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第7章
誰だって失敗をする(6)
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待ち合わせは駅前にある本屋だった。
全国展開しているチェーン店で、そこそこの広さと品揃えだ。最近はネットで本を買うことが多いが、本屋の独特の匂いが好きだった。
お目当ての文庫本があったので、30分前に行っ て探す。
文庫売り場にいくと、平積みになって大々的に売り出していた。知らなかったが来年の夏に映画が公開されるようだ。
計算外に早く見つかったので、俺は雑誌コーナーに向かう。
カケルから話に聞いていた1冊の雑誌に手を伸ばす。
モデル出身で、今はベテラン俳優と呼ばれる男性が表紙を飾っていた。確か、俺より2つ上だった。
文庫本を手にしたまま、雑誌を取って、ペラペラとめくっていく。
カケルの友人が、この雑誌の編集長なんだとか。よく雑誌の感想や意見などを求められて、そのお礼に服や小物を貰ったり、お手頃な価格で手に入ると言っていた。
カケルみたいには逆立ちしたってならないけど、でも、少しはお洒落にならないと涼さんの横にいるのが恥ずかしい。
モデルが着ている洋服よりも、小さく書いてある値段をまじまじと見る。
高っ!
・・・まずは就活を頑張ろう。
「買ってあげようか」
雑誌を閉じようとした時、急に耳元で囁かれた。それは甘い声だった。
俺はすぐさま雑誌を閉じる。
まるでエロ本を読んでるところを目撃された男子高生なみに慌てる。
「大丈夫です」
「へー、しょーちゃんはこういう雑誌を読むんだ」
涼さんは俺が手にしていた雑誌を見ている。
「いや、なんとなく手に取っただけです。本命はこっちです」
俺は取り繕う為に文庫本を差し出した。
「あっ、これ面白いよ」
涼さんが文庫をペラペラしてる間に雑誌を元に戻す。
「読んだことあるんですか?」
「うん。このミステリー作家好きなんだよ。これも持ってたけど、つい最近、映画化になるん読みたいって言ってた会社の後輩にあげちゃった。しょーちゃんが読みたいって知ってたら譲らなかったな」
悔しそうに涼さんは少し角口にさせるのが可愛い。
「買うんで大丈夫です」
「俺が買うよ。その雑誌も合わせて」
「大丈夫です。俺、無職ですど、まだお金には困ってないんで、色々と買ってくれようとしないでくださいね」
「ごめん」
涼さんは顔をハッとさせる。それから辺りを見渡した。釣られて俺も見るが近くに人はいない。
「無職とかではなくてしょーちゃんが可愛くて、買ってあげたくなるだけなんだ。自尊心傷付けよね」
俺は自分の顔が赤くなるのを認識しながらお礼を言う。
「自尊心とか別になんともないです。俺、買ってもらうのとか慣れてなくて苦手なんです」
「そんなこと前にも言ってたよね。ごめん、ホント、気をつける」
しょげた涼さんは、俺なんかよりもずっと可愛い。カッコいいのに可愛いなんてズルくないか?
「謝るようなことではないですよ。それにしても、涼さん来るの早くないですか?」
可愛いすぎるので、俺はさりげなく話題を変えた。
「うん、書いたい本が俺もあったから」
そう言って本を持ってる右手を挙げた。俺にわかるようにか、背表紙を見せる。タイトルからミステリーの単行本と幕末ものの新書。
「涼さんって本好きなんですね」
「うん。活字中毒とまではいかないけど。仕事では嫌ってほど、パソコンやタブレットとか使うだろう? だから、家ではできるだけデジタルなことしたくないんだ。目がショボショボだしね」
当たり前だけど、俺、涼さんのことあまり知らないんだな。
「しょーちゃんもその本を買う為に早く来たの?」
「はい。やっと文庫になったんで」
「文庫派なんだ」
「持ち歩いて読みたいのと、単行本は単純に値が張るから。俺もこの作家が好きで、文庫になるのが待ち遠しかったんです」
「おっ、趣味が合うね。他にどんなの読むの?」
「えーっと」
推理作家の名前を2人挙げる。
「俺も好きだよ。好みが同じだね」
話が盛り上がっていると、二人の間にいかにも邪魔だといわんばかりに人が立ちはだかっていた。
同じ年くらいの男性がじろりと俺たちを睨む。
「すみません」
同時に二人で謝り、その場を男性に譲った。そのまま立ち止まるわけにも行かず、目的もなく歩き出す。
「しょーちゃん、他の本も見る?」
「いや、目的の文庫が手に入ればいいんで」
「俺もそうだから、会計して俺の家に行こうか」
「そうしましょう」
そう言って俺たちは足をレジへと向けた。
全国展開しているチェーン店で、そこそこの広さと品揃えだ。最近はネットで本を買うことが多いが、本屋の独特の匂いが好きだった。
お目当ての文庫本があったので、30分前に行っ て探す。
文庫売り場にいくと、平積みになって大々的に売り出していた。知らなかったが来年の夏に映画が公開されるようだ。
計算外に早く見つかったので、俺は雑誌コーナーに向かう。
カケルから話に聞いていた1冊の雑誌に手を伸ばす。
モデル出身で、今はベテラン俳優と呼ばれる男性が表紙を飾っていた。確か、俺より2つ上だった。
文庫本を手にしたまま、雑誌を取って、ペラペラとめくっていく。
カケルの友人が、この雑誌の編集長なんだとか。よく雑誌の感想や意見などを求められて、そのお礼に服や小物を貰ったり、お手頃な価格で手に入ると言っていた。
カケルみたいには逆立ちしたってならないけど、でも、少しはお洒落にならないと涼さんの横にいるのが恥ずかしい。
モデルが着ている洋服よりも、小さく書いてある値段をまじまじと見る。
高っ!
・・・まずは就活を頑張ろう。
「買ってあげようか」
雑誌を閉じようとした時、急に耳元で囁かれた。それは甘い声だった。
俺はすぐさま雑誌を閉じる。
まるでエロ本を読んでるところを目撃された男子高生なみに慌てる。
「大丈夫です」
「へー、しょーちゃんはこういう雑誌を読むんだ」
涼さんは俺が手にしていた雑誌を見ている。
「いや、なんとなく手に取っただけです。本命はこっちです」
俺は取り繕う為に文庫本を差し出した。
「あっ、これ面白いよ」
涼さんが文庫をペラペラしてる間に雑誌を元に戻す。
「読んだことあるんですか?」
「うん。このミステリー作家好きなんだよ。これも持ってたけど、つい最近、映画化になるん読みたいって言ってた会社の後輩にあげちゃった。しょーちゃんが読みたいって知ってたら譲らなかったな」
悔しそうに涼さんは少し角口にさせるのが可愛い。
「買うんで大丈夫です」
「俺が買うよ。その雑誌も合わせて」
「大丈夫です。俺、無職ですど、まだお金には困ってないんで、色々と買ってくれようとしないでくださいね」
「ごめん」
涼さんは顔をハッとさせる。それから辺りを見渡した。釣られて俺も見るが近くに人はいない。
「無職とかではなくてしょーちゃんが可愛くて、買ってあげたくなるだけなんだ。自尊心傷付けよね」
俺は自分の顔が赤くなるのを認識しながらお礼を言う。
「自尊心とか別になんともないです。俺、買ってもらうのとか慣れてなくて苦手なんです」
「そんなこと前にも言ってたよね。ごめん、ホント、気をつける」
しょげた涼さんは、俺なんかよりもずっと可愛い。カッコいいのに可愛いなんてズルくないか?
「謝るようなことではないですよ。それにしても、涼さん来るの早くないですか?」
可愛いすぎるので、俺はさりげなく話題を変えた。
「うん、書いたい本が俺もあったから」
そう言って本を持ってる右手を挙げた。俺にわかるようにか、背表紙を見せる。タイトルからミステリーの単行本と幕末ものの新書。
「涼さんって本好きなんですね」
「うん。活字中毒とまではいかないけど。仕事では嫌ってほど、パソコンやタブレットとか使うだろう? だから、家ではできるだけデジタルなことしたくないんだ。目がショボショボだしね」
当たり前だけど、俺、涼さんのことあまり知らないんだな。
「しょーちゃんもその本を買う為に早く来たの?」
「はい。やっと文庫になったんで」
「文庫派なんだ」
「持ち歩いて読みたいのと、単行本は単純に値が張るから。俺もこの作家が好きで、文庫になるのが待ち遠しかったんです」
「おっ、趣味が合うね。他にどんなの読むの?」
「えーっと」
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「俺も好きだよ。好みが同じだね」
話が盛り上がっていると、二人の間にいかにも邪魔だといわんばかりに人が立ちはだかっていた。
同じ年くらいの男性がじろりと俺たちを睨む。
「すみません」
同時に二人で謝り、その場を男性に譲った。そのまま立ち止まるわけにも行かず、目的もなく歩き出す。
「しょーちゃん、他の本も見る?」
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