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実 version
公園と遊園地 5
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「…俺は、弁当持ってきた。」
ハンバーガーショップの店員に聞こえないよう、小声で、しかもどこか得意気に誠が囁く。
この遊園地は、本来、飲食物の持ち込みは禁止されているのに、真面目な誠が決まりを破るとは。
「…内緒、な?」
誠は、人差し指を口元にあて、いたずらっ子のように実を見て、片目を瞑って見せた。
その仕草が最高に可愛くて、実の胸は甘く痛む。
「…まぁちゃん、彼女は?」
トレーを持って、誠とともにテラスの席に移動しながら実は尋ねた。
デートの最中のはずなのに、誠が一人でいる事が気になった。
「ああ、トイレ。」
女性の化粧室は長い。
誠は、その待ち時間に実を見つけ、助けに来てくれたのだ。
「俺の事、いつから気づいてた?」
「電車に乗った頃、かな。」
そんなに早くから気づかれていた事に驚き、自分に尾行の才能はない、と、思い知った実である。
落ち込みを隠し切れない実に、誠は苦笑して種明かしをして見せた。
「何となく、本当に何となく…なんだけど、みのが近くにいると、わかる気がするんだ。
これも、双子の不思議ってやつかな。」
「え?!」
思いがけない事を言われて実は驚き、実が驚いた事に誠は困惑した。
…初耳だった。
誠にそんな能力があるなんて。
実にはない能力。
そんな能力が実にあったなら、すぐに誠を見つけられたのに。
「みの、限定だけど、ね。」
『実限定』は嬉しいが、今日みたいな場合には、恨めしく思う。
「…怒ってる?」
おそるおそる、上目遣いに誠を見る。
「…いまさらここまで来て怒ったって仕方ないし。
さっさと食べな。冷めたら不味いぞ?」
うん、と実は素直に頷いて、ハンバーガーにかぶりつく。
夢中で食べる実を、誠は優しく微笑んで見つめていた。
「一個じゃ足りないみたいだな。」
誠は財布から千円札を三枚取り出して、実に握らせる。
「まぁちゃん?」
「金、無いんだろ?せっかく来たんだから、これで遊べよ。」
誠は立ち上がり、彼女のところに戻ろうと踵を返す。
「まぁちゃんっ!」
…行かないで!
…なんて、言えるわけがない。
「ん?」
誠が振り向く。
「…あの、ごめん。邪魔、し、て。」
「みのを邪魔と思った事なんか無いよ。じゃあ、家でな。」
去って行く誠を、実は黙って見送るしかなかった。
ハンバーガーショップの店員に聞こえないよう、小声で、しかもどこか得意気に誠が囁く。
この遊園地は、本来、飲食物の持ち込みは禁止されているのに、真面目な誠が決まりを破るとは。
「…内緒、な?」
誠は、人差し指を口元にあて、いたずらっ子のように実を見て、片目を瞑って見せた。
その仕草が最高に可愛くて、実の胸は甘く痛む。
「…まぁちゃん、彼女は?」
トレーを持って、誠とともにテラスの席に移動しながら実は尋ねた。
デートの最中のはずなのに、誠が一人でいる事が気になった。
「ああ、トイレ。」
女性の化粧室は長い。
誠は、その待ち時間に実を見つけ、助けに来てくれたのだ。
「俺の事、いつから気づいてた?」
「電車に乗った頃、かな。」
そんなに早くから気づかれていた事に驚き、自分に尾行の才能はない、と、思い知った実である。
落ち込みを隠し切れない実に、誠は苦笑して種明かしをして見せた。
「何となく、本当に何となく…なんだけど、みのが近くにいると、わかる気がするんだ。
これも、双子の不思議ってやつかな。」
「え?!」
思いがけない事を言われて実は驚き、実が驚いた事に誠は困惑した。
…初耳だった。
誠にそんな能力があるなんて。
実にはない能力。
そんな能力が実にあったなら、すぐに誠を見つけられたのに。
「みの、限定だけど、ね。」
『実限定』は嬉しいが、今日みたいな場合には、恨めしく思う。
「…怒ってる?」
おそるおそる、上目遣いに誠を見る。
「…いまさらここまで来て怒ったって仕方ないし。
さっさと食べな。冷めたら不味いぞ?」
うん、と実は素直に頷いて、ハンバーガーにかぶりつく。
夢中で食べる実を、誠は優しく微笑んで見つめていた。
「一個じゃ足りないみたいだな。」
誠は財布から千円札を三枚取り出して、実に握らせる。
「まぁちゃん?」
「金、無いんだろ?せっかく来たんだから、これで遊べよ。」
誠は立ち上がり、彼女のところに戻ろうと踵を返す。
「まぁちゃんっ!」
…行かないで!
…なんて、言えるわけがない。
「ん?」
誠が振り向く。
「…あの、ごめん。邪魔、し、て。」
「みのを邪魔と思った事なんか無いよ。じゃあ、家でな。」
去って行く誠を、実は黙って見送るしかなかった。
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