血染めの龍騎士と悪役名無し三男の少女漫画的転生物語

鮎焼き

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ー???視点4ー

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あれからどのくらいの年月が経っただろうか。

ずっと、この場所であの子を待ち続けている。
それだけならいいが、変わってほしい事も変わらない。

追い出しても追い出してもあの女が遊びにやって来る。
相槌を打たない俺にずっと話しかけている。
そんなに俺が珍しいのかよく分からないが、今では放置している。

空気だと思えばなんて事はない、追い出す体力も無駄だ。

今はまだ朝早いから、一人で森の中を歩いていた。
何年待っても会えないという事は、もしかしたら別のところにいるのかもしれないと考えた。
この森は広いが庭のようなものだ…大丈夫、見つけられる。

どのくらい歩いていたのか、複数の足音が聞こえてきた。
耳をすます事もなく、足音が大きくてこちらに近付いてくる。

いつも来る女は1人だから、この足音は別の人間か。
もしかしたら彼かもしれない、彼も迎えが来ていたから可能性はある。
他の人といるところは正直今もモヤモヤと気持ちが曇る。

でも今の俺には人の言葉を話せる口がある。
もう、見ているだけのか弱い魔物ではない。

君にもう一度会えるなら、なんだってする。

あの幸せで優しい日々をこの手で取り戻すんだ。

姿がだんだん見えてきて、期待に心臓が高鳴る。

しかし、その嬉しさもその姿を見てすぐになくなった。
複数の人間ではあったが、何処を見ても望んだ姿はいなかった。

それどころか、誰一人として知っている人はいない。
戦闘を歩くのは彼と歳が近そうな子供で、後ろには大人の男達が壁のように立っていた。
小さくため息を吐いて、早まった足がゆっくりになった。

面倒だが、逃げる理由もないから歩いていく。
何しに来たのか知らないが、俺には関係ない。

魔物の時は危険な目に遭う事もあったが、今は人間の姿だ。
なにかあれば逃げる事も、人間以上の力もある。

「龍人様、ですか?」

「……誰だ」

「申し遅れました、私は代々続く純血種の一族の当主のライと申します」

俺の前で足を止めて、子供が話しかけてきた。
またあの女のように鬱陶しい気持ちになったがそれだけではない。

人間の姿の俺を龍だとすぐに見抜いてきた。
尻尾もないし、完璧なはずだがなんで分かった?
ただの人間なら、気配を感じる事すら出来ない。

いや違う、この子供は純血種と名乗っている。
純血種、この男が?顔に笑顔の仮面を貼り付けた子供が?

俺が会いたかったのは純血種なんかじゃない。

俺が生まれた事は、きっと誰もが知っている事だ。
龍が生まれた日は必ず3日雪が降って止むからだ。

だから長年連れ添えるように子供を当主にしたのか。
そこまでやる必要があるのだろうか、純血種だから出来る事なんてほとんどない。

純血種とは、龍と人間が稀に魂と体と血が結合する事がある。
全てが繋がる者は、2人で一つとして傍を離れない存在。

人間の運命の相手に近いが、恋愛感情というより家族に近い。

そう言われている、人間の都合のいいように。

龍と人間が結合する事があるわけないだろ。
目の前にいる純血種を名乗るこの男もそうだ。

今までそんな人間がいたなんて話は聞いた事がない、人間が話しているのは地上に降りる前から聞いている。
なにがしたいのか理解出来ない、龍と結合した事で自分も龍になった気でいるのかもしれない。

俺も、昔は人間になりたいと思っていた事もあった。
でも、それは姿だけで力を捨てるつもりはない。

守りたいものは自分の手で守る、そのためには強くなるしかない。

「我が国の騎士になってください、純血種である私と共に」

「国を守る騎士になる、ただ純血種なんていらない」

手を差し出す男の横を通ると、後ろからライ達が付いて来る。

純血種なんて気にせずに、自分の人生を歩めばいい。
今生きている人間は本気でそんな事を信じているのか分からない。

もし、嘘の純血種だと知らないなら人間も可哀想かもしれない。

後ろを振り返ると、一定の距離を保っていたライ達が立ち止まった。
相変わらず笑顔を貼り付けている、それが人形のようで不気味だ。

言う必要はない、人間にとってそれが希望なら希望を失うのかもしれない。
そうだとしても、俺は嘘で依存させる事はいいとは思わない。

純血種を名乗る人間がいなくても関係ない。
真実を知らずに無駄な時間を過ごすように、依存しないでくれ。

「純血種なんてまやかしだ、ただの人間だからそう言うのは気にするな」

「はい!」

「……」

「龍人様、お名前をお伺いしても」

「き……ルイス・アイズだ」

軽い返事が聞こえて、しつこく言う事はないからそのまま森を抜ける。

あの名前は俺にとって大切なものだ、他の誰かに知らせるものじゃない。
信用しないと思っていても、あの時の思い出までも失いたくはない。

神に与えられた名前も俺の名前だから伝える。

やはり、名を呼ばれる相手が違うと何も思わないな。

ライは俺の話を聞いていないのか、龍を褒めちぎり熱弁している。

まだ幼いのに勉強させられたのか、俺よりよく知っている。

もし、奇跡的に人類初の純血種が生まれたとしても俺は興味がない。
龍と結合したからそれがなにか俺と関係があるのか。

運命だとかそんなもの、もうとっくの昔にないんだと思い知らされた。

人間なんか信用していない、俺はただ魔物を倒す…それだけの存在だ。

「龍のなにが良いんだ、国を守るだけの存在だろ」

「そんな事はありません!龍人様は気高く尊い存在なのです!我々からしたら神様は龍人様なのです!」

「……そうか」

少し聞いてみたかったが、理想でしかないなと思った。

俺からしたら、龍は愚かで可哀想な奴としか思えない。

人間を守る事でしか、その存在意義はない。
見た目も龍というだけで魔物と何にも変わらない。

それに一番は、人間になれるなんて一瞬でも思った事だ。
身分とか自分の立場とか何にも考えなかったあの日。

俺は確かに人間に恋をしていた、男とか人間とかを気にせず。
そして、あの日…報われない悲しさを知った。

本当に、俺は何も知らない愚かな龍だった。

人間に恋をした龍なんて今まで存在していなかった。
だから龍は人間と近い感情があるとはいえ、恋愛感情はないと思っていた。
人間を守り交流する中で一番無意味な感情だと思ったからだ。

もしかしたら、俺は龍人として欠陥なのかもしれない。

「ルイス様?どうかされましたか?」

「何でもない」

「ご安心ください、なにがあっても私はずっとお側に…」

「俺の話を聞いていない事はよく分かった」

俺は側にいてほしくないって意味で言った筈なんだけどな、と小さくため息を吐いた。

街に到着するまで、ライはずっと喋り続けていた。
怪しい薬が出回っているだとか、スパイがいるだとか。

必要な情報だけを聞いて、後は全て聞き流していた。
俺の顔色を伺って世辞を言う必要なんかない。
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