(完)約束嫌いな私がしてしまった、してはいけない約束

レナイト家に起きた事② イザベル視点

お母様は事故で亡くなりお義母様は毒を飲んで亡くなっています。
ですがお義母様がネイオウミを巻き込んで服毒自殺した理由が思い当たらなかった訳を。
だって2人は殺されたのだから…祖父母は簡単にそんな事が出来るのだ。
だからお父様は私を守るために叔母と結婚した。
でもその結果ネイオウミは叔母に虐げられました。
私の事はお父様を繋ぎ止めるための道具として傷付けはしなかったが、ネイオウミの事は目の敵にしていたから。
叔母からすればお母様の後に結婚するはずだったのにパトリシアお義母様に盗られたと思っているのだから。
ネイオウミを庇えばあの子を更に傷付けられるため守る事が出来なかった…それはお父様も同じだった。
お父様が私を守るために叔母と結婚した事を間違ってないと思っている一方でネイオウミを傷つける結果になった事に…それ以外の手段を用意できなかった自分の不甲斐なさを責めている事も私は知っています。
私は家督を叔母に譲ると決め手続きを取ろうとしたが叔母に邪魔されました。
邪魔された理由を初めは私というお父様を縛る道具がなくなる事を恐れてだと思っていましたが違っていました。
叔母は恐れているのです。
何故ならシャーロットとヴィンセントがお父様の本当の子ではないから…それを祖父母に知られるのを恐れているのです。

お父様は1度も叔母と閨を共にした事がないのですから2人がお父様の子であるはずがないのです。

これはお父様がいつかネイオウミを守るために必要な情報だと私に教えてくれた事でしたが今まで明かす事の出来ない情報でもありました。
2人の父親が誰かはお父様も知らないそうです。
今日サミュエル公爵家に私が1人で来れた事は奇跡です。
待ち焦がれていた好機であるとも思っています。
叔母はジェダイナ公爵家が開催する予定の夜会について祖父母の所にシャーロットとヴィンセントを連れて行ってるため数日は留守にするからです。
私はこの機会を絶対に無駄にはしません。
そう決意してここに来たのですから。

でもネイオウミの顔を見てやっぱり申し訳なかったという気持ちが真っ先に込み上げてしまいました。
レナイト家にいた頃より明るい顔で私に話しかけるネイオウミを見て謝罪の言葉が真っ先に思い浮かんだのです。
私の可愛い可愛い妹…

「ごめんなさいネイオウミ。」

「お義姉様…おやめ下さい。どうしてお義姉様が謝られるのですか？」

「貴女を助けられなかったから…守れなかったから…」

でも私は必ず妹を助け出します。
ジェダイナ家からも叔母からも…

「大丈夫よ、ネイオウミ。」

「お義姉様？」

「今日はたくさんお話ししましょう。ネイオウミの話もたくさん聞きたいわ。」

「はい、お義姉様！」

「そうだったわ、ネイオウミ。お誕生日おめでとう。」

そう言ってオレンジのガーベラの花束をネイオウミに渡す。

「えっ？そんな…ありがとうございます。」

あたふたしながら花束を受け取るネイオウミに思わず笑ってしまいました。
こんなに穏やかにネイオウミと過ごせる事が私は嬉しくて仕方ありませんでした。