久遠寺調査事務所事件ファイル

桃子

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1章 寝取られ惣助

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 その日は、本来なら、休日の予定だった。

「2週間ぶりのお休みのはずだったのに……」
「悪かったな」
「ううん、私はいいんだけど、体を壊さないようにね。今日は何時?」
「多分、9時を過ぎると思う。飯は先に食べててくれ」
「いってらっしゃい」

 その仕事が、思いのほか早く終わり、惣助が家路に着いたのは昼の2時。

 これなら、夕食は一緒に食べられる。せっかくだから、少し遠出してムードのある店でディナーでもいい。
 一年前に越してきたばかりの新居は、開発が始まったばかりの住宅地だった。
 家から駅まで自転車で20分、会社へは電車で一時間、遠くはないが、近いとも言えない。
 周辺には店どころか住宅もほとんどない。最近、ようやく、隣――と言ってもずいぶん離れていたが――に新しい家が建とうとしていた。
 人間よりも近くの山から下りてきた狸の方が多いかもしれない。
 そんな中、専業主婦の結奈に一人で過ごさせるのを、常日頃から、気の毒に思っていた。けれど、半年前から新しいプロジェクトが始まり、自分も、結奈と一緒に過ごす時間をほとんど持てずにいたのだ。

 ――夫婦生活も、4か月前に1度、その前は7か月前だったか。

 性には消極的な妻の結奈は何も言わないが、欲求不満を持て余しているかもしれない。

 ――夕食は早めに済ませて、今晩は彼女を思い切り可愛がるのもいいな。

 そんな期待を胸に、まだ残暑の残る曇り空の下、田舎道を自転車をひた走らせてきた。ツクツクボウシの鳴き声がやかましく、暑さを助長させる。
 シートで覆われた隣家では休日も作業しているのか、男が動いているのが見えた。建築中の隣家を通り過ぎれば、我が家はもうすぐそこだった。


「ああん、……、あん、ぅぅぅ、……っはぁっ、やああぁ」

 自転車を止めて玄関を開けようとした惣助の耳に飛び込んできたのは、欲望に爛れた女の嬌声だった。

 ――この声は、まさか、結奈?

 玄関のノブから手を放し、耳を澄ませて声の出所を探る。

「……ひゃあっ、あっ、いいっ、……おっきくて、きもちいいよぉ、……いいっ、いいのぉ」

 窓はきっちりと閉められているのだろう、くぐもって聞こえる喘ぎ声は、しかし、堪えようという気配もなくあからさまで、簡単にその声を辿れた。

「……、いい、いいよぉ、……くらべものにならないよ、ああん、……きもちいいっ」

 ゆっくりと、勝手口からキッチンを通り過ぎ、そっと、リビングの小窓をのぞき込む。

 ――もしかして、結奈が、柄にもなく一人でアダルトビデオを見ているのかもしれない。

 そんな、惣助の一縷の望みを木端微塵に打ち砕く痴態が、その中では繰り広げられていた。


「ひゃああんっ、ふああん、ああっ、ああん」

 その小窓から、直接、中の情景を見ることはできなかった。けれど、大きくカーテンを開いた掃出し窓が、室内の様子を隅々まで映し出していた。

 ソファの上に、全裸で足を開き、あられもなく腰を振る結奈の姿を。

「ああん、いいっ、いいよぉ、もっと、もっと、きてぇ」

 白いうなじをのけぞらせ、大きな乳房をゆっさゆっさと揺らす。その先端を摘まむ無骨な指。

「いいっ、おちんぽ、おちんぽ気持ちイイのぉ」

 そして、限界までMの字に開かれた結奈の中心部を容赦なく押し広げ、じゅぼじゅぼと出入りする、肉の棒。

 ――結奈、結奈、まさか、そんな。

 普段は恥ずかしがり屋で、セックスの時も小さな喘ぎ声をもらすだけ、「イク」とも言わずに肩を震わせて果てるのが常だった結奈の、見たこともない痴態と、それを引き出しているのが自分ではないという事実に、惣助は頭が真っ白になる。

 結奈を犯している男が、くぐもった笑い声をあげた。そうして、じゅるん、と結奈の身体から肉棒を抜いた。てらてらと屹立するソレが威容をさらす。
 男は快感に肌を火照らせた結奈を持ち上げて、くるりとひっくり返し、対面座位の姿勢を取らせた。
 不鮮明なガラスに映ったものではない、結奈の顔が、まっすぐに見える。その顔は見紛いようもなく、快楽に墜ちて蕩けていた。
 結奈の腕が、男の首に回される。ゆさゆさと揺れる大きな胸が、男の後頭部越しに見えた。
 男は、何かを結奈に囁いたようだった。

「してない、してないよぅ」

 そう答える結奈の乳首を、男がギュッと摘まむ。結奈は高い声をあげると、腰を男に押し付けて体を揺すった。腰を振り立て、陰部を男の肉棒にこすり付ける結奈を、惣助は目を逸らすこともできずに見つめる。


「あなたの、あなたのおチンポが、一番ですぅ。おねがい、結奈の、えっちなオマンコにおチンポ入れてくださいっ」


 結奈の叫ぶような声が、惣助の耳朶をうった。その、聞くに堪えないおねだりと共に、男と結奈が濃厚な口づけを交わす。そうして、男の肉棒が、再度結奈の中心に飲み込まれた。

「ああん、いい、いい、奥までくるよう」

 惣助は耐えられず、踵を返し、足早にその場を離れた。
 追いかけてくる結奈の嬌声から、一刻も早く逃げ出したかった。
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