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5 これこそが現実
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何か、自分が叫んだような気がして目が覚めた。
光が眩しくて、思わず顔をしかめる。
「あ、気がつきました? おはようございます」
逆光の中で細い影が彼に挨拶する。軽やかな若い女の声。
「ここは……?」
反射的にそう訊ねて、彼は今、自分があの冷たい便器の上ではなく、硬いがちゃんとしたベッドの上にいることを知った。手で体を確かめてみると素肌ではなく、ありふれたシャツとジーンズを身につけていた。
「病院ですよ」
淡いピンクの制服を着た看護婦は、そう答えてカーテンを束ねた。
「病院?」
「ええ、桃源病院。覚えてないでしょうけど、夕べ、急性アルコール中毒で運びこまれてきたんですよ。コンパで飲みすぎたんですって? お友達が心配していましたよ――」
彼は茫然と天井を見つめた。世界がぐるぐると回り出す。馴れ馴れしい看護婦の言葉は、右の耳から左の耳へと通り抜けた。
あれは、すべて夢だったというのか。アルコールが見せた、淫らで狂った夢だったというのか。
以前の彼ならば、夢と知ってほっとしていたかもしれない。あるいは、そんな夢を見てしまった自分にショックを受けていたかも。しかし、今の彼はそのどちらでもなかった。
看護婦には見えないよう、彼はジーンズの中の自分の股間をまさぐった。硬く縮れた陰毛の感触。その中に埋もれた彼のペニスは、今は力なく萎えていた。今度は尻のほうに手を回して、直接アヌスに触れてみる。さんざん酷使されたはずなのに、何の痛みも感じなかった。
――これほどはっきり覚えているのに。
彼はぎゅっと目をつぶって、自分自身を握りしめた。
あの青一色のトイレの個室。玉座のように便器に腰かける男。その男の股間にそそり立つ、素晴らしく巨大なモノ。容赦なく彼の中にねじこみ、幾度となく放った。口いっぱいに頬張らせられ、余さず飲み下させられたこともあった。だが、逆に彼が男を貫いたこともある。この手の中のモノで、とまどいながら男の中に押し入った、あの瞬間――
彼は目を見開いた。彼の中心が少しずつ息づきはじめる。
こんなのは現実じゃない。これは夢だ。あの狭いトイレの中で、ただただ男とのセックスに明け暮れた時間。あれこそが現実だった。
でも、どうやったらあそこに戻れる? あの甘美な時間を取り戻せる? そう思ったとき、彼の脳裏にあの男の言葉がよみがえった。
――どこでもいいから……
彼はベッドから跳ね起きた。
「トイレは!?」
「え?」
急に大声を出されて、十人並みの顔をした看護婦は目を見張ったが、よほど彼がせっぱつまっていると思ったのか、笑ってドアを指さした。
「廊下の左の突き当たりにありますよ」
「ありがとうございます!」
叫ぶように礼を言って、彼はベッドから飛び降り、靴も履かずに部屋から走り出た。何も知らない看護婦はくすくすと笑っていた。
トイレのある場所はすぐにわかった。青系でまとめられた男子トイレ。彼は個室の一つに駆けこむと、あせりながら鍵をかけた。
「よう、また来たな」
あの男が、青い洋式便器の上に座っていた。やはり全裸で、大きく股を開き、その間に悠然と反り返るモノを誇示するように突き出していた。
気がつくと、彼も裸で、背後のドアも消えていた。
あるのは、壁と、便器と、男だけ。
彼のモノが見る見るうちに首をもたげ、弾けそうなくらい膨れ上がる。それを面白そうに眺めてから、男は横柄に囁いた。
「来いよ」
否などなかった。彼は男の前に跪くと、自らの倍はあるそれをうっとりと見つめた。
――そうだ。これこそが現実。
彼は消え失せないように両手でしっかりと握りしめ、息もつかずにしゃぶりついた。
―END―
光が眩しくて、思わず顔をしかめる。
「あ、気がつきました? おはようございます」
逆光の中で細い影が彼に挨拶する。軽やかな若い女の声。
「ここは……?」
反射的にそう訊ねて、彼は今、自分があの冷たい便器の上ではなく、硬いがちゃんとしたベッドの上にいることを知った。手で体を確かめてみると素肌ではなく、ありふれたシャツとジーンズを身につけていた。
「病院ですよ」
淡いピンクの制服を着た看護婦は、そう答えてカーテンを束ねた。
「病院?」
「ええ、桃源病院。覚えてないでしょうけど、夕べ、急性アルコール中毒で運びこまれてきたんですよ。コンパで飲みすぎたんですって? お友達が心配していましたよ――」
彼は茫然と天井を見つめた。世界がぐるぐると回り出す。馴れ馴れしい看護婦の言葉は、右の耳から左の耳へと通り抜けた。
あれは、すべて夢だったというのか。アルコールが見せた、淫らで狂った夢だったというのか。
以前の彼ならば、夢と知ってほっとしていたかもしれない。あるいは、そんな夢を見てしまった自分にショックを受けていたかも。しかし、今の彼はそのどちらでもなかった。
看護婦には見えないよう、彼はジーンズの中の自分の股間をまさぐった。硬く縮れた陰毛の感触。その中に埋もれた彼のペニスは、今は力なく萎えていた。今度は尻のほうに手を回して、直接アヌスに触れてみる。さんざん酷使されたはずなのに、何の痛みも感じなかった。
――これほどはっきり覚えているのに。
彼はぎゅっと目をつぶって、自分自身を握りしめた。
あの青一色のトイレの個室。玉座のように便器に腰かける男。その男の股間にそそり立つ、素晴らしく巨大なモノ。容赦なく彼の中にねじこみ、幾度となく放った。口いっぱいに頬張らせられ、余さず飲み下させられたこともあった。だが、逆に彼が男を貫いたこともある。この手の中のモノで、とまどいながら男の中に押し入った、あの瞬間――
彼は目を見開いた。彼の中心が少しずつ息づきはじめる。
こんなのは現実じゃない。これは夢だ。あの狭いトイレの中で、ただただ男とのセックスに明け暮れた時間。あれこそが現実だった。
でも、どうやったらあそこに戻れる? あの甘美な時間を取り戻せる? そう思ったとき、彼の脳裏にあの男の言葉がよみがえった。
――どこでもいいから……
彼はベッドから跳ね起きた。
「トイレは!?」
「え?」
急に大声を出されて、十人並みの顔をした看護婦は目を見張ったが、よほど彼がせっぱつまっていると思ったのか、笑ってドアを指さした。
「廊下の左の突き当たりにありますよ」
「ありがとうございます!」
叫ぶように礼を言って、彼はベッドから飛び降り、靴も履かずに部屋から走り出た。何も知らない看護婦はくすくすと笑っていた。
トイレのある場所はすぐにわかった。青系でまとめられた男子トイレ。彼は個室の一つに駆けこむと、あせりながら鍵をかけた。
「よう、また来たな」
あの男が、青い洋式便器の上に座っていた。やはり全裸で、大きく股を開き、その間に悠然と反り返るモノを誇示するように突き出していた。
気がつくと、彼も裸で、背後のドアも消えていた。
あるのは、壁と、便器と、男だけ。
彼のモノが見る見るうちに首をもたげ、弾けそうなくらい膨れ上がる。それを面白そうに眺めてから、男は横柄に囁いた。
「来いよ」
否などなかった。彼は男の前に跪くと、自らの倍はあるそれをうっとりと見つめた。
――そうだ。これこそが現実。
彼は消え失せないように両手でしっかりと握りしめ、息もつかずにしゃぶりついた。
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