上 下
55 / 100
第弐章:ムロトー/ナイトフィーバー/レリGO

#055:霧中な(あるいは、強引アンド強引だニャン)

しおりを挟む

 第二戦。ブースW、時刻10:00。

「さあ、ここから二回戦。第一試合が始まります!」

 今回の実況少女は水色のコスチューム。先ほどの黄色のセイナちゃんと比べると、年齢はちょっと上? 背も高いし、落ち着いた感じ。

「対戦カードは、一回戦を秒殺で締めくくったナンバー19と、シード権を有する、この戦いが初戦のナンバー44! どちらも期待できそうです」

 二重の切れ長の目はクールっぽさを醸し出しているが、それでいて冷たいという印象は与えてこない。いや、そんな評価をしてる場合じゃないけど。またしても僕が先鋒なわけだが、

「一発で相手を戦意喪失させる。少年、お前さんが初戦でやってたじゃないか。予選ごとき最低限の労力で勝ち進むぞ。なあに、無尽蔵のダメエネルギーに溢れた少年なら、たやすい、たやすい」

 などと、見え見えのアオナギのおだてにホイホイ乗った僕も僕だ。ともかく勢いのまま、次なる戦いのリングに上がるしかないわけで。

「……」

 相対するのは、ん? 細小さい体の……あれこそ「少年」と呼ぶべき外観じゃない? 灰色のパーカーのフードをかぶり、茶色の前髪が目の下まで垂れ下がっている。口は何がおかしいのか常にへらへらと締まりなく笑っているよ。ひきこもりの世間一般のイメージというか、いやでもこうして出てきているしなあ。何ともつかみどころの無い相手だ。どうする?

「実況は私、猫田ねこだがお送りするのだニャン♪」

 困惑に拍車をかけるように、実況少女がそんな感じで告げてくるが、いや、そこからキャラに持ってくの? 最初からやらないのかー、と結構いい感じにずれている水色の猫田ちゃんが、僕ら対局者をシートにつくよう促す。その瞬間だった。

「!!」

 耳慣れないベルの音。と同時にブース内のディスプレイに<ランダムバトル!!>の文字が明滅する。

「きょ、兄弟、なんだぁありゃあ?」

 リング外の丸男がでかい声を上げるが、あれ、知らないの? 常連でしょ?

「今期から採用になりました『ランダムバトル』が正にランダムに告げられました……だニャン♪」

 語尾むりやりー、と思いつつも、いやいやそのランダムバトルの方を気にしないと! と僕はその後に続くだろう説明を待つ。

「ランダムバトルは!! ひとつの対局ごとに、ルールがランダムで提示されます!! 得意なものに当たったら、有利になるかもです! ……だニャン♪」

 猫田ちゃんは笑顔で言うけど、えー、そんなの聞いてないー。

「……また元老院のジジイ共が考えそうなこった。気にするな少年、ルールだなんだ、そんなことは遠く及ばないところに……真の強者は存在する」

 アオナギは余裕の笑みをかますが、かいかぶり過ぎですって。その僕に対する過大評価が今をもってもよくわからない。

「ルール……『赤上げて青上げて!上げない場合はノーカンです』!! だニャン♪」

 高速で入れ替わっていた画面が止まり、猫田ちゃんが言い放った通りの「ルール」が提示された。何それ。まあとにかくやるしかないよね。目の前のフード少年を見ると、アオナギのようなくっくっという笑い声を立てながら、こう切り出してきた。

「初シード……ども……」

 つかみどころは見えてきた。だが見えてきたところでつかみたくない、そんな心境です。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

鐘崎くんはセフレをご所望です。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:243

ボッチで引きこもりの自称スマホ心理カウンセラー

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

終末のダンジョンアカデミア

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:121

王太子さま、側室さまがご懐妊です

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:555

目隠しは赤い糸

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:14

保健委員は魔女っ子なのです

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

神城物語

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

無口な狼は魔王様の言いなりにならない

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:7

真珠の力:冒険と成長の物語

O.K
エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

狂った恋心

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

処理中です...