(完)約束嫌いな私がしてしまった、してはいけない約束

子を思う親の気持ち

夜も遅く仕事を終えた私は邸に戻ると妻のヴィクトリアが出迎えてくれる。

「ただいまヴィッキー。」

「お帰りなさいロビン。食事はとったの？」

「少しね。軽食でいいから何か食べたいな。」

「分かったわ。クラレンス、部屋に運んでもらって良い？」

「畏まりました、奥様。」

「遅くにすまないなクラレンス。」

「いいえ旦那様。すぐにご用意いたします。」

クラレンスは我が家の優秀な執事長だ。
恐らく部屋に戻ったら食事の用意が済んでいるのだろうな。

「ヴィッキー、今日はイオの所に行ったのだろう？様子はどうだった？」

「可愛いかったわよ。」

「ヴィッキー…私の言いたいことが分かっていて焦らさないでくれ。」

「ふふっごめんなさい。でも可愛いかったのは本当よ。あの子は磨けば光ると思うのよね。ただ本人にそういう事への興味が全くないのよね。」

そんな話をしながら歩いていると部屋に着く。
さすがクラレンスだ。

「今までの環境が環境だからな。ヴィッキー続きは食事をしながらでも良いかい？」

「構わないわ。それにしてもレナイト侯爵も、もう少し早く相談してくれていればと思ってしまうわ。」

「彼にも事情があったんだ。今の所は何もしてこないがイオの義母のキャサリン・レナイトはジェダイナ公爵の娘だ。ジェダイナ公爵の影響力は弱くなっているとはいえ油断は出来ないさ。なんせ孫を人質に取るような男だ。そのせいでレナイト侯爵も迂闊に動けなかったんだ。」

「それは分かっているけどイオちゃんを見ていたらね…」

「兄さんが言っていたがレナイト侯爵もかなり苦しんだらしい。イオの事を大切に思っているのに何も出来なかった…ともすれば姉のクリスティーン嬢とイオを天秤にかけてクリスティーン嬢をとったと思われても仕方ない状況だったからね。私がその立場だったらと思うとね…辛い判断をしたと思うよ。」

「そうよね。話を聞いていたのに、私ったらつい。ごめんなさい。」

「ヴィッキーがイオを可愛く思っているからだって分かっているから大丈夫だよ。それでヴィッキー、イオの様子はどうだった？」

「そうねぇ。端的に言えばこれから育つかもしれないって所かしら？」

「それは３人に対してかい？」

「現状ではエドに対しては兄の様に思っているのは間違いないわよ。エドとは恋愛には発展しないと思うわ。」

「ハルとダニーは？」

「安心できる人と刺激的な人だったらどっちに気持ちが揺れるかしら？」

「それは2人の事を比較して言っているのか？」

「そうねぇハルはイオちゃんが安心できる人。でも心を晒せる人になれるかは分からないわ。」

「ダニーは？」

「弟のように思っているけれどイオちゃんにとっては刺激をくれる人なのよ。」

「それは2人にとっても同じ事だと言えないか？」

「そうなのよ、ロビン！貴方もそう思う？きっとハルにとってもイオちゃんは落ち着く存在だと思うのよ。でもあの子が自分の気持ちを晒せないとダメなのよ。ダニーだって今まであの子が見てきた子とイオちゃんは全く違うと思うの。それがあの子にとっては新鮮な事だと思うのよ。」

「分かった、分かった。ヴィッキー落ち着け。私達はこれまで通りあの子達を見守ろうな。」

「そうね。でも、いざとなったら私は動くわよ。」

「ははっ！分かった、分かった。」

子供達を大切に思うヴィッキーが妻で本当に良かったと思った。