可愛いものをより可愛くする祝福

大森deばふ

文字の大きさ
11 / 54

魔力チートはありません

しおりを挟む
「デイジー、何処でそんな言葉を覚えたんだ……」
 父さまがわなわなと震えている。『イカれた』は、貴族令嬢的にはアウトだったらしい。高祖母さまに憤るあまり、令嬢モードに言葉を変換する前に心の声がするっと洩れてしまってた。
「街に出た時にでも聞きかじったのかしら」
 母さまが頬に手を当てて考え込む。確かに屋敷内では聞かない言葉である。
「はい、母さま、そうかもです」
 私もその路線で誤魔化そうとしたのだが。
「そうかな、完全に意味が分かった上で的確に使っていただろう」
 ジスカール卿が楽しそうに突っ込んでくる。その通りだけど見逃してほしかった。
「そうですね、まだ三歳なのに頭のいい子ですね」
 御子息は褒めてくれる。
 うん、三歳児基準ならいい線いくと思う。私の中身相当の大人と比べるとダメダメだけどね!




「話を戻すが、この祝福を無理に剥がすのは勧められないな」
 ジスカール卿が、かなり前まで話を戻した。
「今は体がもたないということでしたが、大きくなってからなら可能ですか?」
「それも勧められない。魔力的な障害が出る可能性が高い」
「そんなっ……」
 父さまは顔を覆ってしまう。私には魔力的な障害とやらが何か分かんないけどね。
「悲観する必要はないよ。他の文献も当たってみたが、子供を対象としているこの手の魔法は時間経過で徐々に弱まって行って、成人する頃には自然に解けることが多いとある」
 デイジー三歳、成人まであと……あれ、この国の成人って何歳だろ。
「成人まで十五年もありますが?」
 父さまの言葉から計算すると、成人年齢は十八歳のようだ。
「祝福の発動を阻害する魔術式は作れるから、どうしても猫になってはいけない場面はそれで対応するといい」
 一応、解決策はあるようだ。さっき、この呪いじゃなくて祝福の魔術式は読み取れなかった気がするけど、阻害するだけなら可能なのかな?


「ずっと猫にならないようには出来ないのでしょうか?」
「出来るか出来ないかでいえば、出来るけれど」
 ジスカール卿はそこでいったん言葉を切って、首を横に振る。
「魔力が安定する十歳くらいまでは、必要最低限の利用にしたほうがいいね。ずっと阻害していると、本来なら魔術師になれるくらいの魔力量を持てたのに、それを得られないなんてことになりかねない」
 あれ、私、魔術師になれるかもしれないって話?
 異世界転生したからには、魔法で無双しちゃったりするのがお約束?
「まあ、ジスカール卿、デイジーにはそんなに魔力が?」
 母さまも同じ疑問を覚えたらしい。
「いわゆる魔力があると判定される中では下の方、という程度かな」
 転生者なのに、魔力チートはついていないらしい。おかしい。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

行き場を失った恋の終わらせ方

当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」  自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。  避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。    しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……  恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

えっ私人間だったんです?

ハートリオ
恋愛
生まれた時から王女アルデアの【魔力】として生き、16年。 魔力持ちとして帝国から呼ばれたアルデアと共に帝国を訪れ、気が進まないまま歓迎パーティーへ付いて行く【魔力】。 頭からスッポリと灰色ベールを被っている【魔力】は皇太子ファルコに疑惑の目を向けられて…

処理中です...