【完結】シャングリラ【R18】

有喜多亜里

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5 これこそが現実

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 何か、自分が叫んだような気がして目が覚めた。
 光が眩しくて、思わず顔をしかめる。

「あ、気がつきました? おはようございます」

 逆光の中で細い影が彼に挨拶する。軽やかな若い女の声。

「ここは……?」

 反射的にそう訊ねて、彼は今、自分があの冷たい便器の上ではなく、硬いがちゃんとしたベッドの上にいることを知った。手で体を確かめてみると素肌ではなく、ありふれたシャツとジーンズを身につけていた。

「病院ですよ」

 淡いピンクの制服を着た看護婦は、そう答えてカーテンを束ねた。

「病院?」
「ええ、桃源病院。覚えてないでしょうけど、夕べ、急性アルコール中毒で運びこまれてきたんですよ。コンパで飲みすぎたんですって? お友達が心配していましたよ――」

 彼は茫然と天井を見つめた。世界がぐるぐると回り出す。馴れ馴れしい看護婦の言葉は、右の耳から左の耳へと通り抜けた。
 あれは、すべて夢だったというのか。アルコールが見せた、淫らで狂った夢だったというのか。
 以前の彼ならば、夢と知ってほっとしていたかもしれない。あるいは、そんな夢を見てしまった自分にショックを受けていたかも。しかし、今の彼はそのどちらでもなかった。
 看護婦には見えないよう、彼はジーンズの中の自分の股間をまさぐった。硬く縮れた陰毛の感触。その中に埋もれた彼のペニスは、今は力なく萎えていた。今度は尻のほうに手を回して、直接アヌスに触れてみる。さんざん酷使されたはずなのに、何の痛みも感じなかった。

 ――これほどはっきり覚えているのに。

 彼はぎゅっと目をつぶって、自分自身を握りしめた。
 あの青一色のトイレの個室。玉座のように便器に腰かける男。その男の股間にそそり立つ、素晴らしく巨大なモノ。容赦なく彼の中にねじこみ、幾度となく放った。口いっぱいに頬張らせられ、余さず飲み下させられたこともあった。だが、逆に彼が男を貫いたこともある。この手の中のモノで、とまどいながら男の中に押し入った、あの瞬間――
 彼は目を見開いた。彼の中心が少しずつ息づきはじめる。
 こんなのは現実じゃない。これは夢だ。あの狭いトイレの中で、ただただ男とのセックスに明け暮れた時間。あれこそが現実だった。
 でも、どうやったらあそこに戻れる? あの甘美な時間を取り戻せる? そう思ったとき、彼の脳裏にあの男の言葉がよみがえった。

 ――どこでもいいから……

 彼はベッドから跳ね起きた。

「トイレは!?」
「え?」

 急に大声を出されて、十人並みの顔をした看護婦は目を見張ったが、よほど彼がせっぱつまっていると思ったのか、笑ってドアを指さした。

「廊下の左の突き当たりにありますよ」
「ありがとうございます!」

 叫ぶように礼を言って、彼はベッドから飛び降り、靴も履かずに部屋から走り出た。何も知らない看護婦はくすくすと笑っていた。
 トイレのある場所はすぐにわかった。青系でまとめられた男子トイレ。彼は個室の一つに駆けこむと、あせりながら鍵をかけた。

「よう、また来たな」

 あの男が、青い洋式便器の上に座っていた。やはり全裸で、大きく股を開き、その間に悠然と反り返るモノを誇示するように突き出していた。
 気がつくと、彼も裸で、背後のドアも消えていた。
 あるのは、壁と、便器と、男だけ。
 彼のモノが見る見るうちに首をもたげ、弾けそうなくらい膨れ上がる。それを面白そうに眺めてから、男は横柄に囁いた。

「来いよ」

 否などなかった。彼は男の前に跪くと、自らの倍はあるそれをうっとりと見つめた。

 ――そうだ。これこそが現実。

 彼は消え失せないように両手でしっかりと握りしめ、息もつかずにしゃぶりついた。

  ―END―
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