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第5節 ~能あるゲスは本性を隠す~
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「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええ!!」
ひとまずこのままだと話が進まないと判断した俺は、般若の様なゲイルの剣を何とか避けながら自分の現状をフィリアに説明する。
家で幼馴染と喧嘩をした日の夜、寝た後の記憶がない事。
次に目が覚めた時はすでに牢屋にいた事。
騎士風の男に連れられてここに来た事。
今まさに死にそうな事。
我ながら提示できる情報が少なすぎる自覚はあったが、それ以外に説明出来ることもないので仕方ない。
俺の必死の語りが通じたのか、フィリアは俺に馬乗りになったまま今にもとどめを刺そうとしていたゲイルに、退く様に指示を出した。
ゲイルが渋々指示に従う。
「わかりました。信じましょう。では、次が私からの最後の質問です」
そう前置きすると、フィリアは手元の紙に何かを記入して俺に見えるように持ち上げた。
「これが読めますか?」
かなり拙い字だったが、かろうじてひらがなの『あ』である事が分かる。
「えぇ、もちろん読めますけど」
俺の返事にすべてが分かったように頷くと、フィリアはゲイルに手枷を外すよう指示した。
少し驚きながらもゲイルが指示に従う。
フィリアは一度深呼吸をすると、机に乗り出して真剣な表情で俺の顔を間近に覗き込んだ。
「ユウトさん、落ち着いて聞いてください」
「ひゃいっ!」
美人がこんな近くにいて落ち着けるわけがないだろう!!?
裏返った俺の返事を一切気にせず、フィリアが言葉を続ける。
「ユウトさんは恐らくこの世界で言うところの“時渡り”を体験したんだと思われます」
「時渡り?」
聞いたことの無い単語に、俺は首を傾げる。
「えっと、端的に言えばこの世界以外の世界からいらしたんじゃないかと」
フィリアの言った言葉になるほど、と俺は手を打つ。
最近巷で流行りの異世界転生、みたいなものか。
「フィリアさん、また冗談ですか?」
「いえ、今回は真面目です。信じられないとは思いますが、この世界では過去にも数件そのような事象があったと文献に残されていますから。異様な衣服をまとい忽然と現れる異界の民、と」
俺を見るフィリアの目は真剣そのものだった。
さすがの俺もこんなフィリアを茶化すことは出来ない。
俺からすればドッキリの可能性もまだ捨てきれていないが。
「フィリアさんが俺を異世界の人間だと考える根拠は服装がこれだからですか?」
「いえ、一番の根拠はこれですよ」
そう言うと、フィリアは先ほどの紙をひらひらと振りながら言葉を続ける。
「私たちはこの文字が読めませんから」
その答えに俺もなるほどと思った。
フィリアにその文字をどこで知ったのかと尋ねると、古い文献に書いてあった『時渡りの異世界人が残した暗号』を丸写ししたものだと教えてくれた。
文献通りの容姿に、文献に書かれた暗号を一瞬で読んで見せた事から、俺が異世界人ではないかと推察したわけだ。
目の前のフィリアさんは美しいだけじゃなくて非常に頭もいいらしい。
「時渡りでベッドに現れたのだとしたら、不可抗力としか言いようがありませんね」
ぽつりとそうつぶやくと、フィリアは俺の手枷を外す。
俺は少し驚きながらも、自由になった手を見つめた。
「今回は私の権限でユウトさんを不問とします。そのかわり、次はありませんからね?」
まさかの無罪放免だった。
とは言え、何かをしたのかと聞かれたら、本当に何もしていないのだから正当な判決と言えば判決なのだが・・・。
自由になった手の感覚を確認しながらフィリアに案内され、部屋を出る。
そしてそのまま建物の玄関まで案内されると、開けてもらった扉をくぐって俺は外へと出た。
眩しい日の光に目を細めながら周囲を見渡した俺は、改めてここが元居た世界ではないのだと実する。
小柄だが筋肉質なドワーフの様な人々や長い耳が特徴的な美男美女、頭の上に猫耳やウサギ耳を付けた人々。
街の広場は様々な種族の人々で賑わいを見せていた。
ここが俺の知らない世界である証拠としては十分すぎる。
ひとまずこのままだと話が進まないと判断した俺は、般若の様なゲイルの剣を何とか避けながら自分の現状をフィリアに説明する。
家で幼馴染と喧嘩をした日の夜、寝た後の記憶がない事。
次に目が覚めた時はすでに牢屋にいた事。
騎士風の男に連れられてここに来た事。
今まさに死にそうな事。
我ながら提示できる情報が少なすぎる自覚はあったが、それ以外に説明出来ることもないので仕方ない。
俺の必死の語りが通じたのか、フィリアは俺に馬乗りになったまま今にもとどめを刺そうとしていたゲイルに、退く様に指示を出した。
ゲイルが渋々指示に従う。
「わかりました。信じましょう。では、次が私からの最後の質問です」
そう前置きすると、フィリアは手元の紙に何かを記入して俺に見えるように持ち上げた。
「これが読めますか?」
かなり拙い字だったが、かろうじてひらがなの『あ』である事が分かる。
「えぇ、もちろん読めますけど」
俺の返事にすべてが分かったように頷くと、フィリアはゲイルに手枷を外すよう指示した。
少し驚きながらもゲイルが指示に従う。
フィリアは一度深呼吸をすると、机に乗り出して真剣な表情で俺の顔を間近に覗き込んだ。
「ユウトさん、落ち着いて聞いてください」
「ひゃいっ!」
美人がこんな近くにいて落ち着けるわけがないだろう!!?
裏返った俺の返事を一切気にせず、フィリアが言葉を続ける。
「ユウトさんは恐らくこの世界で言うところの“時渡り”を体験したんだと思われます」
「時渡り?」
聞いたことの無い単語に、俺は首を傾げる。
「えっと、端的に言えばこの世界以外の世界からいらしたんじゃないかと」
フィリアの言った言葉になるほど、と俺は手を打つ。
最近巷で流行りの異世界転生、みたいなものか。
「フィリアさん、また冗談ですか?」
「いえ、今回は真面目です。信じられないとは思いますが、この世界では過去にも数件そのような事象があったと文献に残されていますから。異様な衣服をまとい忽然と現れる異界の民、と」
俺を見るフィリアの目は真剣そのものだった。
さすがの俺もこんなフィリアを茶化すことは出来ない。
俺からすればドッキリの可能性もまだ捨てきれていないが。
「フィリアさんが俺を異世界の人間だと考える根拠は服装がこれだからですか?」
「いえ、一番の根拠はこれですよ」
そう言うと、フィリアは先ほどの紙をひらひらと振りながら言葉を続ける。
「私たちはこの文字が読めませんから」
その答えに俺もなるほどと思った。
フィリアにその文字をどこで知ったのかと尋ねると、古い文献に書いてあった『時渡りの異世界人が残した暗号』を丸写ししたものだと教えてくれた。
文献通りの容姿に、文献に書かれた暗号を一瞬で読んで見せた事から、俺が異世界人ではないかと推察したわけだ。
目の前のフィリアさんは美しいだけじゃなくて非常に頭もいいらしい。
「時渡りでベッドに現れたのだとしたら、不可抗力としか言いようがありませんね」
ぽつりとそうつぶやくと、フィリアは俺の手枷を外す。
俺は少し驚きながらも、自由になった手を見つめた。
「今回は私の権限でユウトさんを不問とします。そのかわり、次はありませんからね?」
まさかの無罪放免だった。
とは言え、何かをしたのかと聞かれたら、本当に何もしていないのだから正当な判決と言えば判決なのだが・・・。
自由になった手の感覚を確認しながらフィリアに案内され、部屋を出る。
そしてそのまま建物の玄関まで案内されると、開けてもらった扉をくぐって俺は外へと出た。
眩しい日の光に目を細めながら周囲を見渡した俺は、改めてここが元居た世界ではないのだと実する。
小柄だが筋肉質なドワーフの様な人々や長い耳が特徴的な美男美女、頭の上に猫耳やウサギ耳を付けた人々。
街の広場は様々な種族の人々で賑わいを見せていた。
ここが俺の知らない世界である証拠としては十分すぎる。
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