婚約破棄ですって?!私の悪行…まさかバレてませんわよね?

神楽坂ゆい

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「皆さま、どうか静粛にお願いいたします。」

王宮の会議室。宰相代理が集めた少数の貴族と、ロラン殿下、そしてわたくしアデルが顔を合わせている。フレデリックが手配した場で、今後の具体的な計画を共有するための密談だ。

「では、早速ですが、今回の暴露工作と噂の拡散について、私が入手した情報をまとめます。」

フレデリックが書類を広げると、その場に軽い緊張が走る。わたくしはレイラとサラを伴って端の席に座り、耳を傾けた。

「この一連の計画を主導しているのは、やはり王家の権力を奪取しようとする一派です。具体的な人物名も浮上していますが、いまだ裏付けが不十分。そこで我々は、アデル様への悪評を利用して殿下を揺さぶる方針を彼らがとっていると判断しています。」

「つまり、わたくしを貶めることで殿下の立場を弱体化させ、己の都合の良い婚姻を強制しようとしているわけですね。」

わたくしが言葉を挟むと、フレデリックは頷く。その隣で宰相代理も厳しい表情を崩さない。

「はい。ですが、殿下が新婚約者候補を明確に拒否したことで、彼らの計画は大きく狂いました。加えて、アデル様も悪女を演じ続けるわりに実際は『孤児院支援なども行っている』とわかり始め、思うように世論が動かなかった。焦った結果、今回の大掛かりな暴露工作に踏み切ったのでしょう。」

フレデリックの説明を聞きながら、わたくしは視線をロラン殿下に向ける。殿下は口を結んだままうつむいているが、眉間にははっきりと苦悩の色が浮かんでいた。

「……いずれにせよ、これ以上好き勝手させるわけにはいかないわ。わたくし自身の名誉もそうですが、彼らが国を乱すのは看過できません。」

「おっしゃる通りです。そこで、殿下とアデル様に公式の場で声明を出していただきたい。最初は王族だけでなく、複数の要人を招いた記者会見形式を想定しています。そこでは、アデル様が悪女の実態をきちんと否定し、孤児院支援をはじめとする行動の真相を明らかにする予定です。」

「地獄のようね……みんなの前で、わたくしがずっと隠してきたことを曝け出すなんて。」

胸がすくむ思いだが、もう逃げるわけにはいかない。レイラが小声で「大丈夫」とつぶやき、サラはわたくしの隣で緊張の面持ちを見せていた。

「その際、殿下の婚約破棄に関する真相――すなわち殿下がアデル様を危険から遠ざけるために取った措置であったことも含めて、公に伝えるのです。王家内の権力争いに関しては、必要最低限の説明で留めるべきですが。」

「……わかりました。」

わたくしは小さく息をのむ。ロラン殿下が口を開かないのは、何を考えているからなのだろう。守るための嘘が、結局わたくしをひどく傷つけた。それでも、わたくしはこの国の混乱を止めるために、彼と協力する道を選ぼうとしている。

「会見では、アデル様が悪女という評価を覆すだけでなく、暴露工作の裏にいる人間を炙り出す材料を提示したいと思っています。ご安心ください。証拠は着実に集まりつつあります。」

フレデリックが力強く言う。わたくしはその言葉に微かな希望を感じた。

「……わたくしはやります。皆の前で“悪女を演じてきた理由”と“孤児院の支援”をはっきりと語りましょう。張り紙の捏造や歪曲も、どうにか証明できるよう協力してください。」

そう決めた瞬間、ロラン殿下がゆっくりと顔を上げる。その瞳に浮かぶのは、かすかな安堵か、それとも別の感情か。わたくしは目を伏せたまま、彼の表情を深く読む勇気を持てなかった。

「わかりました。すぐに準備に取りかかりましょう。」

こうして、わたくしの悪女イメージを翻すための計画が本格的に動き始める。もう後戻りはできない。それでも、わたくしが自分で選んだ道だ。この一歩が、長い苦悩に終止符を打つ最初の鍵になることを祈るばかりだった。
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