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第壱章:室戸/ミサキの事情*
#015:平坦な(あるいは、いまひとたびの)
しおりを挟む結局。
「………」
ほどよい酔いと、どっと来た疲れを体中に帯びたまま、またも日付が変わる間際に散会となって帰路についた。
結局、「何とか計画」とやらについての詳細な説明はされなかった。されたのは3日後に渋谷のハチ公前に集まる旨のみ。こんなことばっかりで大丈夫だろうか。
来た時と同じように、とぼとぼふらふらと歩きながらそんなことを考えていた。思考は相変わらず定まらないまま、いまだ車通りが絶えない国道を折れて、じんめりとした暗闇に覆われた路地に入る。
「……」
とは言え、今まで何かに打ち込めることなんてまるで無かったこの僕に、何というか目指すものが出来たことは大きい。……と思いたい。まあそのモノというのが、何というか得体が知れなさ過ぎて、目指している方向もよくは分からないんだけど。
と、
「……そこの少年」
最寄りのコンビニに寄って帰ろうとした矢先のことだった。煌々と灯りが照らす店内に入りかけようとしていた僕の背中に、ふいに誰かの声が掛かる。何だ?
「いきなりで不躾だが、少し話がしたい。そこのベンチででもどうだろうか」
声の方に顔を向けると、銀色なのか光沢のある白色なのかは分からなかったものの、見上げるばかりのスーツ姿の女性がいた。かなりの長身だ。160ちょっとの僕の目線よりだいぶ上。ヒール履いているのかも知れないけど、175cmくらいありそうだ。
細身のパンツスーツに包まれた脚はすらりと長い。髪は何というんだ、セミショート? ワイルドな感じに仕上がっている。それにしてもこういう風にいきなり声を掛けられることが最近多いな。僕も何となくこういうことに慣れ始めている自分も自覚している。
「なんれしょうか? もうちょっと早く帰りたい気分なんですが」
酔って朦朧とした口調の僕に、その女性は一瞬、その鋭く切れ長な瞳で、値踏みするかの視線を投げてきた。
「なるほど? アオナギが入れ込むのもわかる」
男っぽい口調とその外観とが相まって男装の麗人感がするけど、相当きれいなヒトだ。クールビューティー。いや、それよりそのような方の口から「あの変人」の名前が出てきたことに僕は驚く。
「『溜王』に出るんだろう? あの二人と」
ポンとそんな単語が出てきたからには、この人も関係者か、ダメ関連の。はっきり言って、全然ダメと結びつかないぞ。むしろシゴト出来る系な感じだ。
「なぜそれを……」
そう聞くのがやっとな僕は、考える頭もそうだが、足元も覚束無い。
「5分ほど時間をくれないか、少年? そこに座っててくれ、コーヒーでも買って来る」
その長身ワイルドな女性は、僕をコンビニ外のベンチに座らせると、店内に姿を消した。何だ? いったい何が起こってるの最近?
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