(完)約束嫌いな私がしてしまった、してはいけない約束

奏直

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赤面の目覚めと…

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瞼が重たいと感じながらゆっくりと目を開ける。
最近やっと見慣れた天井が見えて寝ていたのかと思う。
次第に意識がはっきりしてきて顔から火がでるほどの羞恥心に見舞われる。

コトン

とベッドサイドに水の入ったコップがのったトレーが置かれる。
隣にはハル様から頂いた髪留めが置かれている。
アリーさんが私が起きるのを手伝って下さいます。

「泣いていらっしゃったと聞きました。お嬢様が目を覚まされたら果実水を…とハロルド様より申しつかっておりましたので、どうぞお飲み下さい。」

アリーさんからコップを受けて取り口に含みます。
乾いた喉に果実水が染み渡り潤っていくのが分かります。
スッキリとするのとは反対に、ハル様の名前を聞き顔の熱が更に高くなる気がします。

「あの…ベッドには…」

「恐らくハロルド様が運んで下さったのかと思います。」

「そ、そうですか…ハル様は何か言っていらっしゃいましたか?」

「お嬢様に関わる大切な事だったのでしょう、ハロルド様は何も仰いませんでした。」

「そ、そうですか…」

「アリーさん起きたいので、また髪を結って頂いても良いですか?」

「もちろんです。」

そう言いアリーさんは私の髪を優しく結ってくれます。
アリーさんの手が優しくて心地良くて動揺していた気持ちも落ち着いてきます。
そういえばハル様の腕の中も心地よかったな…温かくてとても安心出来たんですよね…
なんて事を思ってしまい、また赤面した。

「お嬢様できましたよ。」

「あ、ありがとうございます。」

アリーさんにお礼を言って寝室から私室に移動する。
テーブルの上の本が綺麗に並べられている。
恐らくハル様だと思った。
私の好きなものから順に並んでいたからだ。

「何か軽食でも召し上がりますか?」

そう言えばお腹が空いている気がする。

「お願いします。」

「はい。畏まりました。」

嬉しそうにアリーさんは部屋を出た。
部屋に1人になり今日起きた出来事を思い出す。

私ったら、あんな風に泣いてハル様に縋って…しかも寝てしまってハル様にベッドに運んで頂くなんて面倒をかけて…でも心地良かったのです…ハル様の体温に包まれていると不安な気持ちがなくなっていくようで…でも、どうしましょう…次ハル様に会ったら私はどんな顔をすれば良いのでしょう…考えただけでドキドキが止まりません。
この感情が何なのか思い当たるものがありました。
私は初めて感じるこの感情をたくさんの物語を通して知っていました。

ガチャ

「お嬢様お待たせいたしました。お嬢様?青ざめてどうしたのですか?具合が悪いのでは?」

「だ、大丈夫です。」

「ですが…」

「アリーさん…先程の果実水はまだありますか?」

「ございます。お持ちしますから、どうか今日はもうお休みになって下さい。」

「分かりました。寝室に戻ります。」

私を寝かせると果実水を準備しにアリーさんは部屋を出る。
アリーさんが出て行った扉が閉まるのを見ながら、私はとんでもない事をしてしまったと思っていました。

「どうしましょう…私…約束しましたのに…約束しましたのに…どうしましょう。」

ハル様から頂いた髪留めを抱きしめながら心が潰れそうになるのを必死に耐えました。
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