(完)約束嫌いな私がしてしまった、してはいけない約束

奏直

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イオの誕生日について② イオ視点

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私が自分の誕生日を祝ってもらうことに悩んでいるのをハル様が気付いて下さいました。
誰にも話せずどうしようかと思っていた事にハル様は気付いて下さったのです。
話しても良いでしょうか?ハル様のご好意に甘えて良いでしょうか?
ハル様が不意に握って下さった手を、縋りたくて思わず握り返してしまっていました。
でもはハル様はそのまま握っていて下さったので、もう少しいいかなと思って手を離すことはしませんでした…いえ出来なかったんです。

「…私の…私の誕生日は…お母様と約束した…最後の日でした。」

「お母さん?イオの本当のお母さん?」

「はい…私の5歳の誕生日にお母様は約束して下さいました…」

「約束?」

「はい。」

「ハル様はもう知っているかもしれませんが、私のお母様は無理心中を謀って亡くなりました。」

「うん。」

「私は道連れにされたはずなのに助かってしまいました。そのせいなのか分かりませんが幼い頃の記憶が曖昧だと最近気づきました。」

「記憶が?」

「最初は私の願望?なのかと思っていましたが、最近だんだんと鮮明に思い出せるようになってきたんです。まだ、お母様と過ごした日々を少しだけですが…記憶の所々にお父様やお義姉様がいらっしゃるんです。私はお母様が亡くなるまでは幸せに過ごしていたのではないかと…思うようになってきたんです。それこそ願望なのかもしれませんが…」

「記憶が曖昧ならありえるんじゃないか?恐らくだけどイオの記憶は辛い事があったからという理由の他にお義母さんに植え付けられた記憶もあるんじゃないか?」

「お義母様に?」

そんな事があるんだろうか?もし私にも家族で過ごした幸せな日々の記憶があるなら…そう期待しても良いのだろうか?

「まだ可能性の話だけどね。あぁ話がそれたね。続けて。」

「はっ、はい。えっと…それでお母様が亡くなる数日前に私の誕生日があって、その日お母様は約束して下さったんです。

『これからも愛しているわ。これからもずっと一緒よ。来年も再来年もずっとお誕生日を祝ってあげたい。ううん、祝うわ。約束よ。』

そう言った数日後にお母様は無理心中を…」

我慢していたのに涙がこぼれてしまいました。
その瞬間ハル様が私を抱きしめて下さいました。
驚きもありましたがハル様の体温の温かさに縋ってしまいました。

「約束したのに…何で…」

ハル様は私の背を優しく撫でて下さいます。

「それからも大切にしたい方達は私との約束を守って下さらないんです……私は約束なんて嫌いです……」

勢いに任せてそう言った私の言葉にその時ハル様が苦しまれているなんて思いもしていませんでした。
そして私自身も苦しむことになる事を、感情に任せて言葉を発したこの時の私は分かっていませんでした。
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