自惚

喜多ミナミ

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17才、夏。(5)

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 予選を無事に勝ち上がった私達は、約1ヶ月後の本戦に向けて練習をしている。予選はパート毎に試合をするが、これから先はトーナメント式。負けたら終わりだ。勝ち上がるほど相手は強くなるし、段々と本格的な夏になってくる。冷房などの設備が整っていない体育館なので、土日の練習は午前中のみ。あとは各自で調整という感じだった。先日あった試合で、私はプレータイムはそこそこだったものの結果を出すことはできていなかった。チームの勝ちは嬉しいものだったが、個人としては満足のいく試合ではなかった。皆は暑さにバテたようで、体育館の外に出ていった。よし、使いたい放題。
今日は隣のコートも静かだ。

目標にしていた本数を打ち終えたので、帰ろうと思って体育館を出ると、とっくに練習を終えていたさっちゃんがいた。
「暑いから帰ったかと思ってた。今までなにしてたの?」
「結ちゃん待ってたのー。」
「え、ごめんごめん。えっとー、なんか約束してたっけ?」
「ううん、してない。してないんだけど、一緒に門まで行こうかなって。」
謎だ。だけど、さっちゃんのことだからと特に気にも留めず、待たせていることは申し訳なかったので急いで帰る準備をした。
「よし、終わった。帰ろう。」
私の言葉に待ってましたと言わんばかりにさっちゃんは素早く立ち上がった。そんなに早く帰りたかったのならなぜ待っていたのだろう。そして心なしかいつも以上に落ち着きがない。
駐輪場のところまできて、目を疑った。
あるはずのない人の姿が見えた。
あの日はあれ以上は何も話さず、ふたりともあっさりとそれぞれの家に帰った。
その次の日からも、特に変わったことはなかったし、もうあれは夢だったと言われた方が納得がいった。
もしかしたらあれは気を遣って言ってくれた言葉だったのかもしれない。
だから私はそれ以上は何も考えないことにしていた。
でも、見間違えるはずはなかった。
「今日、部活休みじゃないの?」
「うん。ちょっとそこに立って。」
言われた通り駐輪場から少し離れた見通しの良い場所に立つ。
彼が近づいてくる。
後ろに組んでいた手をそっと前に持ってくる。
その手には、花束があった。

「好きです。付き合ってください。」

そう言って深々とお辞儀をし、綺麗な花束を私の方に向けた。
彼らしいまっすぐな告白だった。
花束を受け取った。

「お願いします。」

将くんがゆっくりと顔をあげる。
そこには私の好きな、あの笑顔があった。


「きゃー!おめでとう!」
さっちゃんが騒いでいる。どうやら2人はグルだったようで、ドキドキしたぁなんて自分のことのように安心している。
「将が急に告白したいから手伝ってくれなんて言ってきて。相手は誰なのか聞いたら結ちゃんだったから、それはもう喜んでって感じで協力させてもらったの!」
「ずっと、結ちゃんも俺のこと好きかもなぁ告白したいなぁなんて思ってたりしたんだよ。だけどあの日、あんな感じで先越されちゃったからさ、付き合おうってちゃんと俺から言いたくて。」
「ちょっとなにそれ、自惚れすぎだよ!さっちゃんの様子は確かに変だったけど、まさかこんなことしてくれるなんて。2人ともありがとう。」

7月。太陽の下で幸せを感じた。
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