暗黒家族の令嬢は悪役ではないので、婿入り復讐計画を受け付けません

星琴千咲

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【名演技篇】第六章 迷宮サバイバルの夜

0604 感動できない再会

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「あいつら、全部ここに閉じ込めてやる。一か月、いいえ、半年だ……」

イズルは汗を拭きながら、砂から足を上げて挿して、一歩一歩苦労して前進する。

砂の下はボールプール、床は足の届かない深いところがある。

天井のスポットライトはまぶしい。人工の猛暑と柔らかい地面は体力を激しく消耗させる。

イズルは眩暈が続いている。

そんな中で、彼はとうとう蜃気楼でも見たような気がした。

ありえない人が視野に入った。

ある女は砂の中で必死にもがきながら、彼に向かってくる。

「助けて――!誰か――!」

?!!

更に声を聞いたら、イズルの目は一気に覚めた。

その声も、ありえないものだ。

死んだ母親の姿を見て、声を聞いたのは、蜃気楼以外にどう説明すればいいのか?



「母」の後に、二人の筋肉男がいる。

筋肉男たちは「母」を追って砂漠に入った。

「母」は砂を掬って、男たちの顔に投げる。

男たちは砂を払う隙に先を急いだ。

「母さん!!」

イズルは体力の温存を諦めて、全力で「母」に走った。

「イ、イズル――!!」

「母」もイズルに気付いて、彼の名前を叫んだ。

「逃がすな!」

「捕まえろ!」

筋肉男たちは「母」のスピードより速い、このままじゃまずい!

イズルは方向を変えて近くにあるサボテンに行った。

そのサボテンの下の砂を掘って、砂の中に埋められたカラクリのボタンを押した。

「ドカーン!」

筋肉男たちの前に、砂が爆発した。

大きな穴があけられて、一人の男は足元を滑って穴に落ちた。



「母さん!」

「イズル!」

砂漠ダンジョンの中で、親子二人は強く抱きしめた。

「あのサボテンの下に硬い踏み台がある!そっちへ!」

再会に感動する余裕がない。イズルは母の手を引いて、一つの斜めのサボテンに走った。

「母」をサボテンの下の踏み台に立たせて、イズルはサボテンの下からリモコンのような機械を掘り出した。

それを持ってイズルは大声で筋肉男たちに警告する。

「頭をぶっ飛ばされたくないなら、そこに止まれ!」

話と同時に、イズルはリモコンのボタンを何個押した。

たちまち、筋肉男たちの周りの砂は相次ぎに爆発した。

強いダメージはないが、砂塵と崩れた地面は筋肉男たちの足を止めた。

「お前ら、闇社会の人間だろ。だったら、神農グループは何を作っているのか、知っているはずだ。そのものでお前らをあの世に送ってやってもいい」

「バ、バカなこと!ここはただの遊び場だろ……!武器なんて

あるはずがない!」

筋肉男――筋肉ウルフたちはイズル脅迫に動じない。ちょっとだけ舌を噛んだのはイズルの外見のせいだ。

彼たちがもらったイズルの写真は貴公子恰好の好青年だけど、目の前にいるイズルは乱れた服装と凶悪な目を持つ不良のようだ。同一人物とは思えない。

「……」

イズルは黙ってリモコンで操作した。

筋肉ウルフたちの頭の真上にスポットライトが何個爆発した。

「!!」

筋肉ウルフたちは慌てて頭を庇って移動する。

「領地に侵入する奴を許さない主義だ。ここはオレが作ったお城、もちろん防御措置が完璧。お城が壊されたら、建て直せばいい。お前らは?一度壊されてみたいのか?」

「……」

そろそろ次のシーンに進むべきと「母」は判断して、イズルの後ろから手を上げて、筋肉ウルフたちに合図をした。

筋肉ウルフたちはイズルの脅迫に怯えたふりをして、緊急出口のほうに撤退した。



「母さん、もう大丈夫!」

筋肉ウルフたちは視線から消えて、イズルはさっそく「母」の安全を確認する。

「母さんもあの爆発から逃げられたのか!どうやって?」

「話せば長くなるの。まず家に帰りましょう……」

「母」はまだ何かを言おうとしたが、突然に目が閉じて、倒れていく。

「!!」

イズルは手早く「母」を受け止めた。

深いため息をしてから、母を背負って、重い足取りを踏んで4階の休憩室に向いた。



イズルは「母」を休憩室のベンチに寝かせて、ドアをロックした。

「母さん……」

「母」の顔を見つめながら、小さな声で呼んだ。

「……」

「母さん、忘れたのか?母さんはオレのことを、いつも『イズルちゃん』で呼んでいた――」

「?!!」

「母」は危機を感じて、本能的にベンチから床に転がった。

目を開けると、背筋が凍る光景を見た。

イズルはナイフをベンチに刺した。刺す場所は、先ほど彼女の頸の位置だ。

「な、何をするの?!」

「母」は体を起こしながら後ずさった。

イズルのはスーツの裏から小さな拳銃を出して、そのまま自分の後ろに投げた。代わりに、カバンからロープを取り出して、凍りついた目で「母」へ一歩進んだ。

「母の姿を利用するだけじゃなく、こんな拙劣なお芝居までするとは。楽に死なせない」

「?!!」

こいつ、本気か?!

「母」——エンジェの手足は震えた。

それでも彼女は世間を見てきたつもりだ。

プライドのためでも負けたくない。

「け、けれどもね!偽物でも、あんたの母の姿なのよ!殺せるならやって見ろよ!母の姿の人を殺すなんて、悪魔じゃないの!あんたの母もきっとあの世で親不孝の息子に怒っているわよ!!」

「喋れるのは今のうちだ。ご自由に……」

イズルはさらに一歩前進。

「……わ、分かったわ!リカのためでしょ!」

「母」で攻めるのが失敗して、時間稼ぎのために、エンジェは別の話題を持ち出した。

「リカ?」

「あんた、彼女からあたしの悪口を聞いたでしょ!それは違うの!あたしこそ被害者なのよ!彼女は小さい頃から高飛車のお嬢様、ずっとあたしたちみたいな平凡な女の子をいじめていたの……たくさんの男にチヤホヤされているのに、わざとあたしの好きな人を奪ったのよ!騙されないで!リカはあなたを利用しているだけ!家に戻るために!」

わけの分からない言葉を連発する同時に、エンジェは密かに首元の緑の宝石を掴んだ。

「あの採点バカとお前のことはオレと関係ない。彼女は家に戻らないこそ困る」

イズルはもう一歩前進した。

「……!」

ふいと、エンジェはいい「交渉条件」を思いついた。

「そ、そうだわ!あんたの家族の死因を知りたくない!?犯人が分かるわ!」

「ほぉ、犯人は?」

エンジェの思った通り、その言葉を聞いて、イズルが足を止めた。

「犯人は……リカだ!すべては彼女のせいなの!彼女は家族の秘密任務に失敗して、その秘密を漏らしたの!だから、あんたの家族はその秘密を知った!万代家はあんたの家族を殺さなければならなかった!復讐するなら、リカを先に殺すべきなのよ!」

「!?」

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