(完)約束嫌いな私がしてしまった、してはいけない約束

行方不明？ ハル視点

準備はひと通り出来る事をした。
イオが苦手な事は俺が支えればいい。
この夜会ではイオに何かされる可能性が高い。
だから俺は側を離れないと決めていた。
夜会の日は明け方から準備が始まった。
眠そうなイオを侍女達が準備していく。
それは母さんも例外ではないのだが…慣れだろうな。
そんな事を思いながら男性陣は女性陣よりも比較的ゆっくりと準備をするため邪魔にならない様に動いていた。
昼過ぎにイオを見に行くと既に緊張しているのが見て取れた。
"大丈夫だよ。側にいるから"そう言ってもイオとしては今日の夜会がデビュタントな訳で…自分もデビュタントは緊張していたかなと思い出す。
軽食もあまり食べれていない様だったので夜会が終わったら好きなものを食べさせてあげたいものだ。
そして夕刻…イオの準備が整う。
前に見た時よりも更に綺麗なイオにまた言葉を失ってしまう。
それでも今日はイオをエスコートする為に余裕な顔を作る。
少しでもイオに格好いいと、頼りになると思ってもらいたいから。
当のイオは緊張でそれどころではない様だったが…
馬車に乗り込み会場に着くまでの間もイオの緊張は収まらず…会場に着いてからは社交界で知られていない綺麗なイオに視線が集まる。
視線が集まったのはイオが綺麗だからだが、それだけではなかった。
一つは俺が現王の王弟の息子で王位継承権順位の高い公爵家の人間だから。
もう一つが今回の夜会がジェダイナ公爵家が開いているから。
公爵家に関わりがあって今まで社交界に姿を現さなかったイオを皆んなが興味を持って見るのは仕方ない事だった。
ただ幸いな事にイオは初めからかなり緊張していたため視線には気付かなかった事だろうか？
とにかくイオは目立っていた。
俺は同じ歳の男達に牽制の視線を送る。
それは我が家の人間全員の行動でもあったが…
そんな感じで夜会会場に着いたのだが…イオがずっと緊張しているのが心配になった。
疲れて倒れてしまわないだろうか？極度の緊張状態で意識を失う人もいると言う。
しかも、女性は装い華やかな反面着ている衣装は大変だと言うからな…

「大丈夫？」

そう聞けばイオは、

「ダメです…」

と言い、

「でも頑張ります。」

と返してくれる。
頑張ると本人が言っているので連れ帰る訳にも行かないが大丈夫な様には全然見えなかった。
夜会に顔を出したのだからこの時点で連れ帰れば良かったと後の俺は後悔する事になる。
その後、イオの姉のイザベル嬢と会いイオが少しホッとするのが見えた。
2人は仲があまり良くないと思われている為、公爵家用に用意された一室で少しの間2人で過ごしてもらう事にした。
と言っても廊下を挟んで向かいの部屋だ。
それでも本当は離れる予定ではなかったのだがイオの緊張が少しでも解れれば良いと思っての事だった。
ある程度時間が経ったら迎えに行くと言った。
暫くしてイザベル嬢が俺達のいる部屋に訪れた。
迎えに行くと言ったが先に彼女が戻って来た為、俺はイオを迎えに行こうとした。
だがイザベル嬢はこう言ったのだ。

「イオなら先に戻ったのですが来ていませんか？」

もう一度言う。
イオ達は廊下を挟んで向かいの部屋にいた。
道に迷ったとは考えにくい…大体向かいの部屋から出て居なくなるってどういう事だ？