血染めの龍騎士と悪役名無し三男の少女漫画的転生物語

鮎焼き

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個人的な事情聴取

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「俺達の仲なんだから遠慮はいらない、きゅーちゃん…俺って臭いかな」

「そ、そんな事は…ない、良いにおい」

「えっ…そ、そっか…ありがとう」

臭いと面と向かって言われる事を覚悟していたから、まさか真逆の事を言われるとは思わなかった。
ラルトには毎日のように俺を褒めちぎっていたが、家族以外の人に言われるのはこんなに恥ずかしいものなんだな。

顔が熱くなり、ルイスから離れて誤魔化すように笑った。

ルイスも至近距離で人を褒めた事がないからか、ほんのりと顔が熱くなっていた。

個室で男2人が照れ顔って、周りからしたら何事かと思うよな。

短剣を受け取り、傷はないか隅々まで見つめる。
素人目だけど、傷は見つからないから大丈夫。

ルイスは紙とペンを再び持って、事情聴取を再開した。

「イルトの話によると、騎士に助けを求めて来てくれなかったから自分から時計塔に向かったんだよな」

「うん」

「その騎士の容姿を詳しく教えてくれ、なにか見ているかもしれない」

俺を信用していないからそう言ったんじゃないと分かっている。
これは、俺にとってもプラスになる事なんだ。

興味ないと言いたげに俺を突き飛ばした騎士だって、気になって時計塔を見たかもしれない。
その人が見つかると俺の無罪も証明されるはずだ。
記憶をゆっくりと思い出しながら、ルイスに伝える。

護衛の騎士まで黒ずくめの人の味方だとは考え難い。

そして長いような短い時間の事情聴取は終わった。

最後にルイスは気になっている事を質問したが、これが俺には答えにくいものだった。

「これは個人的な質問だから答えなくてもいい、最後にイルトの家を教えてくれ、なにかあった時にいち早く知らせるために」

「えっと、その…家が…」

アクトリス家の住所を教えても、俺はもう家を出たから訪ねられてもいない。
でも、宿屋の住所を教えてもこの短剣がいくらで売れるか分からない。

曖昧な事を言ったら、せっかく信用してくれたのに失ってしまうかもしれない。
ルイスにはちゃんと話そう、ちゃんと話せば怪しまれる事もない。

そう思って、チラッと横の壁に貼られた紙が見えた。
同じ紙が何故か2、3枚集まって貼られていた。

そこにある紙を眺めていたら、ルイスも視線に気付いて横を見ていた。
目を輝かしている俺とは正反対で、ルイスは小さくため息を吐いた。

「カノンか、貼るなと言ったのに……イルト、気にしなくていい」

「俺、実は今一人暮らしするために家から出て家を探していたんだ」

「そうだったのか?じゃあ今晩住む場所は…」

「うん、だからこれ…まだ有効かな」

紙を指差して希望の眼差しでルイスを見つめた。

その紙は今の俺には救いの紙のように見えた。

紙は求人情報で、騎士団兵舎の雑用係を求めるものだった。
内容は掃除だったり、荷物運びだったり、掃除だったり…

しかも衣食住付きだなんて、無一文な俺にとって神の仕事だ。
給料の相場は安いのか高いのか分からないが、贅沢は言わない。

生きるためだったら、俺はなんだってやる!

兵舎にいたら、挨拶だけでもルイスと出来るかもしれない。

「やめた方がいい、給金に見合わない仕事量だ」

「衣食住付きだから」

「それだけのために…」

「俺にとって死活問題だ」

「衣食住なら俺がっ」

衣食住付いて高収入だとはさすがに思っていない。
俺の仕事は騎士ではなく、掃除の人だから。
体力だって、重い荷物を運べば自然と体力が付くだろう。

給料だけではない、色々といい事ずくめだと思う。

ルイスの声を遮るように、個室の扉が開いた。
部屋に入ってきたのはアリス様に付き添っていたライだった。

もう仕事が終わって俺達の様子を見に来たのか。

ルイスは話すのを止めて、再び氷のような無表情になった。

「廊下から言い争う声が聞こえましたが、どうかされましたか?」

「言い争っていない、事情聴取は終わった…彼は無実だ」

「そうですか、なら他の者に見送らせましょう」

「……」

「いや、彼は今日から兵舎で働く事になった」

「えっ…それってどういう」

「人手が足りないからな、兵舎の事はお前には関係ない」

ルイスはそう言って、俺に管理人を案内してくれる事になった。
ライはなにか言いたげな顔をしていたが、それ以上なにかを言う事はなかった。

俺がこの仕事をするのを認めてくれたのかな。

廊下に出て、ルイスは周りを見渡してとある人物を探していた。
見つけたのか、手を上げて呼んでいて俺も見る。

兵舎の話はほとんどなかったから、漫画のキャラクター以外の人を知らない。
ベアトリスはルイスの家に居候してたから、漫画ではほとんどルイスの家の話だった。

ルイスはここには住んでいないけど、一度も顔を出さないわけではないから挨拶くらいは出来るよな。
ルイスに呼ばれて、アホ毛を揺らして小柄な少年のような見た目の茶髪の騎士が駆け寄ってきた。

「カノン、仕事志願者だ」

「本当ですかルイス様!」

カノンと呼ばれた騎士は、目を輝かせて俺をぐるりと回って見ていた。
ぶつぶつとなにか独り言を呟いているが、聞き取れない。

面接ってどうするんだ?この世界に履歴書はあるのか?
もっと身だしなみを整えた方が良かったかな。
そうだった!今の俺は家なしだからやっぱり宿屋に行って、その前に質屋に…

何度も俺の周りを回るカノンさんをルイスは頭を掴んで止めた。
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