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花畑
残滓
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その場所は命が生まれ、死んでいく処だった。
若人も年寄りも皆等しく命を取り扱われる処。
さて、あの夢の主は何処に居るだろうか。
私は周囲を見回すと、夢の主に繋がる夢の残滓を探した。
夢の残滓を探す、と言ってもそれは目に見える物ではない。
体が風を感じる様に、心に感じる不可思議な気配なのだ。
私は残滓を逃さないように集中し、注意深く探った。
大勢の人間が、ある者は暗い表情、ある者は明るく微笑んでいる。
私はそんな人間達の顔をつぶさに見て回る。
だが、どの人間からも夢の残滓は感じとれなかった。
こうやって一人一人見て回るのは中々大変だ。
その時、ふわりと何かが頬を掠める感覚があり、私は頰に触れた。
頰に触れた手を見ると、そこには目には見えない何かの跡が残っていた。
これは夢の残滓だ。
微かで儚い、しかしはっきりとした夢の残滓が私の手に確かにあった。
残滓は空間に足跡のようにどこかへと続いていた。
私はその残滓の足跡を追いかけた。
見失わないように慎重に。
この先に必ずいる、夢の主が。
夢の残滓は途中で途切れて無くなっていた。
あとは自力で夢の主を探さねばならない。
私は一つ一つ部屋を見て回ることにした。
順序良く並んだ扉を順番に開けていく。
ある部屋には身体に沢山のチューブを付けた人が眠っていた。
別の部屋には足に包帯を巻いた人が誰かと談笑をしていた。
みなこの場所で自分の生を感じるのだろうか。
それは命が有限である者にしか解らないものなのだろう。
私はそれが羨ましかった。
私も「生きて死ぬ」ということを実感したかった。
だがそれは私には荷が重いのだろう。
それから何人もの人を調べたが、夢の残滓は感じなかった。
もう捜すのはやめようか。
そう思った時だった。
おぎゃあ。
何かの泣き声が聞こえてきた。
その声は新しい命の誕生を告げていた。
私はその声に惹かれてある部屋に入った。
其処には、母となった女性と、子になった人が居た。
子はおぎゃあおぎゃあと泣いていた。
私はそっと手を伸ばして子の頬に触れてみた。
触れると言っても私は人間界に干渉出来ない為、手は頬をすり抜けただけだった。
だが私にはそれだけで充分だった。
この子が、この命が。
そうだったのか。
私は思い込んでいた。
母の腹に抱かれた子が夢を見ることはないと。
でもそうではなかった。
頬をすり抜けた手が感じた鼓動。
それは正にあの幻想的な花畑で感じた鼓動だった。
なるほど、君は生まれ落ちるこの時までずっと、未だ見ぬ外の世界を夢見ていたのか。
どうりであの夢はあんなにも歪だったのか。
私はくすりと笑った。
そして新しい命の誕生を祝福した。
おめでとう。
ようこそ、この世界へ。
君の人生が楽しくて幸せなものになりますように。
私はもう一度子に触れると、人間界を去った。
若人も年寄りも皆等しく命を取り扱われる処。
さて、あの夢の主は何処に居るだろうか。
私は周囲を見回すと、夢の主に繋がる夢の残滓を探した。
夢の残滓を探す、と言ってもそれは目に見える物ではない。
体が風を感じる様に、心に感じる不可思議な気配なのだ。
私は残滓を逃さないように集中し、注意深く探った。
大勢の人間が、ある者は暗い表情、ある者は明るく微笑んでいる。
私はそんな人間達の顔をつぶさに見て回る。
だが、どの人間からも夢の残滓は感じとれなかった。
こうやって一人一人見て回るのは中々大変だ。
その時、ふわりと何かが頬を掠める感覚があり、私は頰に触れた。
頰に触れた手を見ると、そこには目には見えない何かの跡が残っていた。
これは夢の残滓だ。
微かで儚い、しかしはっきりとした夢の残滓が私の手に確かにあった。
残滓は空間に足跡のようにどこかへと続いていた。
私はその残滓の足跡を追いかけた。
見失わないように慎重に。
この先に必ずいる、夢の主が。
夢の残滓は途中で途切れて無くなっていた。
あとは自力で夢の主を探さねばならない。
私は一つ一つ部屋を見て回ることにした。
順序良く並んだ扉を順番に開けていく。
ある部屋には身体に沢山のチューブを付けた人が眠っていた。
別の部屋には足に包帯を巻いた人が誰かと談笑をしていた。
みなこの場所で自分の生を感じるのだろうか。
それは命が有限である者にしか解らないものなのだろう。
私はそれが羨ましかった。
私も「生きて死ぬ」ということを実感したかった。
だがそれは私には荷が重いのだろう。
それから何人もの人を調べたが、夢の残滓は感じなかった。
もう捜すのはやめようか。
そう思った時だった。
おぎゃあ。
何かの泣き声が聞こえてきた。
その声は新しい命の誕生を告げていた。
私はその声に惹かれてある部屋に入った。
其処には、母となった女性と、子になった人が居た。
子はおぎゃあおぎゃあと泣いていた。
私はそっと手を伸ばして子の頬に触れてみた。
触れると言っても私は人間界に干渉出来ない為、手は頬をすり抜けただけだった。
だが私にはそれだけで充分だった。
この子が、この命が。
そうだったのか。
私は思い込んでいた。
母の腹に抱かれた子が夢を見ることはないと。
でもそうではなかった。
頬をすり抜けた手が感じた鼓動。
それは正にあの幻想的な花畑で感じた鼓動だった。
なるほど、君は生まれ落ちるこの時までずっと、未だ見ぬ外の世界を夢見ていたのか。
どうりであの夢はあんなにも歪だったのか。
私はくすりと笑った。
そして新しい命の誕生を祝福した。
おめでとう。
ようこそ、この世界へ。
君の人生が楽しくて幸せなものになりますように。
私はもう一度子に触れると、人間界を去った。
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