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春、各々が輝く部活動
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いよいよ放課後となり、迎えた部活動説明会。新入生およそ四百人が体育館に集合し、早く始まらないのか、いつ始まるのかとソワソワしている。新入生は皆手元にA5サイズのパンフレットを持っており、赤なり青なりのマーカーで、自分の興味のある部活にぐるぐるとマークをつけていた。
水泳部の出番は後ろから三番目。聞き手の集中力が最も低下するタイミングでの発表。嫌なプログラムだなと思いつつも、もう後戻りはできない緊張感に頬を引き攣らせることしか出来なかった。固い顔をしている自覚はあったが、自分が思っている以上に緊張が顔に表れていたようで、隣で咲良と葵が小声で「大丈夫」と囁き、小さくガッツポーズをしてくれた。…心強い。良い仲間に恵まれているのだと、改めて実感した。
緊張感の中いよいよ始まった部活動説明会。舞台袖に控えている他の部活も、緊張で「始まっちゃった!」「やばいやばい!」「コード!どこ!?」などと小声でワタワタとしている。どれだけ準備を重ねても予想外の事が起こってしまうのが世の常。発表者達はみな必死に走り回って最終調整をしている。そんな舞台袖をチラチラと伺いながら、司会の女子生徒がマイクのスイッチを入れた。
「皆さんこんにちは!改めまして、浜波高校へのご入学、誠におめでとうございます!浜波高校は勉強だけでなく部活動にも力を入れており、どの部活も魅力がいっぱいです!運動部と文化部、合わせて二十三個もの部活があるので、どの部活に入るか迷ってしまいますよね~。今日の為に、各部活の先輩方が準備を重ね、それぞれの部活の魅力をぎゅぎゅっと詰め込んだ発表を用意してくれました!キラキラ輝く浜波高校ライフを送る為にも、最後まで聞いてくださると嬉しいです!宜しくお願いします!」
パチパチと拍手が鳴り響く。体育館の後ろからは指笛やヤジを飛ばす三年生がいらっしゃる。受験生で引退したとはいえ、自分の部活の発表を楽しみにしているのだろう。そんな三年生達の姿は、新入生達にとって初めての経験だったのだろう。八割型の生徒がチラチラと体育館の後方を気にしている。その姿の何と初々しい事か。
「まずは我が浜波高校といえば~…皆さんもご存知、チアリーディング部ですね!チア部の皆さん、宜しくお願いします!」
司会のアナウンスと共に、チア部の方々がバタバタと舞台に向かっている。浜波高校の野球部は県内指折りの強豪であり、その応援であるチア部にも毎年大勢の入部希望者が集まるのだ。現在の部員の数は総勢七十人以上。水泳部にも何人か恵んでほしいくらいの人数である。
----------------------------------------
………チア部の発表は圧巻だった。いや、チア部だけではない。その後に続いた他のどの部活も、今まで積み重ねてきた準備の成果を思う存分発揮しており、皆キラキラと輝いている。持ち時間の五分という短い時間で、自分の所属する部活を全力でアピールし、新入生にその魅力を訴えかけている。自分達も汗水垂らして必死に準備を重ねたというのに、どうしても他の部活の方が優れているように感じてしまう。
不安と緊張で、今朝と同じように頭がぐわぐわとしてしまう。それは隣にいる咲良と葵も同じようで、二人とも「大丈夫、うん大丈夫」と独り言のように呟き、拳をグッと強く握っている。そんな緊張感の中、司会のアナウンスが自分たちの番を告げた。
「軽音学部の皆さん、ありがとうございました!次は水泳部の皆さんです、宜しくお願いします!」
司会の生徒がそう言うと、葵は笑顔のまま頬を引き攣らせて、口角をピクつかせている。
「ウチまじで今ギロチンに並ぶ時の気分…公開処刑?これ死刑?」
「縁起でもない事言わない。咲良達は頑張ったんだから、平気。」
葵のテンションに対して、咲良は呆れたようにため息をついた。咲良はどんな時でも慌てず、常に肝が据わっている。流石は浜波の母。勝手にそう呼んでるだけだが。
咲良は学校から貸与したパソコンをカタカタと操作して、一つのファイルを選択した。その一つのファイルこそ、私達が汗水垂らして作った努力の結晶。
「…小夜、葵、プロジェクターの方は大丈夫そう?」
咲良が舞台袖で操作をし、私は葵と共に舞台裏からプロジェクターの操作をする。画角はピッタリ。大きすぎず小さすぎず、誰もが見やすい角度に調整したはずだ。
「準備OK、いつでも大丈夫。」
小声で合図を出すと、それを受け取った葵が咲良にグーサインを送る。すると咲良は無言で頷き、神妙な面持ちでマウスをクリックする。それを合図に二人で舞台袖へと引き上げる。手順はバッチリ。暗闇の中、ハンドサインを交えて遂行するこの作業は、何だかスパイにでもなったような気分にさせられる。舞台袖に移動する最中、何度も繰り返し聞いた動画が体育館中に響き渡る。
『………皆さんこんにちは、浜波高校水泳部、部長の天海咲良です。』
『副部長!檜山葵です!』
『会計の星野小夜です。』
『私達水泳部は、現在二年生三人だけで活動しています。後ろに広がる大きな室内プールを使って、年中泳いでいます。』
『泳げなくても大丈夫!!!浮き輪だって準備してるからね!』
『水泳が得意な人、そうじゃない人、どんな人でも大歓迎です。泳ぐ事に興味がある人はぜひ水泳部へ来て下さい。』
『ここからは、昨年の県大会の映像を見てもらいます。どうぞ。』
水泳部はこの場で紹介できる事が少ない。去年の夏に撮っておいた動画を編集して、それをプロジェクターで流して何とか発表している状態だ。イラストを咲良、動画編集を葵と私が勤めた素晴らしい作品だ。自分で言うのもあれだが、今見ても最高傑作としか言いようがないほど素晴らしい。それは二人も同じ気持ちなようだ。
「え、待ってウチら天才じゃない?Uチューバーになれんじゃない?」
「なってみる?」
「咲良までボケに回んないで、収集付かなくなる。」
今はまだ部活用ジャージを着て舞台袖に立って舞台を眺めているだけだが、動画が終われば新入生に水着姿を紹介する事となる。………先程葵も言っていたように、まるで処刑待ちの死刑囚のような気持ちにさせられる。
「マジ大丈夫、ウチら卍だから、いけるいける。」
「卍ってもはや死語…。」
「冷静に突っ込まないでよ咲良!こっちは緊張解してんだからさ!」
三人でわちゃわちゃと楽しく過ごした時間はあっという間に過ぎ、あんなに頑張って作ったはずの動画もあっけなく終わってしまった。そして動画の終了を合図に、水着の上から部活用ジャージを羽織った姿で、水泳部員三人は舞台に足を運ぶ事となった。
水泳部の出番は後ろから三番目。聞き手の集中力が最も低下するタイミングでの発表。嫌なプログラムだなと思いつつも、もう後戻りはできない緊張感に頬を引き攣らせることしか出来なかった。固い顔をしている自覚はあったが、自分が思っている以上に緊張が顔に表れていたようで、隣で咲良と葵が小声で「大丈夫」と囁き、小さくガッツポーズをしてくれた。…心強い。良い仲間に恵まれているのだと、改めて実感した。
緊張感の中いよいよ始まった部活動説明会。舞台袖に控えている他の部活も、緊張で「始まっちゃった!」「やばいやばい!」「コード!どこ!?」などと小声でワタワタとしている。どれだけ準備を重ねても予想外の事が起こってしまうのが世の常。発表者達はみな必死に走り回って最終調整をしている。そんな舞台袖をチラチラと伺いながら、司会の女子生徒がマイクのスイッチを入れた。
「皆さんこんにちは!改めまして、浜波高校へのご入学、誠におめでとうございます!浜波高校は勉強だけでなく部活動にも力を入れており、どの部活も魅力がいっぱいです!運動部と文化部、合わせて二十三個もの部活があるので、どの部活に入るか迷ってしまいますよね~。今日の為に、各部活の先輩方が準備を重ね、それぞれの部活の魅力をぎゅぎゅっと詰め込んだ発表を用意してくれました!キラキラ輝く浜波高校ライフを送る為にも、最後まで聞いてくださると嬉しいです!宜しくお願いします!」
パチパチと拍手が鳴り響く。体育館の後ろからは指笛やヤジを飛ばす三年生がいらっしゃる。受験生で引退したとはいえ、自分の部活の発表を楽しみにしているのだろう。そんな三年生達の姿は、新入生達にとって初めての経験だったのだろう。八割型の生徒がチラチラと体育館の後方を気にしている。その姿の何と初々しい事か。
「まずは我が浜波高校といえば~…皆さんもご存知、チアリーディング部ですね!チア部の皆さん、宜しくお願いします!」
司会のアナウンスと共に、チア部の方々がバタバタと舞台に向かっている。浜波高校の野球部は県内指折りの強豪であり、その応援であるチア部にも毎年大勢の入部希望者が集まるのだ。現在の部員の数は総勢七十人以上。水泳部にも何人か恵んでほしいくらいの人数である。
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………チア部の発表は圧巻だった。いや、チア部だけではない。その後に続いた他のどの部活も、今まで積み重ねてきた準備の成果を思う存分発揮しており、皆キラキラと輝いている。持ち時間の五分という短い時間で、自分の所属する部活を全力でアピールし、新入生にその魅力を訴えかけている。自分達も汗水垂らして必死に準備を重ねたというのに、どうしても他の部活の方が優れているように感じてしまう。
不安と緊張で、今朝と同じように頭がぐわぐわとしてしまう。それは隣にいる咲良と葵も同じようで、二人とも「大丈夫、うん大丈夫」と独り言のように呟き、拳をグッと強く握っている。そんな緊張感の中、司会のアナウンスが自分たちの番を告げた。
「軽音学部の皆さん、ありがとうございました!次は水泳部の皆さんです、宜しくお願いします!」
司会の生徒がそう言うと、葵は笑顔のまま頬を引き攣らせて、口角をピクつかせている。
「ウチまじで今ギロチンに並ぶ時の気分…公開処刑?これ死刑?」
「縁起でもない事言わない。咲良達は頑張ったんだから、平気。」
葵のテンションに対して、咲良は呆れたようにため息をついた。咲良はどんな時でも慌てず、常に肝が据わっている。流石は浜波の母。勝手にそう呼んでるだけだが。
咲良は学校から貸与したパソコンをカタカタと操作して、一つのファイルを選択した。その一つのファイルこそ、私達が汗水垂らして作った努力の結晶。
「…小夜、葵、プロジェクターの方は大丈夫そう?」
咲良が舞台袖で操作をし、私は葵と共に舞台裏からプロジェクターの操作をする。画角はピッタリ。大きすぎず小さすぎず、誰もが見やすい角度に調整したはずだ。
「準備OK、いつでも大丈夫。」
小声で合図を出すと、それを受け取った葵が咲良にグーサインを送る。すると咲良は無言で頷き、神妙な面持ちでマウスをクリックする。それを合図に二人で舞台袖へと引き上げる。手順はバッチリ。暗闇の中、ハンドサインを交えて遂行するこの作業は、何だかスパイにでもなったような気分にさせられる。舞台袖に移動する最中、何度も繰り返し聞いた動画が体育館中に響き渡る。
『………皆さんこんにちは、浜波高校水泳部、部長の天海咲良です。』
『副部長!檜山葵です!』
『会計の星野小夜です。』
『私達水泳部は、現在二年生三人だけで活動しています。後ろに広がる大きな室内プールを使って、年中泳いでいます。』
『泳げなくても大丈夫!!!浮き輪だって準備してるからね!』
『水泳が得意な人、そうじゃない人、どんな人でも大歓迎です。泳ぐ事に興味がある人はぜひ水泳部へ来て下さい。』
『ここからは、昨年の県大会の映像を見てもらいます。どうぞ。』
水泳部はこの場で紹介できる事が少ない。去年の夏に撮っておいた動画を編集して、それをプロジェクターで流して何とか発表している状態だ。イラストを咲良、動画編集を葵と私が勤めた素晴らしい作品だ。自分で言うのもあれだが、今見ても最高傑作としか言いようがないほど素晴らしい。それは二人も同じ気持ちなようだ。
「え、待ってウチら天才じゃない?Uチューバーになれんじゃない?」
「なってみる?」
「咲良までボケに回んないで、収集付かなくなる。」
今はまだ部活用ジャージを着て舞台袖に立って舞台を眺めているだけだが、動画が終われば新入生に水着姿を紹介する事となる。………先程葵も言っていたように、まるで処刑待ちの死刑囚のような気持ちにさせられる。
「マジ大丈夫、ウチら卍だから、いけるいける。」
「卍ってもはや死語…。」
「冷静に突っ込まないでよ咲良!こっちは緊張解してんだからさ!」
三人でわちゃわちゃと楽しく過ごした時間はあっという間に過ぎ、あんなに頑張って作ったはずの動画もあっけなく終わってしまった。そして動画の終了を合図に、水着の上から部活用ジャージを羽織った姿で、水泳部員三人は舞台に足を運ぶ事となった。
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