさ」

 カトレアは年を重ねても美しさが衰えない。
 カトレアが来てくれたお陰で落ち着いた……。
 そうだ、あの無能に公爵家の運営なんて出来るわけがないんだ。

「それより、どうしたんだい?」

「今、第二皇子殿下のウィリアム様がいらっしゃったのよ……どうします?」

「何、ウィリアム殿下が……?とりあえず、応接室にお通しなさい。私もすぐに行くと」

「分かったわ。それより、ミラを会わせて見ません?」

 ミラをか……。
 ミラは最近、あの無能の婚約者だったレクト公爵家の次男と親しくしているみたいだが、美しいミラなら皇子妃も夢じゃない……!

 皇子がミラを気に入ったら、カトル公爵家の入り婿になっていただくのもいいかもしれんな……。
 第二皇子のウィリアム様は容姿が優れ、学園では3年間常に3本の指に入っていた程優秀だと聞いた。

「ミラも応接室に呼びなさい」

「分かりました」


* * *


「ウィリアム様! お待たせして申し訳ない、、本日はどのようなご用件で?」

「カトル公爵、急に来てしまい申し訳ありません……。リーナ嬢とレクト公爵令息が婚約破棄をされたと耳にしたのですが、まことですか?」

 ん? なぜあの無能のことを……?
 確かに、が出ていって直ぐ、レクト公爵家に婚約破棄を願い出たが、、レクト公爵もその家族も皆喜んでいた。
 何か問題があったのか?

が婚約破棄したのは事実でございます。……失礼ですが、ウィリアム様はなぜ、あの無能をご存知なのでしょう?」

「私は学園でリーナ嬢の同級生で、そこで知り合いましたが、、リーナ嬢が無能? リーナ嬢は大変優秀で有能な方ですよね?」

 ? ふむ……執事長といいウィリアム様といい、なぜあんな無能を優秀などと言うのか……。

「いえいえ、あの無能は学園での成績が家族に言えない程の悪さだったはずです」

「リーナ嬢の成績が悪い?とんでもありません! 彼女は学園で3年間、ずっとトップの成績でした。 それも全ての科目で1位を取り続けていましたよ?」

 !?……あの無能がトップだと………?
 それなら何故、家族に何も言わなかったんだ!?


 ───コンコンコン、、ガチャ


「お父様? ミラです。お呼びとのことですが……」

「おぉ、ミラ! ウィリアム様、ご紹介します。このが我が家の自慢の娘、ミラでございます」

 そうだそうだ、あの無能なんてどうでもいいではないか。
 今はミラとウィリアム様だ!

「……初めましてカトル公爵令嬢、、第二皇子のウィリアムと申します」

 ミラは相変わらず可愛らしい……ウィリアム様もミラを気に入るだろう。
 本当にあの無能な陰険女とは大違いだ!

「まぁ、第二皇子殿下!? 初めまして、カトル公爵家の次女、ミラです」
 
「それで……リーナ嬢はどちらに?」

「あの醜女ですか? なら、1週間くらい前に出ていきましたよ? それよりもウィリアム様、私とお話ししましょう?」

「出ていった!?」

「左様でございます。それよりも、ウィリアム様は婚約者がいらっしゃいませんでしたね? ミラなんてどうです? 可愛らしい娘でしょう?」

「いえ、リーナ嬢が出ていったとは、、どういうことです!?」

「ウィリアム様?」

 なんなんだ、ミラが戸惑っているではないか!
 私がせっかく、美しいミラを薦めてやったというのに、、興味も持たないとは!!

「……申し訳ありません、カトル公爵。急用を思い出したので、失礼します」

 
 ────パタン


「──お父様……どういうことですか?」

「すまんな、ミラ…私にも分からん」

「それよりもお父様! 私、ウィリアム様と結婚したいわ! あんなに容姿が優れた方、見たことがないもの!」

 そうだな、ウィリアム様は可愛らしいミラに劣らない美貌……二人が並び立てば、さぞ華やかだろう。

「わかった……! 私がウィリアム様にお前を婚約者にしてくださるよう、頼んでみよう!」



~~~~~~~~~~~~~~

 読んでくださりありがとうございます
 ("⌒∇⌒")

 補足ですが、リーナの父、ファーレンはリーナの本来の髪色や容姿を忘れていません。
 なぜミラばかりを可愛がるのかは……今後のお楽しみ(?)ということで(^ω^)

 次の話はウィリアム視点になります。



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