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【名演技篇】第一章 CEO、覇道不在
0103 真相は嘘の中
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呆れたイズルを放っといてリカは公園を後にした。
スーパで生活用品を買ってから、いつも通りに晩御飯を済ませる。
綺麗な夕日の下で、三ケ月しか住んでいない1DKマンションに戻った。
鍵を出したら、ポケットからメッセージの着信音が響いた。
メッセージを送信したのは垂れミミウサギのプロフィール画像のアカウント。
アカウント名は「あかり」。
あかり:「お姉ちゃん、あの人に会った?どうだったの?」
イズルに「お姉ちゃん」と呼ばれた時と真っ逆、リカの顔に柔らかい色が浮かんだ。
リカは画面をスクロールして、あかりとの会話履歴を数日前に遡る。
***
あかり:「お姉ちゃん、今どこ?なんで引越ししたの?」
リカ:「やりたいことがあるから外に出たの、心配しないで」
あかり:「規定を調べたの!いくら重大な任務でも、一度失敗しただけで追い出されるような規定はどこにもない」
あかり:「お姉ちゃんを家から追放する提案はまたあいつらの仕業なの(激怒スタンプ×3)」
リカ:「知っている」
あかり:「審議に提出しても、結論が出るまで少なくても三ヶ月が要る。その間にお姉ちゃんに新しい任務を受けさせないために、あいつらは『エンジニア』たちを買収している(激怒スタンプ×5)」
あかり:「でも心配しないで、わたしはもう『エンジニア』に合格した!これから任務の取次がきるようになる。挽回のチャンスを必ず見つけてあげるから!待っていてね!(頑張るスタンプ×6)」
数日後。
あかり:「お姉ちゃん!見つけたよ!」
あかり:「ランクSの新しい任務があった!お姉ちゃんの履歴でなら受けられる。今から資料を送るね!」
あかり:「ボリュームが大きいから、とにかく、この人を見て!」
あかりから若い男性の写真が送られた。
二十歳前後、まだ少年感が残っている若い男性。
迷彩服を身にまとい、手にリアルな機関拳銃を抱え、森のようなところで構っている。
髪は肩まで長くて、頭の後で細い束に結ばれている。
雰囲気こそ違うけど、その顔は渡海イズルというCEOと瓜二つだ。
***
リカは数日前の写真をもう一度確認してから、家に入って、あかりに音声通話をかけた。
「ええ、彼に会ったよ。顔と名前以外に、資料の人とはまるで別人。本当に馬鹿になったのか、馬鹿を演じているのか、すり替えられたのか、どれ一つだと思う」
「契約によれば、寝る時間を除いていつでも付き添う。演技だったらすぐバレるでしょう。それより、『能力』のほうが気になる。彼を生かのすか殺すのか、それ次第かもしれない」
リカはあかりと話しながら、方手で部屋の隅からスーツケースを引っ張り出して、荷物をまとめ始める。
「そうだよね、99人の愛人を持っていると彼は言った。数は嘘だと思うけど、少し調べてくれないか」
「……好奇心じゃない。人質でも取ろうと考えている」
「青野翼という秘書もかなりあやしい……確かに、『あの事件』の後で突然に現れたのね。『ライバル側』の人だったら、私に声をかけたのも偶然ではなく、私の身分を知った上で、わざと声をかけたのでしょう。あんな無茶な条件でも呑み込めた以上、何かを企んでいるのに違いない」
「あのCEOイズルも、恐らく私の身分を知っている。『万代家』は彼の家族に手をかけた張本人なのに、あえて私を大金で雇用した。復讐のためかなんのためか、その裏をかいて、隣で確認したほうが一番早い」
そう、リカが所属する「家」は、イズルの一家を惨殺した「万代家」だ。
一年前、「万代」という名を持つ暗黒家族はイズルの祖父が率いている「神農グループ」と秘密の供給契約を結んだ。
だが、半年前に何かの原因で交渉が決裂し、神農グループはその契約を破棄した。
万代家は口封じのために、神農グループの経営権を握ているイズル一家に手をかけた。
本来の計画は、神農グループの内部でほかの代理人を扶植することだったが、イズルの生還によってその計画が中止となった。
あの爆発事件から逃れたイズルにある特別な能力が現れたから。
その能力は万代家にとって願いもなく珍しいもの。
「人材を大事にする」が家の方針だから、万代家はイズルの能力を探ることを優先した。
それに、イズルはまだ若い。懲らしめられたら、祖父の「過ち」を校正する可能性もある。新しい代理人を扶植する手間も省く。
観察レポートによると、イズルは神農グループの闇について何も知らないおぼっちゃまのようだが、疑い深い万代家は端からそれを信じなかった。
そのため、彼の本性を探る任務を布令した。
ちょうどその時、リカは青野翼に「家庭教師になってください」としつこくストーキングされていた。
万代家の一部の人にとって、リカは目障りの存在にすぎない。
だけど、彼女は任務実行のVIPチケットを手に入れたのも事実。
リカは難しい任務を成し遂げられる能力を持っているのも認めざるを得ない。
彼女を追放する前に、まだその甘い汁を吸いたい。
今の万代家でリカを助ける人はもういない。彼女が成果をあげたら、ちょっとした計略を使えば盗められる。
だから、イズル調査の任務をリカに振り分けたことに反対者はいなかった。
むしろ、一匹の狼のリカは知らないうちに渾身の力で取った獲物を自ら献上することに期待している。
イズルの家庭教師になって、リカのやることは二つ。
一つ目、イズルの本性と本心を探ること。特に、万代家に協力する意欲はあるかどうかを明らかにする。
二つ目、イズルの能力の真偽を確かめること。そして、その能力は万代家に役に立つかどうかを明らかにする。
「協力してくれる」、「能力が役に立つ」、それはお互いにとって一番いい結果だ。
しかし、反対な結果が出た場合、イズルの抹殺もリカの仕事になる。
スーパで生活用品を買ってから、いつも通りに晩御飯を済ませる。
綺麗な夕日の下で、三ケ月しか住んでいない1DKマンションに戻った。
鍵を出したら、ポケットからメッセージの着信音が響いた。
メッセージを送信したのは垂れミミウサギのプロフィール画像のアカウント。
アカウント名は「あかり」。
あかり:「お姉ちゃん、あの人に会った?どうだったの?」
イズルに「お姉ちゃん」と呼ばれた時と真っ逆、リカの顔に柔らかい色が浮かんだ。
リカは画面をスクロールして、あかりとの会話履歴を数日前に遡る。
***
あかり:「お姉ちゃん、今どこ?なんで引越ししたの?」
リカ:「やりたいことがあるから外に出たの、心配しないで」
あかり:「規定を調べたの!いくら重大な任務でも、一度失敗しただけで追い出されるような規定はどこにもない」
あかり:「お姉ちゃんを家から追放する提案はまたあいつらの仕業なの(激怒スタンプ×3)」
リカ:「知っている」
あかり:「審議に提出しても、結論が出るまで少なくても三ヶ月が要る。その間にお姉ちゃんに新しい任務を受けさせないために、あいつらは『エンジニア』たちを買収している(激怒スタンプ×5)」
あかり:「でも心配しないで、わたしはもう『エンジニア』に合格した!これから任務の取次がきるようになる。挽回のチャンスを必ず見つけてあげるから!待っていてね!(頑張るスタンプ×6)」
数日後。
あかり:「お姉ちゃん!見つけたよ!」
あかり:「ランクSの新しい任務があった!お姉ちゃんの履歴でなら受けられる。今から資料を送るね!」
あかり:「ボリュームが大きいから、とにかく、この人を見て!」
あかりから若い男性の写真が送られた。
二十歳前後、まだ少年感が残っている若い男性。
迷彩服を身にまとい、手にリアルな機関拳銃を抱え、森のようなところで構っている。
髪は肩まで長くて、頭の後で細い束に結ばれている。
雰囲気こそ違うけど、その顔は渡海イズルというCEOと瓜二つだ。
***
リカは数日前の写真をもう一度確認してから、家に入って、あかりに音声通話をかけた。
「ええ、彼に会ったよ。顔と名前以外に、資料の人とはまるで別人。本当に馬鹿になったのか、馬鹿を演じているのか、すり替えられたのか、どれ一つだと思う」
「契約によれば、寝る時間を除いていつでも付き添う。演技だったらすぐバレるでしょう。それより、『能力』のほうが気になる。彼を生かのすか殺すのか、それ次第かもしれない」
リカはあかりと話しながら、方手で部屋の隅からスーツケースを引っ張り出して、荷物をまとめ始める。
「そうだよね、99人の愛人を持っていると彼は言った。数は嘘だと思うけど、少し調べてくれないか」
「……好奇心じゃない。人質でも取ろうと考えている」
「青野翼という秘書もかなりあやしい……確かに、『あの事件』の後で突然に現れたのね。『ライバル側』の人だったら、私に声をかけたのも偶然ではなく、私の身分を知った上で、わざと声をかけたのでしょう。あんな無茶な条件でも呑み込めた以上、何かを企んでいるのに違いない」
「あのCEOイズルも、恐らく私の身分を知っている。『万代家』は彼の家族に手をかけた張本人なのに、あえて私を大金で雇用した。復讐のためかなんのためか、その裏をかいて、隣で確認したほうが一番早い」
そう、リカが所属する「家」は、イズルの一家を惨殺した「万代家」だ。
一年前、「万代」という名を持つ暗黒家族はイズルの祖父が率いている「神農グループ」と秘密の供給契約を結んだ。
だが、半年前に何かの原因で交渉が決裂し、神農グループはその契約を破棄した。
万代家は口封じのために、神農グループの経営権を握ているイズル一家に手をかけた。
本来の計画は、神農グループの内部でほかの代理人を扶植することだったが、イズルの生還によってその計画が中止となった。
あの爆発事件から逃れたイズルにある特別な能力が現れたから。
その能力は万代家にとって願いもなく珍しいもの。
「人材を大事にする」が家の方針だから、万代家はイズルの能力を探ることを優先した。
それに、イズルはまだ若い。懲らしめられたら、祖父の「過ち」を校正する可能性もある。新しい代理人を扶植する手間も省く。
観察レポートによると、イズルは神農グループの闇について何も知らないおぼっちゃまのようだが、疑い深い万代家は端からそれを信じなかった。
そのため、彼の本性を探る任務を布令した。
ちょうどその時、リカは青野翼に「家庭教師になってください」としつこくストーキングされていた。
万代家の一部の人にとって、リカは目障りの存在にすぎない。
だけど、彼女は任務実行のVIPチケットを手に入れたのも事実。
リカは難しい任務を成し遂げられる能力を持っているのも認めざるを得ない。
彼女を追放する前に、まだその甘い汁を吸いたい。
今の万代家でリカを助ける人はもういない。彼女が成果をあげたら、ちょっとした計略を使えば盗められる。
だから、イズル調査の任務をリカに振り分けたことに反対者はいなかった。
むしろ、一匹の狼のリカは知らないうちに渾身の力で取った獲物を自ら献上することに期待している。
イズルの家庭教師になって、リカのやることは二つ。
一つ目、イズルの本性と本心を探ること。特に、万代家に協力する意欲はあるかどうかを明らかにする。
二つ目、イズルの能力の真偽を確かめること。そして、その能力は万代家に役に立つかどうかを明らかにする。
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しかし、反対な結果が出た場合、イズルの抹殺もリカの仕事になる。
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