婚約破棄ですって?!私の悪行…まさかバレてませんわよね?

神楽坂ゆい

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「アデル様、衣装の件はこちらで手配します。会見では華美すぎないドレスがよろしいでしょう。」

サラが慌ただしく用意を進めている。記者会見とはいえ、わたくしは伯爵令嬢。粗末な格好では説得力が下がるということで、適度に上品な装いを選ぶことになった。

「何から何まで手間をかけるわね。あなたの助けがなければ、わたくしは準備すらままならないかもしれないわ。」

「いえいえ、アデル様の晴れ舞台(?)ですから。今度こそ誤解を解く絶好の機会ですもの。」

サラは笑みを浮かべて言うが、わたくしの胸は緊張でいっぱいだ。悪女の仮面を捨てる決意を表明する場――当然、世間の目は厳しいだろう。中には「いまさら善人ぶっても遅い」と揶揄する人もいるかもしれない。

「大丈夫、あんたはちゃんとやれるわ。」

レイラが背後から声をかける。わたくしは振り返り、小さく微笑んだ。ここまで来たら覚悟を決めるしかない。

「フレデリックは先ほど城下で追加の証拠を集めているらしいわ。偽の張り紙を作成した職人の証言が取れそうだとか。」

「あの人の仕事ぶりには感謝しきれないわね。まさか、わたくしが“助けられる側”になるなんて想像もしなかった。」

わたくしは苦い笑みを浮かべる。悪女を演じながら周囲を遠ざけてきたはずが、いつの間にか多くの人に支えられている。その事実に戸惑いつつも、心が温かくなるのを感じた。

「ところで、殿下とは何か話したの?」

レイラがこっそり耳打ちしてくる。わたくしは困ったように首を振る。

「いえ。あれ以来、殿下はわたくしに妙に気を遣っている様子で、二人きりで話す機会がないの。会見の最終確認などはすべてフレデリックを通して済ませているわ。」

「あの人も不器用よね。アデルに何か言いたいことがあるはずなのに。」

「わたくしも正直、今は殿下と顔を合わせると変に動揺しそうで……ぎくしゃくするよりはマシかも。」

わたくしは視線を落としてつぶやく。守るための婚約破棄。今さら殿下がどう弁明しようと、傷ついた気持ちはすぐには癒えない。それでも協力しようと決断したのは、自分の人生を取り戻すため。殿下への感情は、その次に考えても遅くはないだろう。

「レイラ、準備は大丈夫かしら。衣装の調整が終わったら、台本の確認も必要ね。どのように話を切り出すのか、言葉選びをミスれば逆効果になりかねないわ。」

「わかってる。私もサラも付き合うから、練習のつもりで何度もリハーサルしましょう。」

「助かるわ。ありがとう。」

こうして、わたくしは明日の記者会見に向けて全力で準備を進める。王家や貴族たちの前で悪女の仮面を外す――怖いけれど、胸の奥で小さな光を感じている。これで真実を明かせば、孤児院への悪質なデマも断ち切れるはず。長い闇の中を歩いてきたわたくしにも、ようやく一筋の光明が差し込むのかもしれない。

「……しっかりしなさい、アデル・レイノルズ。弱気になっている場合じゃないわ。」

わたくしは自らに言い聞かせ、ドレスの裾を握りしめる。覚悟を決めた以上、もう泣き言は言わない。明日は必ず、この国中を巻き込んだ悪評を覆してみせるのだ。
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