(完)約束嫌いな私がしてしまった、してはいけない約束

奏直

文字の大きさ
116 / 215

手紙の内容

しおりを挟む
談話室のテーブルに突っ伏したダニー様がいらっしゃいました。
具合が悪いのかと思い近づいて声をかけようとして、テーブルの上にある手紙を見てしまいました。
その手紙は皆さんが私に見せなようにしていたシャーロットからの手紙でした。

『ネイオウミお義姉様へ

なぜ手紙の返事を下さらないの?どうして分かって下さらないの?ハロルド様はお優しいの。だからお義姉様を婚約者候補としているために私と婚約することができないということをなぜ理解して下さらないの?お義姉様が分かって下さらないのでこの際だからお伝えしますわ。私、今妊娠していますの。お腹の子供の父親はハロルド様なの。お義姉様は参加されていなかったのでご存じない事は知っています。ですが私とハロルド様は以前より深い中でしたの。でもさっきも言った通りハロルド様はお義姉様が婚約者候補のせいで我が子の父親になることもできないでいるのですよ。お義姉様は愚図だから分からないのでしょう?でもハロルド様は優しいのですから自分の気持ちを抑えても婚約者候補のお義姉様を傷つけないよう我慢されているのです。早く私に返して下さいませ。お腹の子供の父親を奪わないで下さいませ。お義姉様が私のことをよく思っていないことは分かっています。ですがこのような仕打ちをされるお義姉様は人の子ではないと思います。よくよく考えてくださいませ。私のことはいいですからハロルド様のことを考えて下さいませ。ハロルド様を傷つけないで下さいませ。

シャーロット・レナイト』

今、私の目の前にある手紙にはそう書いてあった。
思っていたよりも私を傷つけるようなことは書かれていないと思いました。
レナイト侯爵家にいた頃の方が傷つくことを言われたいたような気がしています。
もちろんハロルド様とシャーロットがそのような関係だとは疑ってもいません。
シャーロットの嘘だと分かっています。
でもそんな嘘をつく程シャーロットは追い詰められているのでしょうか?

「イオ!その手紙読んだのか?」

慌てた声と手紙を手に持つ私の腕をダニー様が掴まれました。
私に見せる気がなかったのだからでしょう。
私を傷つけなように気を遣っていただいていることに感謝しかありません。

「見てしまって申し訳ありません。ですが私は傷ついていませんよ。」

「…その、手紙の内容なんだけど…」

「ハロルド様がシャーロットのお腹の子供の父親だということですか?」

「信じた?」

「いいえ。シャーロットの嘘だと思います。もちろん初めてお会いした時に聞いていたら信じたかもしれません。ですが今はジェダイナ公爵家の事も聞いていますし、ハロルド様を知っていますのでシャーロットが嘘をついていると分かります。それにシャーロットが言うようにハロルド様はお優しく強い方なのですから私を傷つけないために自分の子供を選ばないような方ではありませんもの。」

「もしかしてイオは…」

私は?

「俺がそう思われていても信じてくれた?」

ダニー様がお腹の子供の父親だとしても?

「もちろんです。ダニー様がたくさんの女性と恋をしていらっしゃった事は噂で伺っていますが、私は今お会いしてお話ししているダニー様が自分の子供を選ばないような不誠実な方だとは思いません。」

「そっか…ありがとう。」

ダニー様はどこか嬉しそうに私にそう言われたのでした。
しおりを挟む
感想 93

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完】まさかの婚約破棄はあなたの心の声が聞こえたから

えとう蜜夏
恋愛
伯爵令嬢のマーシャはある日不思議なネックレスを手に入れた。それは相手の心が聞こえるという品で、そんなことを信じるつもりは無かった。それに相手とは家同士の婚約だけどお互いに仲も良く、上手くいっていると思っていたつもりだったのに……。よくある婚約破棄のお話です。 ※他サイトに自立も掲載しております 21.5.25ホットランキング入りありがとうございました( ´ ▽ ` )ノ  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

処理中です...