19 / 36
個人的な事情聴取
しおりを挟む
「俺達の仲なんだから遠慮はいらない、きゅーちゃん…俺って臭いかな」
「そ、そんな事は…ない、良いにおい」
「えっ…そ、そっか…ありがとう」
臭いと面と向かって言われる事を覚悟していたから、まさか真逆の事を言われるとは思わなかった。
ラルトには毎日のように俺を褒めちぎっていたが、家族以外の人に言われるのはこんなに恥ずかしいものなんだな。
顔が熱くなり、ルイスから離れて誤魔化すように笑った。
ルイスも至近距離で人を褒めた事がないからか、ほんのりと顔が熱くなっていた。
個室で男2人が照れ顔って、周りからしたら何事かと思うよな。
短剣を受け取り、傷はないか隅々まで見つめる。
素人目だけど、傷は見つからないから大丈夫。
ルイスは紙とペンを再び持って、事情聴取を再開した。
「イルトの話によると、騎士に助けを求めて来てくれなかったから自分から時計塔に向かったんだよな」
「うん」
「その騎士の容姿を詳しく教えてくれ、なにか見ているかもしれない」
俺を信用していないからそう言ったんじゃないと分かっている。
これは、俺にとってもプラスになる事なんだ。
興味ないと言いたげに俺を突き飛ばした騎士だって、気になって時計塔を見たかもしれない。
その人が見つかると俺の無罪も証明されるはずだ。
記憶をゆっくりと思い出しながら、ルイスに伝える。
護衛の騎士まで黒ずくめの人の味方だとは考え難い。
そして長いような短い時間の事情聴取は終わった。
最後にルイスは気になっている事を質問したが、これが俺には答えにくいものだった。
「これは個人的な質問だから答えなくてもいい、最後にイルトの家を教えてくれ、なにかあった時にいち早く知らせるために」
「えっと、その…家が…」
アクトリス家の住所を教えても、俺はもう家を出たから訪ねられてもいない。
でも、宿屋の住所を教えてもこの短剣がいくらで売れるか分からない。
曖昧な事を言ったら、せっかく信用してくれたのに失ってしまうかもしれない。
ルイスにはちゃんと話そう、ちゃんと話せば怪しまれる事もない。
そう思って、チラッと横の壁に貼られた紙が見えた。
同じ紙が何故か2、3枚集まって貼られていた。
そこにある紙を眺めていたら、ルイスも視線に気付いて横を見ていた。
目を輝かしている俺とは正反対で、ルイスは小さくため息を吐いた。
「カノンか、貼るなと言ったのに……イルト、気にしなくていい」
「俺、実は今一人暮らしするために家から出て家を探していたんだ」
「そうだったのか?じゃあ今晩住む場所は…」
「うん、だからこれ…まだ有効かな」
紙を指差して希望の眼差しでルイスを見つめた。
その紙は今の俺には救いの紙のように見えた。
紙は求人情報で、騎士団兵舎の雑用係を求めるものだった。
内容は掃除だったり、荷物運びだったり、掃除だったり…
しかも衣食住付きだなんて、無一文な俺にとって神の仕事だ。
給料の相場は安いのか高いのか分からないが、贅沢は言わない。
生きるためだったら、俺はなんだってやる!
兵舎にいたら、挨拶だけでもルイスと出来るかもしれない。
「やめた方がいい、給金に見合わない仕事量だ」
「衣食住付きだから」
「それだけのために…」
「俺にとって死活問題だ」
「衣食住なら俺がっ」
衣食住付いて高収入だとはさすがに思っていない。
俺の仕事は騎士ではなく、掃除の人だから。
体力だって、重い荷物を運べば自然と体力が付くだろう。
給料だけではない、色々といい事ずくめだと思う。
ルイスの声を遮るように、個室の扉が開いた。
部屋に入ってきたのはアリス様に付き添っていたライだった。
もう仕事が終わって俺達の様子を見に来たのか。
ルイスは話すのを止めて、再び氷のような無表情になった。
「廊下から言い争う声が聞こえましたが、どうかされましたか?」
「言い争っていない、事情聴取は終わった…彼は無実だ」
「そうですか、なら他の者に見送らせましょう」
「……」
「いや、彼は今日から兵舎で働く事になった」
「えっ…それってどういう」
「人手が足りないからな、兵舎の事はお前には関係ない」
ルイスはそう言って、俺に管理人を案内してくれる事になった。
ライはなにか言いたげな顔をしていたが、それ以上なにかを言う事はなかった。
俺がこの仕事をするのを認めてくれたのかな。
廊下に出て、ルイスは周りを見渡してとある人物を探していた。
見つけたのか、手を上げて呼んでいて俺も見る。
兵舎の話はほとんどなかったから、漫画のキャラクター以外の人を知らない。
ベアトリスはルイスの家に居候してたから、漫画ではほとんどルイスの家の話だった。
ルイスはここには住んでいないけど、一度も顔を出さないわけではないから挨拶くらいは出来るよな。
ルイスに呼ばれて、アホ毛を揺らして小柄な少年のような見た目の茶髪の騎士が駆け寄ってきた。
「カノン、仕事志願者だ」
「本当ですかルイス様!」
カノンと呼ばれた騎士は、目を輝かせて俺をぐるりと回って見ていた。
ぶつぶつとなにか独り言を呟いているが、聞き取れない。
面接ってどうするんだ?この世界に履歴書はあるのか?
もっと身だしなみを整えた方が良かったかな。
そうだった!今の俺は家なしだからやっぱり宿屋に行って、その前に質屋に…
何度も俺の周りを回るカノンさんをルイスは頭を掴んで止めた。
「そ、そんな事は…ない、良いにおい」
「えっ…そ、そっか…ありがとう」
臭いと面と向かって言われる事を覚悟していたから、まさか真逆の事を言われるとは思わなかった。
ラルトには毎日のように俺を褒めちぎっていたが、家族以外の人に言われるのはこんなに恥ずかしいものなんだな。
顔が熱くなり、ルイスから離れて誤魔化すように笑った。
ルイスも至近距離で人を褒めた事がないからか、ほんのりと顔が熱くなっていた。
個室で男2人が照れ顔って、周りからしたら何事かと思うよな。
短剣を受け取り、傷はないか隅々まで見つめる。
素人目だけど、傷は見つからないから大丈夫。
ルイスは紙とペンを再び持って、事情聴取を再開した。
「イルトの話によると、騎士に助けを求めて来てくれなかったから自分から時計塔に向かったんだよな」
「うん」
「その騎士の容姿を詳しく教えてくれ、なにか見ているかもしれない」
俺を信用していないからそう言ったんじゃないと分かっている。
これは、俺にとってもプラスになる事なんだ。
興味ないと言いたげに俺を突き飛ばした騎士だって、気になって時計塔を見たかもしれない。
その人が見つかると俺の無罪も証明されるはずだ。
記憶をゆっくりと思い出しながら、ルイスに伝える。
護衛の騎士まで黒ずくめの人の味方だとは考え難い。
そして長いような短い時間の事情聴取は終わった。
最後にルイスは気になっている事を質問したが、これが俺には答えにくいものだった。
「これは個人的な質問だから答えなくてもいい、最後にイルトの家を教えてくれ、なにかあった時にいち早く知らせるために」
「えっと、その…家が…」
アクトリス家の住所を教えても、俺はもう家を出たから訪ねられてもいない。
でも、宿屋の住所を教えてもこの短剣がいくらで売れるか分からない。
曖昧な事を言ったら、せっかく信用してくれたのに失ってしまうかもしれない。
ルイスにはちゃんと話そう、ちゃんと話せば怪しまれる事もない。
そう思って、チラッと横の壁に貼られた紙が見えた。
同じ紙が何故か2、3枚集まって貼られていた。
そこにある紙を眺めていたら、ルイスも視線に気付いて横を見ていた。
目を輝かしている俺とは正反対で、ルイスは小さくため息を吐いた。
「カノンか、貼るなと言ったのに……イルト、気にしなくていい」
「俺、実は今一人暮らしするために家から出て家を探していたんだ」
「そうだったのか?じゃあ今晩住む場所は…」
「うん、だからこれ…まだ有効かな」
紙を指差して希望の眼差しでルイスを見つめた。
その紙は今の俺には救いの紙のように見えた。
紙は求人情報で、騎士団兵舎の雑用係を求めるものだった。
内容は掃除だったり、荷物運びだったり、掃除だったり…
しかも衣食住付きだなんて、無一文な俺にとって神の仕事だ。
給料の相場は安いのか高いのか分からないが、贅沢は言わない。
生きるためだったら、俺はなんだってやる!
兵舎にいたら、挨拶だけでもルイスと出来るかもしれない。
「やめた方がいい、給金に見合わない仕事量だ」
「衣食住付きだから」
「それだけのために…」
「俺にとって死活問題だ」
「衣食住なら俺がっ」
衣食住付いて高収入だとはさすがに思っていない。
俺の仕事は騎士ではなく、掃除の人だから。
体力だって、重い荷物を運べば自然と体力が付くだろう。
給料だけではない、色々といい事ずくめだと思う。
ルイスの声を遮るように、個室の扉が開いた。
部屋に入ってきたのはアリス様に付き添っていたライだった。
もう仕事が終わって俺達の様子を見に来たのか。
ルイスは話すのを止めて、再び氷のような無表情になった。
「廊下から言い争う声が聞こえましたが、どうかされましたか?」
「言い争っていない、事情聴取は終わった…彼は無実だ」
「そうですか、なら他の者に見送らせましょう」
「……」
「いや、彼は今日から兵舎で働く事になった」
「えっ…それってどういう」
「人手が足りないからな、兵舎の事はお前には関係ない」
ルイスはそう言って、俺に管理人を案内してくれる事になった。
ライはなにか言いたげな顔をしていたが、それ以上なにかを言う事はなかった。
俺がこの仕事をするのを認めてくれたのかな。
廊下に出て、ルイスは周りを見渡してとある人物を探していた。
見つけたのか、手を上げて呼んでいて俺も見る。
兵舎の話はほとんどなかったから、漫画のキャラクター以外の人を知らない。
ベアトリスはルイスの家に居候してたから、漫画ではほとんどルイスの家の話だった。
ルイスはここには住んでいないけど、一度も顔を出さないわけではないから挨拶くらいは出来るよな。
ルイスに呼ばれて、アホ毛を揺らして小柄な少年のような見た目の茶髪の騎士が駆け寄ってきた。
「カノン、仕事志願者だ」
「本当ですかルイス様!」
カノンと呼ばれた騎士は、目を輝かせて俺をぐるりと回って見ていた。
ぶつぶつとなにか独り言を呟いているが、聞き取れない。
面接ってどうするんだ?この世界に履歴書はあるのか?
もっと身だしなみを整えた方が良かったかな。
そうだった!今の俺は家なしだからやっぱり宿屋に行って、その前に質屋に…
何度も俺の周りを回るカノンさんをルイスは頭を掴んで止めた。
305
あなたにおすすめの小説
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
王様お許しください
nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。
気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。
性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
アイドルのマネージャーになったら
はぴたん
BL
大人気5人組アイドル"Noise"
ひょんな事からそのマネージャーとして働く事になった冴島咲夜(さえじまさくや)。
Noiseのメンバー達がみんなで住む寮に一緒に住むことになり、一日中メンバーの誰かと共にする毎日。
必死にマネージャー業に専念し徐々にメンバーとの仲も深まってきたけど、、仲深まりすぎたかも!?
メンバー5人、だけではなく様々な人を虜にしちゃう総愛され物語。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる