血染めの龍騎士と悪役名無し三男の少女漫画的転生物語

鮎焼き

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籠から抜け出して.

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朝、目が覚めたら家の中が騒がしかった。

原因は忙しなく動いて指示を出しているこの男だ。

他の兄弟の誕生日だってこんな事はなかった。
俺の誕生日も毎年ひっそりとラルトが祝うだけだった。

使用人達が駆け回り、ラルトは少しイライラした様子で声を張り上げていた。
その時、俺と目線が合い顔が明るくなってスキップする勢いで近付いてくる。

この変わりようは凄いな、さっきまでの殺気立つ姿とは違い甘えたような声になった。

猫被りしているって俺が知らないと思っているのか。
さすがにそこまで無知で能天気なわけではない。

ラルトは俺の大切な弟だが、ラルトと同じ大きさの兄弟愛を返す事が出来ない。

俺に何を求めているのか分からない、兄なんて俺以外に2人いるのに。

俺は今の今まで一度も会った事はないけど。

「兄様、もうちょっと待ってて!今兄様のためにケーキを作る準備をしているんだ!」

「ケーキ?」

「うん!兄様が口にするものは僕が全て作るから安心してね!」

声を弾ませてラルトは俺の腕を引いて、部屋に連れていった。
ラルトだけが部屋から出て、鍵を閉める音が聞こえる。

俺の部屋なのに、ラルトが俺の部屋の鍵を持っている。
俺のプライバシーなんて、この家にはない。

いつもの誕生日は過労で疲れ切っている中、ラルトに操られるようにケーキを食べたりして誕生日が過ぎ去っていく。
今は体力が残っている、ラルトに気付かれても走って逃げる事が出来る。

ベッドのシーツを剥がして、窓を包み込んで準備万端だ。

窓に手を付いて、大きく吸って深呼吸をする。

一歩二歩と後ろに下がり、距離を離して窓に向かって走り出した。

体がガラスの窓にぶつかり、大きな音を立てて割れた。

下にいる護衛が驚いた顔をしてこちらを見ていた。

俺が窓から逃げないように外からも見張っている事は知っている。
だからシーツでガラス片を受け止めて、下に降りかからないようにした。

窓をぶち破らないと外に出れないほど、窓を開けた面積は小さい。

護衛は避けてくれて、怪我人はなくて良かった。

すぐに俺を取り押さえようとして、俺もガラスを包んだシーツを掴んだ。
シーツを広げて、ほんの少しの威嚇をしようと思っていたがそれから先は手を出さなかった。

シーツを被りながら、よく分からなかったがこれもチャンスだと思い、走り出した。

「イルト様が逃げ出したぞ!!」

「ラルト様をお呼びしろ!」

護衛は何のためにいるのか、ラルトを呼びに行ってしまった。
庭にいた護衛の声が集まってきていて、大きく布を振り上げた。

布は地面に落ちて、そこには俺の姿はなかった。
隠れる場所がないから、上から護衛達の声が聞こえていた。

息を潜めて、人の気配がなくなるまでそこにいた。

俺も予想外な事に、目を丸くして理解が追いつかない。
上を見ても光が漏れずにいて、誰も来なさそうだ。

ここは落とし穴?なんで庭にこんなものがあるんだ?
目の前を見てみるが、暗くて全く見えない。

壁に手を付いて、怪我をしないように慎重に歩く。
庭の外に続いてくれたらいいけど、流石に都合良すぎるから。

でも、なんでこんなところに落とし穴があったんだろう。
あそこは目印も何もない場所だったんだけどな。

歩き続けていると、小さな灯りが奥で揺らめいているのが見えた。
何処からか光が漏れて出口があるんじゃないかと灯りを頼りに進み続ける。
上は騒がしいのか、走り回る足音がこちらまで響く。

早く家から離れないとと歩く速度がだんだん上がる。

その灯りの正体を知り、足を止めた。

蝋燭に灯る光はゆらゆらと揺れて俺を嘲笑っているかのように思えた。

俺の目の前にいるのは、幼少期から俺の近くにいてラルトの命令に従って俺を監視していたセトだ。
セトがいるところにラルトはいる、ここで捕まるわけにはいかない。

後ろに後退り、セトから距離を離していく。

てっきり距離を詰めてくるかと思ったが、セトはそこに立っていて移動する気配がない。

後ろも警戒しつつ、俺も後退るのを止めた。
来た道を戻ったとしても、この先は行き止まりだ。

「なんで、ここに」

「貴方がここに来るのを待っていたんです」

「ラルトの命令か…」

「ラルト様はこの事を知りません」

セトは相変わらず感情が読み取れない表情で淡々と話す。

本当にラルトの命令でここにいるわけじゃないのか?
ラルトが関係ないなら、何故俺をここで待っているんだ。

いや、油断させるためだったらどんな嘘でも付く。
セトは表情が変わらないから、嘘を付いているかいないのか判断出来ない。

まだ距離を縮めず、なにかあった時にすぐに走り出せるように腰を低くする。

俺とセトの間に緊張が走るが、実際に緊張しているのは俺だけだ。

上は騒がしいのに、ここはとても静かで不気味だ。

「生まれた時から貴方が純血種と言われてきました」

「俺が…」

「アクトリス家には運命を占うお方がいます」

その話を聞いて、とあるキャラクターを思い出す。

漫画でも出てきた代々アクトリス家を影から支えていると言っても過言ではない老婆。
未来が見えると言われていて、その占いは百発百中。

紋様の意味を知らず、書物にも何も書いていないからオババ様に占ってもらった。
そこでベアトリスは純血種の血を持つ特別な存在だと言われた。

セトの話によるとオババ様が15年前に兄妹全員を占い、この中に純血種がいると言った。
純血種は龍族と同様の高貴な存在で、生まれたとなると騒ぎになるのは当然だ。

しかし、俺の家は純血種を独り占めしようと考えた。
どうにか純血種をお金に変えられないかと考えた。

そこで、純血種を調べて新しい薬を開発する事にした。

アクトリス家は謎の新薬を開発して売る事業をしている。

まだ未熟な血だから、血を育てて紋様が現れたら血を取り薬に混ぜる。
それにより、人間にあらゆる効果をもたらす。

まだその薬を作っていないから、その効果を知っているのは漫画を読んでいた俺だけだ。
もしかしたら、オババ様より俺の方が未来が分かっているかも。

俺が食べていた白い食べ物も、痛い事も全て純血種のデータを取るためだとセトは言った。
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